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「せんせいの教室 虎の巻」(学級づくり・授業づくり)−実践発表−
新宿区立東戸山小学校 福井みどり主幹教諭
私の勤める学校では、校長先生の方針で、学校にとにかく「本物」が来ます。本物の人や本物の動物が来るので、私自身、はじめはとても戸惑っていましたが、子どもたちの変わっていく様子を見て、私も何か自分発信の本物体験がしたいと思いこの実践を行うことにしました。
なぜ牧場体験なのか?
入学式を終え学校生活が始まってから、教室に居られない子、席に座っていられない子が数名いました。
また、とても繊細な子が多く、クラスとして維持出来ないような状態でした。ですが、生徒ひとりひとりは人懐っこく、とても可愛い子たちばかりなので、どうにかしたいと思いました。校長先生が酪農教育ファーム活動を行っていることは知っていたので、「動物の赤ちゃんが生まれるシーンを見せてあげたい」と、お願いしました。ともに生きる喜びや感動を味わえる学級づくりを子どもたちとしたい、「友達や家族、自然や社会に目を向け、一人で生きているのではなく、多くの仲間や命に支えられていることに気づいてほしい」と思い、牧場体験を取り入れました。
本校には飼育小屋はありましたが、何も飼育していませんでした。そこで、子どもたちに何か飼いたいか聞くと、飼いたいという事になり、何の動物を飼育するか校長先生にお願いをする、プレゼンから始めました。
子どもたちからは、象や豚や馬など色々な動物が挙がりましたが、その中で、飼えるチャンスのある山羊と学べるチャンスがある牛に着目して、子どもたちと話を進めました。その結果、山羊を飼ってみよう。牛は少し難しいので牧場に行ってみようという事になりました。
初めての牧場
最初に牧場に行く前に、牛のイメージマップ(ウェービングマップ)を作成しました。牛には「お乳がある」、「牛乳が出る」というくらいで、牛についてあまり知らないことに気づきました。
そこで、子どもたちの問題意識を掘り起こすことを目指し、校長先生に食育の特別授業をしてもらいました。校長先生が中の見えない箱を持って、「この中には何の生き物が入っているでしょう?」と問うと、触って、「固い」、「冷たい」、「カメ?」など、色々な意見が出ました。この箱の中身は、実は給食で飲んでいた牛乳(ビン)でした。「なんで牛乳が生き物なの?」子どもたちは疑問に思いました。「お母さん牛が赤ちゃん牛を育てるために出しているのが牛乳だからだよ。それを人間がもらっているのだよ」と言う校長先生の言葉に、子どもたちは初めて牛乳をもらっていた事に気づきます。子どもたちは悪いことをしているような気分になり、「じゃもう牛乳飲まない?それも困る…」考えても分からないので、牛さんに会いに牧場へ行くことにしました。
牧場では、アイスクリーム作り、子牛の哺乳体験を行い、これが後々とても大切な教材になったのですが、母牛と子牛の話を聞きました。たまたま、前日に赤ちゃんを産んだ牛がいて、子どもたちは牛がどうやって生まれるかを初めて聞きました。その話の中で、たった1日で母牛と子牛が別れることを知ったのです。子どもたちは静まり返り、その場で何か発することなく、考えているような様子でした。
その後、エサやり体験を行い、初めて見る大きな牛に4人掛かりで、エサをあげます。最初は皆腰が引けていましたが、穏やかにエサを食べる牛の様子を見て、子どもたちがどんどん牛に近づいていきました。近づいて見ると、「ベロを使ってぐるんとやって食べている」、「食べる時、鼻が膨らんでいる」自然と気づいていきます。「見なさい」と言わなくても、目の前にある本物の教材に引き付けられていました。
乳搾り体験では、「温かい!」、「冷たくないの?!」。牛のお乳は、本当は温かいこと、この牛が出してくれている温かい牛乳をいただいていることに、改めて気づきました。最後に酪農家さんが、「牛さんにありがとうと言って牛乳をいただきましょう」と、語ってくれました。
牛と仲良くなった子どもたちが書いたイメージマップは、前回より増え、内容もかなり変わりました。それと同時にたくさんの疑問も生まれました。「オス牛はどうなってしまうの?」というのが、一番多い疑問でした。今度は酪農家さんに学校へ来てもらい出前授業をしてもらいました。時間が足りなくなるほど質問し、酪農家さんの話を真剣に聞く子どもたちの姿がありました。これが入学当初教室にも居られない子どもたちの変化でした。
紙が足りないくらい作文を書いたり、思い思いの絵を描く子どもたちの姿を見て、知らず知らずのうちに体験が、言葉や絵になって表現されていくのを感じました。
オス牛はどうなるの?
