私たちの前に道はある、と思いたい。 円安は、日本経済再生のための前提条件、という話をよく聞きます。 たしかにそうかもしれません。製品を海外で販売している企業の業績が好転すれば、 やがてこの国の雇用を改善し、人々の所得を高めることにつながるかもしれません。 その一方で、円安は輸入品の価格を押し上げます。つまり、円安が景気回復を軌道に乗せ、 その恩恵を受ける前に、円安による物価上昇という「痛み」に耐えなければならない、というわけです。 その「痛み」は、日本の酪農にも無関係ではありません。 自給だけでは足りない飼料と燃料は、どうしても輸入せざるをえないのですが、 ただでさえ世界的に高騰していたらそれらの価格は、円安の傾向が強まり、さらに値上げされようとしているからです。 しかし、生乳をつくるコストの上昇を、経営努力で吸収することは、もう限界に近づいているからといっても、 餌を減らしたり、子牛用の暖房をやめるわけにはいかないのが、酪農なのです。 そう、酪農の仕事は、牛の乳を搾るだけでなく、牛たちを育てることでもあります。うれしいことに、ここ数年、 生命とふれあう仕事にやりがいを感じて、酪農という職業に興味を持ってくれる若者たちも増えています。 ひとつお願いがあります。生命を育み、新鮮で安全な生乳をつくり続ける日本の酪農を取り巻く厳しい状況と、 そこで人々がどんな思いで働いているか、想像してみてはいただけないでしょうか。