乳房炎にゅうぼうえん
 乳牛にとって、いちばん身近な病気のひとつが乳房炎です。たとえば何かの理由でオッパイにばい菌が入ってしまい、このばい菌を排除しようとする防御ぼうぎょ反応で、炎症えんしょうを起こしてしまいます。ばい菌の種類や健康状態にもよりますが、比較的かんたんに直るものから、重症になって死亡してしまうケースもあります。ですから酪農家は、寝わらを毎日取り替えたり、こまめに牛舎を掃除したり、清潔な環境をつくることに、細心の注意を払っています。 だから、乳房炎にもいくつか種類があって、いちばん症状が激しいのが、甚急性じんきゅうせい乳房炎です。体温が上昇したり、呼吸が速くなったり、下痢をしたり、立つことが困難になるほどのケースもあります。放置すれば敗血症になることもあり、この乳房炎にかかった乳牛には早急な治療が必要になります。
 また、真夏の放牧牛に発生しやすいのが夏季乳房炎です。ハエなどによってうつされると考えられていて、甚急性乳房炎に似た症状を示します。乳房炎になると、ふつう、オッパイが赤くふくらんだり、患部かんぶを痛がったり、炎症が全身にひろがって体温が上がるなどの症状を示しますが、これとは別に、症状があらわれず、静かに病気が進行してしまうこともあります。
 そのため、乳房の観察はもちろん、牛の歩く動作、食欲の異常などにも、酪農家は気をつけています。 皆さんも、牧場を訪れ、搾乳体験などで乳牛のオッパイに触れるときは、牧場の人の注意を守って、きれいに手を洗ってからお乳を搾るようにしてください。