生乳せいにゅう
 生乳とは、食品衛生法によると、「さく取されたままの乳」となっています。つまり、人の手が何一つ加えられていないお乳のことです。
では、この生乳は、どのようにして牛乳になっていくのでしょうか。牛のオッパイからしぼられたお乳は、空気に触れることなく、殺菌さっきん処理されたパイプを通って、バルククーラーと呼ばれる保冷タンクに運ばれます。その後、大きな保冷タンクを積んだタンクローリー車で毎日工場へ運ばれていきます。バルククーラーからタンクローリー車へ移されるときも、真空のままです。だから、雑菌などが混入することはありません。ふつうは、このまま工場へ運搬されるのですが、工場が遠隔地えんかくちにある場合など、クーラーステーションと呼ばれる中継基地に一時保管されることがあります。 もちろん、このプロセスでも、衛生的に十分配慮されています。
 そして、工場に到着すると、低温殺菌、高温殺菌、超高温ちょうこうおん殺菌などの方法で、加熱処理されます。牛のオッパイから搾ったままの「生乳」を、工場で加熱処理したものが「牛乳」と呼ばれています。
 さて、生乳にも、牛乳と同じように安全基準が設けられています。細菌の数や抗生物質こうせいぶっしつの有無など、厳格なチェックが行われ、これに合格しない生乳は取引できないことになっています。また、生乳の成分にも各生産者の団体が厚生省の定める基準を上回る自主的な基準をつくっていて、水準以上の良質な生乳には報奨金制度などを設けています。
 その一方で、水準を下回るものについては反則金を取ったり、時には出荷停止処分など、厳しい罰則が課せられることもあります。こうした制度は、何よりも生乳の質的な向上をめざすことを目的としています。安全で、衛生的で、質の高い牛乳を届けるために、酪農家は良質の生乳を作る努力を続けています。