スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



平成28年度 スキルアップ研修会(名古屋会場)
−ワークショップ−
平成28年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(名古屋会場)が行われました。
イナ・アソシエーション 代表 立野 美香

 名古屋のワークショップは、研修会ではもうおなじみの立野美香さんを講師に迎えて行いました。ワーク中は各々の名札に自分の(呼んでもらいたい)ニックネームを書き、今日はそのニックネームで呼び合うのが約束。立野さんの今までの経歴、子どもからお年寄りまで様々な人達と接して来た経歴や、現場の話を聞きました。立野さんの絶妙な参加者イジリも楽しく、すでに会場は立野ワールド!
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◆気づきは1人1人違う。今日持ち帰るものもきっと1人1人違うはず。
立野:
今日、私は「教える」事をしません。工夫や、知恵、違う視点など少しだけ助言はしますが、今日のワークショップは、みんなで学び合う場です。私は学び合える「場」を作ります。教育ファーム活動の中での皆さんの役割もそうですよね。牛の事、酪農の事、を子ども達に教えますが、子ども達にとって本当の学びになるのは教えられた知識もそうですが、そこから自分が気づいたことが一番の学びになるのです。気付きは1人1人違います。人がどんな事
で笑うか、人とのコミュニケーションの取り方、伝え方、ツールも、こうやったらもっと活かせる?とか、今日様々な気づきがあるでしょう。それでいいのです。自分の中で何かに「気づく」。この感覚を大事にして欲しいと思います。
この場は、皆さんが作りあげていく場です。だから、自分の心を大切に、言葉も正直に言ってみてください。
◆学びの場を作るときに大事にしたい4つの要素
1.ねらいの共有
体験について先生と打ち合わせをする場合は、内容と時間の確認だけでなく、「クラスで今何が起きているか」「何が問題か」を知っておくことも大事。子ども達も組織の中にいる。その組織の中の「課題」に対して、この牧場をこう使う、このツールをこう使うということを先生と事前に話し合えると、より効果的。
2.モチベーションとタスクのバランス
子ども達は自分でモチベーションをあげることが苦手。多少はこちらが上げてあげることも必要。でも、モチベーションを上げたとしても、タスク(課題)のレベルが低くてもいけないし、逆にモチベーションが上がっていないのに、高度な課題を与えてもいけない。そんな時にツールが助けになる。
3.フルバリュー
めいっぱい1人1人を大事にする。そして、人だけでなく、牛だったり糞だったり、その場にある物も大事にする。
4.場作り
自分がやりやすい場、机、椅子、座るのか立つのか、音がうるさくないかなど一個一個を大事に考えると相手への伝わり方が変わる。外だったら太陽の位置、風が吹いているか、そういった場についての1つ1つを気にすることで、人への伝わり方も違います。
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◆なんか知らないけど連れられてきた。そんな子ども達もいるはず。その子のモチベーションをどうやって上げるか。
立野:
今日、皆さん何を目的にこの会場に来ましたか?ワークのテーマである活動で使うツールについて、興味があったから?更新期限だから?正直に言うと、仕方なく来た人もいるでしょう。子ども達もなんか知らないけど来ている子、たくさんいるはずなんです。そこがスタートでも良いのです。ただ、そのスタートからその子のモチベーションをどう上げるか、どの子にも学ぶ力はあります。今日私は、皆さんにたくさん「問い」ます。皆さんは「私は」と、自分を主語にして感じ、考えることを大事にしてください。
あとは「コミュニケーション」。一方的に聞く時間が長いと、人は「ここは聞く場だ」と認識し、主体的に関わることをやめてしまいます。1人1人に「私」を主語にして主体的に関わらせることで、個々のモチベーションが上がるのです。
◆グループワーク 今の自分の気持ちに近い人とグループを作り、話し、聞き、同じ時間を過ごそう
4〜5人づつのグループを作り、今日の研修会で学びたいこと、話したいこと、聞きたいこと、同じような目的を持った4〜5人のグループになり、テーマに添って話し合いました。
Aグループ:使っているツールのことを持ちあい、知りたい、話し合いたい人のグループ
Bグループ:ツール以外のことを話し合いたい人のグループ
Cグループ:それ以外のことを話し合いたい人のグループ
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各グループで出た内容をみんなでシェアしよう!

参加者a(Bグループ):
何年かごとに「牛乳は体に悪い」ということを言い出す人が出てくる。自分の子どもにその本を見られて「体に悪いものを絞って、お金を貰ってうちは生活しているの?」と聞かれ困ってしまった。その本を書いた人と、議論したことがあるが、相手は医者であったりするので、理論で戦おうとすると負けてしまう。私は「牛乳は紀元前から飲まれてきたもので、その量を累計すれば天文学的な数字になる。例えば製薬会社が薬を開発すると、2〜3割の効果が出れば、薬として国に承認される。2000年、3000年と飲まれてきたものが、体に悪いのか?あなたはどう思いますか?と逆に問い返すと、相手は答えることができません。長い歴史、事実が証明している。余分な理論はいらない。誰でも考えれば分かる内容で返してあげると相手も理解してくれる。皆さんも困ったらそうしてみてください。
参加者b(Aグループ):
私は、子ども達に自分の牧場で撮影した牛の出産と出荷のシーンを必ず見せている。体験後貰う手紙には、それを見た中学生の子が「親うぜえ」と言えなくなった、まっ先に母親の事を思い出した、と書いてくれた。友達に「死ね」「ぶっ殺す」と言うことがとても悪いことだとわかったと書いてくれる。「食」という漢字は「人」を「良くする」と書く。私達は「食べ」て「命」を繋いでいる。たくさんの命を頂いて、自分達の命に繋いでいる。印象に残るように活字に慣れた子ども達に手書きの「食」「命」と大きく書いた紙を見ながら話す。
立野:
どうしてその話をしたいと思った?

