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令和7年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(東京)講義
令和7年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(東京)を開催しました。
酪農が学校教育を変える酪農教育ファーム
(わくわくモーモースクール)が学校教育へ
もたらす効果 酪農教育ファームへの期待
國分 重隆氏
酪農教育ファーム推進委員会 委員長
私と酪農教育ファームの関りは随分長いものとなりました。
発足当時は酪農教育ファームを自分のライフワークにしようと思い、自分の決意と共にいろいろなところで語っていましたが、教育業界ではまだ酪農そのものを学習の中で役立てていくことが形になっていなかったので、同意を得られませんでした。そんな当時の話も含めて学校教育の現状をお話しします。
第一部 酪農教育ファームのこれまでと学校教育にもたらす効果
私が酪農教育ファームの魅力に触れたのは30年くらい前のことです。小学校社会科5年生「農業単元」の新しい教材事例を開発するために、千葉の牧場へ視察に行きました。初めて生きた牛を目の当たりにし、その優しい目に見つめられ、体に触れ体温を感じました。そして何より酪農家さんの想いを聞いた時にすごい衝撃がありました。
その時に感じた衝撃や感動が今も自分の酪農普及啓発活動の原動力となっています。
早くから酪農のもつ教育的な価値に気づいていた酪農家さんは、教育現場に貢献したい強い想いがありました。牧場を開放し、積極的な受け入れをしていました。同時に、安定的な生乳の供給と牧場の機能を維持・発展させたいという想いもあり、消費者にもっと、牛乳や生産現場としての酪農を知ってもらいたいという気持ち、さらに牛乳や酪農の価値の理解のための普及啓発の活動の場に牧場を使って欲しいと言っていました。
同じく当時活動に参加していた教育者たちは、日本中のどこの学校にも「酪農」から学ぶ教育活動を位置付けたい。そのためにカリキュラムを変えて、酪農のもつ教育的な価値を多くの人に知ってもらい、「だから酪農は大事」だと言うことを教育委員会などが声を出してくれる様なアプローチをしていこうと考えました。
また、当時はいじめや校内暴力もありました。そういうものの解決に酪農体験が生きるのではないかと考えていました。そして、酪農家と教育者がスクラムを組んだのです。
まず、教育課題としてどこに切り込むか考えました。「生命産業と言える酪農の産業としての特性を生かしたい」という酪農家の想いと、直接の生活指導だけでは解決できない子どもたちの「心の荒れ」に対処したい教育者たちの想いから「いのちの教育」「心の教育」の2つに切り込んでみようとなりました。
学校の学びや他の体験の中で育てきれない部分を酪農で実現できることをアピールし、活動を経て変化する子どもたちに保護者からも喜びの声が聞こえてきました。
そして、東京だけではなく全国に広めるべく研究会を発足。時を同じくして、農水では、「食育基本推進計画」が出され、各都道府県に教育ファームが置かれることになったのです。
体験活動の危機
酪農教育ファームが全国に広まる中、口蹄疫や東日本大震災、コロナ禍など、いろいろなことが起きました。特にコロナ禍には世の中が停止し、多くの人がこの先に不安を感じました。
消費者の牛乳離れ、酪農を続けること自体の難しさ、教育現場の多忙さ。特に教育現場ではGIGAスクール構想の中、タブレットの普及。学校に来られないなら、タブレットを使い、家で勉強することが多くなりました。
体験をさせたくてもやらせてあげられない。本物と関わる体験はコロナ禍が過ぎたら、以前に戻るだろうと思っていましたが、なかなか難しいです。このままでは「酪農教育ファーム」自体の存在価値が危うい状況にきているのではないかと感じています。
もちろん、それでも体験活動へ行く先生はたくさんいます。難しい状況の中、地道に体験活動の価値を普及し、いつかはAIを上手く使いながら体験活動を充実してく方向へ進むと思っていますが、今が踏ん張りどころではないかと思いっています。
