スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



牛乳のティスティングで五感を使う感覚を体験する。ー味覚のレッスンー
(スキルアップ福岡会場)
5種類の乳をティスティング!
本日は5種類(A・B・C・D・E)の乳を飲み比べてもらいます。
評価する時には、Aを常に基準にしてください。AはBに比べてどうか、Cはどうかという風に、五感を使って味わってもらいたいと思います。

・目→視覚        ・耳→聴覚
・鼻→嗅覚        ・舌→味覚
・歯・手→触覚

どの感覚を使いますか?いくつでも良いので考えてみてください。
1. 食べものを味わう時に使う感覚はどのような感覚でしょうか
2. 食べものを味わう時に一番使う感覚はどのような感覚でしょうか
3. 牛乳を飲む前に使う感覚は何ですか
4. 牛乳を飲んだ時に使う感覚は何ですか
5. 牛乳を飲んだ後に使っている感覚は何ですか
6. 牛乳の味を思い出して下さい。どのような味ですか
7. 牛乳を飲んだ時、どんな光景が浮かびますか
 現在の学校教育では正解を求めてしまいます。自分が考えたことが間違っているのではないかと思うと発言出来なくなってしまいます。そうすると、子どもも大人も萎縮してしまい活発な議論が出来なくなってしまいます。
 食べるものは自分の嗜好が強く、いろいろな考えがあって良いものです。たとえ正解を求めるものであってもその人の感性を大事にしてあげて良いと思います。正解や不正解ではなく、自分がどう思うかが一番大切な観点です。
 「これが正解です」「これが不正解です」とは言いません。是非、教育現場で子どもたちが言った言葉を理解して、それがよほどの間違いでは無いかぎり、寛容に扱って頂ければと思います。最初に何を言ってもかまわないという雰囲気をつくってあげると良いと思います。
 これから、自分で書いた回答を、消しゴムで消して正解を示すのではなく、私はこう思ったけれど、他の人はこう思っているなどと、すべて生かして書いて欲しいと思います。自分が思っていることをきちんとストレートに表現するようにしていただきたい。それが重要な要素の一つだと思います。


見た目や、味の違いを探る
 味の種類は、甘味・辛味・苦味・酸味・塩味・うま味と6種類あります。
 そのうち、甘味・苦味・酸味・塩味・うま味は舌にある味らいという器官で感じられますが、辛味は感じられません。
 また先味と言うのは、先にドーンとくる味の印象です。後味は、味が残っている度合いが強いかどうか。これはコクや持続性に関係しています。
 牛乳には塩分が入っていますが、人間がしょっぱいと感じる塩分濃度ではありません。うま味、甘味は特に強く、苦味・酸味は特に強くは感じないと思います。
乳の神秘
 九州と北海道で同じ品種、同じえさで飼育、搾乳した時に、乳成分が違う場合があります。どの成分だと思いますか?
 それは脂質です。ではなぜ脂質が変わるのでしょうか?気温が関係しています。ではなぜ気温で変わるのでしょうか?脂質が変わる、変わらなければならない理由はなんだと思いますか?もちろん飲む水の量も違うと変わります。しかし、一番重要な理由はなんでしょう。
 この時に目的を考えてみます。牛乳はもともと子牛に飲ませるものです。子牛に飲ませるためという事を考えれば、寒いところと、暖かいところでは乳成分が変わってくるのが根本です。その事を理解する。
 私たち人間は牛に奉仕されて牛乳を飲んでいますが、もともとは子牛のためにあるものなので、それを意識すると生息環境と子どものかかわりが分かると思います。
 私たち人間(女性)も乳を出します。それは自分の子どものためです。未熟児・早産で生まれた子どもには、それに対応したお乳が出ます。まただんだんと成熟していくにつれ、それに適応した乳が出るのが乳の神秘なのです。季節などではなく、生息環境と子どもの関係からもともと生物が成り立っている。これが乳の本質なのです。それを知って飲むとまた全然違ってくると思います。
 最後に、粉ミルクは甘かったと思います。乳糖がなぜ人間に多いと思いますか?甘いものを付与するという事もありますが、なぜ人間に多いのでしょう?牛にはそんなにありません。それは脳を形成する時に乳糖が必要だからです。牛が育つための成分と人間が育つ時に必要な成分が違います。摂理にあった対応がされていて、とても神秘的です。哺乳類の乳だと思うとなぜ乳の成分が違うのかが見えると思いますし、味わいも違うと思います。

質疑応答
―牛乳の味を知ってもらう時に、どうするか?
今回のテイスティングでは、調整牛乳や脂肪の違いをやりました。
例えばホルスタイン種とジャージー種など品種別にすることもひとつです。どう味わえるのかという時に油と甘味が重要になると思います。忘れてはいけないのはコクとしての持続性です。それは油に依存するので、そのあたりは、表現できるようになると良いと思います。

―成分無調整の牛乳が美味しく感じるテイスティングは?
私たちが普段飲んでいる成分無調整牛乳が美味しいと感じている人は多いと思うので、それをベースに脂質の違いでテイスティングを行なったり、また、低温殺菌乳と高温殺菌乳の違いということで行なったりというのも良いと思います。低脂肪乳をわざわざ買いにいけない場合は5%加水するだけで全く違ってきます。テイスティングで脂肪分が異なるとコクが違うという事を認識させるためであれば、わざわざ低脂肪乳を購入しなくても加水という方法もあるという事です。



品川 明・学習院女子大学 国際文化交流部 日本文化学科・環境教育センター教授

  
海洋生理生体学、環境教育、人・職・環境コミュケーションを研究分野とし、重要な環境資源である水・食物・生き物・人を通じてそれらの関係を考える。
児童・生徒や教員および社会教育指導などに水辺の環境教育プログラムや味覚教育、食物教育を実践している。体験型アクティビティーとそれらを指導するための問いかけをベースにした教育学を提供し、コミュニケーションやファシリテーション能力を有し、社会性ある人間を育てる事を目標としている。
また、最近では「食べること」「食べるもの」「食べ方」から考え、育てる知の未来を合言葉に、産官学連携食育プロジェクト「フードコンシャスネス」の実行委員長も務める。
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