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「せんせいの教室 虎の巻」(学級づくり・授業づくり)−講演・解説−
 先日、戦場カメラマンの渡部陽一さんの講演を聞いてきました。終始、テレビと同じ様なゆっくりとした口調でしたが、彼がゆっくり話す意味が初めて分かりました。外国へ行って現地の人と話をする時、英語、もしくは、それ以外の外語を話すのですが、全ての外語を話せるわけではないのでカタコトで話します。なので、ゆっくり、丁寧に話さないと相手に通じないのです。また、大げさなジェスチャーをしながら話していたのですが、これは私たち教師も学ぶところがあると思います。
 淡々と無表情に話さず、場合によってはパフォーマンスが出来ると良いと思いました。とても聞きやすく、分かりやすい、人にものを伝えるという意味で、とても勉強になった講演でした。
学級づくり
 学級を作るために、必要なことの1つ目は、一人ひとりの子どもを理解すること。この質問はあの子に言わせてあげたい、あの子は今日ずっとこっちを見ているから何かあるのかなど、担任の先生が理解していると授業を進めるパワーが違います。
 2つ目、計画を立てること。こんな学級にしたい、こんな子どもにしたいというビジョンをもつことです。出来るか出来ないかは後にして、イメージがあったほうが良いです。憧れの先生がいたら良いとよく言われました。どうやって授業しているのか、教室を見せてもらうなどできると思います。
 3つ目は私の経験からですが、改善・工夫すること。教育には答えがなく、これで良いと思っていても、場面、場面で状況は変わっていきます。課題を作るときには、具体的な数字や人名があったほうが良いと言いますが、必ずしもそうではないと思います。計画を立て、実践しても、簡単に進まない。その時に、少し自分流に変えてみる。頑なにならず、柔軟性を持つことも大切です。
 地域によっては、教科担任制をとっておらず、専科の先生がいない学校もあります。つまり担任は、生徒と1日中、一緒にいることになります。私も音楽や体育も教えました。
 今も朝や帰りに活動時間などがあると思いますが、学級づくりには、その時間がとても大事です。学級で育てたい力(子どもたちにつけさせたい力)を育てる学習を、朝や帰りの時間を使い計画的につけていくと良いと思います。
 私は、社会の事に目を向けて欲しいと思い、「今日のニュース」を、発表してもらっていました。発表力や文章を読み取っていく力などを鍛えるためです。また、観察したことをきちんと記せる力を鍛えたいと思い、手やランドセルなど身近なものを色々スケッチしてもらいました。
 休みの時間も、ほとんど子どもたちと遊んでいました。一緒に遊ぶと子どもたちの様子が良く分かります。遊べなくても、子どもたちが休み時間に何をしているかを知ることも学級づくりに大事です。
 掃除当番などの当番活動も、いつも一緒に行っていました。子どもに任せるという事も大事ですが、掃除の仕方を教えながら、見ながらという事も大事だと思います。

 学校にいるほとんどの時間が「学習時間」です。ですから、学校が楽しいという事は、勉強が楽しいという事だと思います。子どもが楽しくなるような、やってみたくなるような授業が続いたら良いと思います。学級づくりというと当番や係り活動を考えがちですが、授業の中でも学級を作っていけます。色々な面で子どもたちを育てていくという視点に立つ事が大事です。
授業つくり
[板書のつくりかた]
 いかに子どもが理解できるような板書を作るか。今日は何を学んだのかわかる板書とはどういうものか。
 黒板の大きさは、大体全国共通で、高さ120cm、横360cmです。昔の日本の縦書き用にあわせて作られているので思いのほか細長です。したがって、横書きには向いていません。
 黒板の使い方として、2分割(180cmを2つ)と、3分割(120cmの正方形)で分けて使う方法とあります。どう使っても良いですが、大きさを知っていたほうが良いと思います。私は、黒板に貼るための小道具を色々作りますが、黒板の大きさを計算して作っています。黒板の大きさが、小道具の大きさを決定します。
 次に、文字の大きさです。低学年は12cm、中学年10cm、高学年8cm四方がベストです。バランスも大事です。漢字は少し大きく、ひらがなは少し小さく。漢字とひらがなでは同じ大きさに書いてもひらがなのほうが大きく見えます。大事な言葉は大きくするなど、大小を考える。
 正しい文字、字の形。筆順も調べるようにしています。留め、はらいなど、必然性があっての筆順なので気を付けてください。
 「作る板書」とは、皆の考えを出し合って練り上げる。同じ考えを括ってみる。矢印などで関係性を明白にする。キーワードがきちんと整理されていることが、良い板書だと私は考えます。一人ひとりの考え、意見を黒板で位置づける。黒板はステージです。発言が黒板というステージに立ち、その発言をまとめたり練りあったりして発言が動く、追及する場所になる。先生が一方的に書いていくだけではなく、子どもたちが練りあう板書を作れたら良いと思います。
[学習の進め方]
 私が大事にしている「5つの授業術」を紹介します。
・顔の術      ・声の術
・話の術      ・手の術      ・芸(の術)

 授業を進めるにあたり、先生の顔つきも大事です。無表情て淡々と進めるより、嬉しい時は嬉しい顔、楽しい時には楽しい顔をしてもらいたいです。
 声の術とは、声の大きさや強弱をつけて話すこと。大事なことは大きな声で、子どもたちに分かりやすいように、ゆっくりと話す。抑揚をつけて色々な声色を使ってみても良いと思います。
 話をする時、低学年であれば繰り返しが大事です。わざとボケて、子どもに正解を言わせる。ダジャレを入れて、話を聞いているか反応を見るのも良いと思います。

[教材とは?]
 教えたい事柄「素材」を「教材」へと変える。「教材化」する。
 例えば、新聞の記事(素材)をそのまま子どもに伝えても、子どもの実態や内容にあわないので、そのままでは使えません。それを子どもにあわせ、面白く分かるようにするのが教材化です。学びがいのある材料にすること。素材を教える材料に化(か)えることが教材化です。

五円玉の授業
 五円玉はもっとも古い硬貨です。この五円玉について、気づくことを子どもたちに挙げてもらうと以下のような、回答がでます。

・穴が開いている        ・米がある(稲、ごはん、稲穂)
・黄色い             ・歯車(ギザギザ、凸凹)
・海(線)

 この五円玉は、5年生の産業の勉強に適しているとよく言われますが、私は6年生の戦後の勉強にも適していると思います。
稲穂→農業
歯車→工業
下の横縞の線(海)→水産業

 全てをひとくくりにすると「産業」になります。
 では、裏面はどうでしょう。芽(双葉・若葉)が描かれていますが、芽でること、発芽とはどういう意味でしょうか。
新しく目がでる、生まれること。また、これからどんどん伸びるという事で元気がでること。ここから、戦後の勉強だと「復興」という言葉につなげていく。五円玉は産業の復興を目指して、デザインされたものなのです。
 五円玉(黄銅貨)は実は砲弾を溶かして作っています。なぜ砲弾を使ったのか。リサイクルもありますが、1番は戦争放棄です。戦争で使ったものを溶かして、平和のために使い、五円玉が出来たのです。五円玉は、産業の復興と平和を願って作られたものだと分かります。
 デザインだけで見ると、産業の復興しか読み取れませんが、色に注目すると、砲弾を溶かして作ったことが分かります。少し視点を切り替えてみると、より授業が深まります。視点を切り替えるような問題解決ができると良いと思います。
 私は、授業はすべて図解だと考えます。キーワードを見つける、分析する、関係を考える、構造化するという能力が、板書や授業を作る時に大事になります。
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