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2019年度 スキルアップ研修会(東京会場)
ーワークショップー(抜粋)
「積極的傾聴」でプログラムが格段に変わる
上田 融
NPO法人いぶり自然学校 代表理事


 NPO法人いぶり自然学校の上田融氏を講師に迎えて、ワークショップを行いました。
 体や頭を使いながら参加者同士がコミュケーションをとり、「きく」ことの重要性を学びました。

ファシリテーターってなに?
 ファシリテーターとは、相手自身が勝手に学ぶシーンを作りだす人、その能力や技能を持つ人、またはその立場にいる人のことです。「先生」のように100個の知識を一方的に子どもたちの頭に詰め込むのではなく、自分で勝手に100個の知識を取りに来るような子どもにしてしまうのがファシリテーターです。
 ファシリテーターである皆さんの強みは、自分の活動のフィールド(牧場)を持っていることです。そこに素材はたくさんあると思います。何を選べば、子どもたちの自立的で自主的な活動を見出せるのか。年齢や育った背景に合わせたやる気スイッチを見つけることが皆さんの役目だと思います。
相手の名前を呼んで、〇〇をキャッチ
 参加者で円になり、“もの”を投げ合います。投げる時は投げる相手の名前を呼びながら投げます。ものを受け取った人はまた、次に投げる相手の名前を呼びながら投げます。順番に全員が投げて全員が受け取ったら終了です。慣れたらスピードを速めたり、投げるものを増やしていきます。きちんと投げてキャッチできるでしょうか。
 1回目は、実際に“ある”お菓子を投げ合います。2回目は「重いもの、熱いもの、棘のあるもの」の3つです。ここに“もの”はありません。ありませんが、あると考えます。
 2回目は“もの”がない空想状の“もの”を投げ合いました。言葉や動作でしか説明していませんが、だいたい同じものを想像していたのではないでしょうか。相手と想像したものがリンクすることが、「きく」や「見る」の構造ではないかと思います。
『相手の声・音をさがす』
 ペアになり、1人がナビゲーターになって、もう1人を目的地まで導きます。導かれる人は目を覆い、視覚を使わず相手の声や音のみを頼りに目的地を目指します。
 1回目、ナビゲーターは目的地から相手の名前を呼んで導きます。全員一斉にスタートしますので、自分を呼ぶ声を見極めて目的地を目指してください。
 2回目、ナビゲーターは言葉を発してはいけません。手拍子のみで導きます。その代わり、相手そばに寄り添うことができます。
 言葉や音だけではなく、気配や熱などの非言語で伝えわることがあるかもしれません。そんなことを感じてもらえればと思います。
『みんなで1つの場面(シーン)を作り上げる』
 複数人で班になり、お題の場面(シーン)を作ります。
 順番を決め、まず1番の人がお題に合わせた動きを決めます。動きと言っても静止です。2番以降の人は1番の人の動きからイメージをくみ取って動いてください。話してはいけません。これは生きている人でつくる絵(場面・シーン)なので「活人画」と言います。
お題:「車」
1人目:運転手
2人目:彼女(助手席)
3人目:友達(後方座席)
4人目:親戚のおじさん(後方座席)
5人目:エンジン


お題:「コンビニ」
1人目:レジ打ちしている店員
2人目:ATM
3人目:レジサッカー台
4人目:立ち読みしている人1
5人目:立ち読みしている人2


お題:「東京ドーム」
1人目:バッター
2人目:ピッチャー
3人目:キャッチャー
4人目:応援している人1
5人目:センター
6人目:応援している人2
7人目:アンパイヤ
8人目:星野監督

 コミュニケーションにおいて皆さんは、相手の言っている言葉の裏側で「思っていること」を自然と読んでいるはずです。今はその言葉の部分だけを抜きとりました。
「YES」、「NO」に続ける言葉でコミュニケーションが変わる
 2人で会話をする場合、たいてい返事は「YES(はい)」か「NO(いいえ)」になると思います。ですが、重要なのは「YES」、「NO」の後に続く言葉です。

「YES」、「NO」に続く言葉
「YES」+「and」:そうそう、それでさ〜
「YES」+「but」:そうそう、でもさ…
「NO」+「and」:そうじゃない、だってそうだもん
「NO」+「but」:そうじゃない、でもさ…

 同じ「NO」でも、NOにNOを上乗せするのか、NOだけど「私はこう思う」と自分の意見を続けるのか、後に続く言葉をどう返していくかで会話が変わってくると思います。
「NO」の種類
相手の会話を止めるもの。
●ブロック:違う
●ウィピング(はぐらかす):そうだっけ?
●ネガティブ:嫌い
●キャンセル:うん(以上)
●質問:それ何だっけ?