参加者b:
BSEが問題になった時に牛を安楽死させたこともあった。あの頃は日本の牛肉は危ないと言われ、たくさん捨てられた。牛たちも行き場がなくなった。アメリカでBSEが出た時も、牛丼が食べられなくなったことが話題になった。そんな状況を見て、消費者にとって、肉は肉でしかなくて、元々は命ある生き物だったということのイメージが薄れていると感じたので、牛が産まれるところから、出荷されるところまでをきちんと見せたいと思った。命を食べて私達は生かされている事を結びつけて伝えたいと思ったから。自分たちにしか、伝えられない事だと思った。

参加者c(Cグループ):
自分が目指す教育ファーム活動は高校生位の子に、短くても1泊2日〜のファームステイをしてもらい、その子達との心のつながりを大切に感じられるような活動をしたい。今の子ども達は、親や先生となかなか埋まらない溝があるように感じる。親でも、先生でもない他人である自分達だからこそ酪農や仕事を介して、人の温かみを知ってもらい、その子達の将来に良い影響を与え、明るく出来たらという思いがある。以前、北海道の農村に、大阪の私立の高校生がファームステイをするというテレビ番組(「十勝が教えてくれた3つのこと」)を見た事があり、最初は「行きたくない!」と本当に嫌がっていた高校生達が、帰りにはボロボロ涙を流して「帰りたくない」と泣いていた。人の心境の変化を目の当たりにした気がした。そんな風に、体験をさせてあげることでその人の心や生活が豊かになるのではないかと思う。
◆体験学習の3つの要素 体験しただけで終わらせるか?体験から学ばせるか?
立野:
子ども達には、リアルに感じられるものでなければ、入っていきません。特に命は見えません。それをどうリアルに感じさせるかです。胸に手を当てればドキドキしている。これはリアルです。自分と繋がるから、リアルに感じられる。いかに自分(子ども自身)に繋げ、話をしてあげられるかがポイントなのです。
人の好奇心やモチベーション、リアルを高める3つの要素を紹介します。

1.不自然、いつもと違う感じ
牧場に来ているだけでいつもと違うから、モチベーションは上がります。なんでここにこんな物があるのだろうと、好奇心や興味がわきます。子ども達が知らなかった予想外のことも起きる場所。
2.カバー・ロック・アンフィニッシュ
使う物、道具にカバーをする、見せない、じらす、鍵をかける。
3.ペーシング
みんなで声を出したりして、みんなで同じ空気感を作る。

例えばバター作りでも「次バター作りやで!」と言うのと、道具や材料を布などで隠しながら大事に持って来て、見せながら「これから何をすると思う?」というのでは、子ども達の反応や雰囲気が全然違うと思いませんか。工夫次第で興味を引いたり、モチベーションを上げたりすることができるのです。コミュニケーションで大事なのは「抑揚、ジェスチャー、擬音、間(ま)、視線、小道具」。ちょっとしたことですが、子ども達は喜びます。皆さん自分に合う方法を探しながら色々と試してみてください。

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ワークショップの最後に、「明日から私はこれをやる!」を紙に書き出し、各々大きな声で宣言しました。時間の関係で1人1人発表する事は出来なかったのが残念でした。

立野:
皆さんの宣言は、リアルで、今思った本当のことだと思います。今日、「本気」で関わりましたか? この「本気」が大事です。「本気」には2つの意味があります。「マジ」と「本当の気持ち」。本気でやるから本気で伝わります。下手でも失敗しても「本気だ、この大人」と思わせる事が、一番子ども達に伝わります。子ども達は酪農体験を通して「学び方」を学び、何よりも「生き方」を学んでいます。酪農の現場にいる皆さんに出会う、そのものに意味があります。
皆さんがやっている「酪農」。これが存在するのは、とても意味があること。だからこそ子ども達と、本気になって、共にいて欲しいなと思います。心のこもった言葉を1人1人に投げて欲しい。それで子ども達が何かを感じて学びにしていくと思います。今日皆さんが何か感じたように、皆さんがやっていることが「何か」を生んでいるはず。そこを信じてください。
イナ・アソシエーション
代表 立野 美香氏


大阪生まれ。モットーは、「一人一人がありのままで輝き在る中、共に育ち合うおもろい場をおもろく創造していく!」
 幼稚園に務めた後、フリーでイベントやワークショップ、チームビルディング研修、子育て講座、養成講座などの企画運営、プロデュース、ファシリテーターなどを行う。その後、全国の教育現場や企業で職員研修や人権教育、人間関係トレーニングなどを主な活動とする「マザーアース・エデュケーション」と出会い、スタッフとしてファシリテーターやカウンセラーとして関わる中、自己肯定感の育みの必要性を感じると共に、「教える」「教わる」という関係ではなく、共に育ち合う「共育」の場や存在そのものを認め合える場を創りはじめる。
 2014年10月に独立。「イナ・アソシエーション」を設立。「場づくりのプロ」として、イベントアドバイザーや企業コンサルティング、個人カウンセリングも行う傍ら、2014年11月より「一般社団法人NOCA」で、行き場のないワカモノと一緒に、<イキル場>と<仕事>を創りだしている。
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