2歳でお肉になってしまうと聞いても、なかなか実感が伴わなかったので、「いのちをいただく」ということを道徳で行いました。その時に使ったのが、食肉センターの方が、みーちゃん(牛)とみーちゃんを大事に育てていた女の子と出会う話の紙芝居です。みーちゃんをもう譲らないといけない時に、みーちゃんがポロポロと涙を流します。そのミーちゃんがお肉になって、女の子のところへ戻り、「ミーちゃんいただきます」と言いながら、残さず食べるのです。入学当初、給食をほとんど食べることが出来なかった子が、「食べるものにも命がある、人にも命がある。だから感謝して食べます。」と感想を残してくれました。この子はこの授業以降、給食を残さず食べるようになっています。
山羊の飼育
牛との牧場体験とともに、飼育してきた2頭の山羊の存在も大きいです。牛との体験がなかったら、山羊も飼育できなかったと思います。子どもたちは、毎朝一生懸命、山羊小屋の掃除をしています。教室の掃除は言っても出来ないのに、山羊小屋の清掃はとっても上手です。また、全く掃除ができなかった子が、山羊小屋の掃除を通じて、ほうきの上手な使い方に気づいていきました。
2年生になると、新1年生に山羊のお世話を譲るのですが、「山羊のお世話を教える説明会を開きたい」と、子どもたちから言われました。分担をして、細かな部分を説明していました。
実は、1頭病気で亡くなってしまいました。お別れは辛かったのですが、もしかしたら、死を通して私たちにたくさんの事を教えてくれるために来てくれたのだと思えるような別れ方ができたと思います。子どもたちとたくさんの地域の人と一緒にお別れ会をし、子どもたちの提案で「きっと、泣いている私たちの事が好きではないから、皆で笑顔の写真を撮ろう!」と言って、最後のお別れをしました。
私たちには、泣いていられない理由がもうひとつありました。それは、もう1頭の山羊の出産です。もちろん皆、山羊の出産は初めてで、農工大の先生を呼び、「どこで産む?何を準備したらいい?危険なことはない?」色々な質問を投げかけました。出産は昼間の子どもがいる時間に行われました。100人位の児童が見に来たのですが、校長先生に「静かにしていたら見ていて良いよ」と言われ、子どもたちはシーンとして見守っていました。
子どもたちは山羊の飼育を通じて山羊観察日記というのをつけています。
書きなさいと言っても書かなかった子どもたちが、用紙の枠が足りないくらい書くことが好きになってきました。
3年生になると、生活科がなくなり山羊とあまり係れなくなってしまうので、何か新1年生に残したいという事で、山羊の秘伝書を作りました。
私は普段は、国語の研究をしています。これまで低学年を教えた時にも、書くことは、嫌われがちな学習指導内容でした。
ですが、この秘伝書作りでは、私は何も教えていません。子どもたちは、今までの国語で教わった段落構成などをフルに活用して書いてくれたと思います。紙と状況を用意してあげたら、サラサラとこれを書いていきました。なぜこれが出来たかというと、何度も見られる本物が近くにあったからだと思っています。
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