「YES」の種類
やり取りを促進、促すもの。
●感嘆:そうだよね!へぇ〜!ほお!なるほど!
●受容:〜なんですね!
●拡大再生産:しかも〜ですよね!

 やり取りを促す、感動や感情を拡大再生産することはファシリテートの基本になります。まず一回受け取る。否定されることも、否定を一回受け入れることで会話の糸口が見つかります。
 「YES」「NO」のやり取りを促す構造を理解すると、現場でも場面を前に進めるコミュニケーションの力になっていくと思います。これができるのは言語です。
「なんで牛は白黒なの?」子どもの質問に答える
 世の中のことはだいたい調べがついています。牛のこともそうだと思います。私は普段、自然ガイドもやっていますが、植物の名前や用途について質問を受けることがあります。これも説明ができますが、「なんでこの木はここに生えているんですか?」「この木はなんで木なんですか?」ときかれるとわかりません。
 「なぜ」という質問の答えに皆さんも困ったことがあるかと思いますが、子どもたちの質問の多くは「なぜ」なのです。
 皆さんそれぞれにお配りした質問カードに書いてあるのは、5歳の女の子からの質問です。これから私が5歳の女の子に扮して質問しますので答えてください。
 中には正しく回答できる質問もあると思います。でも、例えば生物学的なことについて、いくら正しくても5歳の子に伝わるでしょうか。そんなとき、正しい答えでなくファンタジーで返しても良いと思います。彼女たちは絵本や人形劇の中、ファンタジーの世界を生きているからです。5歳の女の子が受け止めてくれるような言い回しや、コミュニケーションが取れるような返答や会話を考えてみてください。
 質問カード例:
「なんで牛は白黒なの?」
「なんで牛乳は白いの?」
「なんで牛のうしって言うの?」
「なんで牛はモーってなくの?」
「なんで牛の目は黒いところしかないの?」


5歳の女の子(質問):「なんで牛は白黒なの?」
参加者:今は白黒だけど、昔はカラフルだったんだよ。だけどお空にカラフルな色が欲しいと言われて、牛さんは優しいからカラフルな色を空にあげたんだ。残った白と黒が牛さんの色になったんだよ。
5歳女の子:牛さんやさしいね!本当はカラフルだったんだ!
参加者:赤も黄色もあったんだよ。お空にあげたから、空にはカラフルな虹がかかるんだよ。
5歳女の子:カラフルな虹が見れるのは牛さんのおかげなんだね!
 質問の中には正しく答えられるような質問もあったと思います。科学的根拠や生物学的な真実は抑えつつ、最後に真実に持って行けるようなファンタジーなお話がでれば完璧だと思います。子どもたちの心を掴むためのフック的な言葉として、ファンタジックなお話しを有効的に使ってみるのも良いと思います。
子どもたちが自ら学びたくなるような言葉がけが、まさにファシリテーション
 最後のワークは5歳の女の子の質問に答えるということでしたが、少しいじわるな受け答えがあったかもしれません。でも今後、牧場体験をする中で同じような場面があるかもしれません。ファンタジックな話ももちろんですが、会話の拡大再生産などをしっかりすることで、子どもたちが自ら学びたくなるよう様なコミュニケーション、言葉がけになると思います。ぜひとも実践していただくヒントにして頂ければと思います。

NPO法人いぶり自然学校 代表理事 上田 融(とおる)氏

昭和48年生まれ。
平成8年より北海道の小学校で6年間勤務。
平成14年より4年間、登別市教育委員会社会教育グループで社会教育主事として、ふぉれすと鉱山の運営に携わる。
平成18年よりNPO法人ねおすの活動へ参画し、道内各地の自治体と協働し、第一次産業の取り組みを子どもたちに体験的に伝え、学ばせるプログラム開発および協議体の設立に関わる。
平成20年より苫東・和みの森運営協議会副会長。平成27年より現職。
プロジェクト・ワイルドファシリテーター、小学校教諭1種、幼稚園教諭1種等の資格を持つ。
平成24年度より中央酪農会議の開催する研修会の講師を務める。
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