酪農教育ファームの教育効果
以前わくわくモーモースクールが学校へ来てくれた時の事です。
その学校では少し前に問題が起こり、子どもたちも地域もピリピリして心が疲れ切っていました。その時に牛が学校にやってきました。たった1日の体験でしたが、みんな安心感に包まれて心が穏やかになりました。「明日も来るの?」「会いに行きたい」と、子どもたちに活気が生まれました。
体験中の会話や事後の感想文から、「牛乳への関心・理解」と「食の大切さへの思いの質」、また「いのち」、「生きる」ということへの思いの変化や、責任と誇りをもって、牛乳を通して世の中へ貢献している人への尊敬と感謝の気持ちが生まれたことが分かります。こういう体験活動は酪農以外で思い当たらないなと思っています。
「本物に触れ、関わることで」実際に成果が上がった教育効果
⑴ 命を大切に思う心が確かに育つ
⑵ 食べるということを真剣に考えるようになる
⑶ 仕事ということ、働くということの価値に気付く
⑷ セラピー効果、癒し効果への期待
子どもにとっての教育効果は他者への優しさ、思いやりなど心の豊かさが醸成されて、自分の命の重さを感じるようになり、働くということ、生きることを真剣に考えるようになります。酪農家さんが自分の積み上げてきた仕事の熱意や人生観を伝えて欲しいです。たとえ、しゃべりが下手だとしても経験から出た言葉は必ず子どもたちに届きます。
「いただきます」に心がこめられる子どもを育てたい
今の食育は「おいしい食べものを作る。栄養のバランスや健康な食事をしよう」というところで終わっています。この背景には、ひとり親の子どもたちが、自分で作って食べられるようにという思いがありますが、私は本当の食育はそれだけではないと思っています。
私は、「いただきますに心が込められる子どもを育てる」ことが大事だと思います。「食べ物を大切にする心」、「残さず食べるという思い」などがないと「いただきます」に心がこもらないと感じます。内面をしっかりと育てることが食育ではないかと思います。
それが酪農教育ファームで実現できます。食の原点に命があること、その命を引きついでいる自分に気づきます。これは牛と酪農家さんに関わることで気づくことが出来ると思います。
教育現場が抱える大きな問題
不登校、いじめ、自殺者など教育現場には多くの大きな問題があります。
このままAIを学校に導入して人との関わりが薄れ、自分1人で物事を判断して解決することが当たり前の世の中になっていくと、不登校などの問題は増えるのではないかと思います。厳しいけど、大変だけど頑張っている人との関わりがあって初めて自分を見直そうと思います。そういう経験があればあるほど自分も無駄にしないと思えると感じます。
酪農は、「自分の命は他の命を引き継いでいる。1つだけど1つではない」ことを実感させる最高の学びだと思います。自分は1人の命ではない、簡単に死ねないことを、体験を通して学んでほしいです。ファシリテーターとして自分の思いや生き様を、自信をもって語って欲しいと思います。
第二部 次の学習指導要領の改定の視点〜酪農の生かし所ははたしてあるのか〜
学習指導要領とは日本中の児童・生徒(小・中・高)が、どの子も同じ水準の教育を受けられるように、文部科学省が定めている教育課程(カリキュラム)の基準です。これは約10年に1回改訂がされており、現在次の改定に向けて方針をまとめているとことです。
学校現場では「心と命、感動体験」より「AIと情報活用力」の方に全体的に傾いていると感じています。
<今回の改革のための5つの論点>
1.情報活用能力の強化
2.柔軟な教育課程で個別対応
3.教育に“余白”をつくる
4.探究学習の質の向上
5.学習評価と入試改革
6.その他の重要課題
酪農教育ファームと直接かかわるポイントは、まず論点3の「教育に余白を作る」というところです。これは単に「空き時間」ではなく、知識の詰め込みを脱却し、子ども自身が考え、試し、創造できる時間や機会をつくることです。その削った時間を体験へまわしてくれれば良いのですが、AIを通してとなりそうで心配です。
次に論点4「これからの探究学習」です。社会や人生に向き合う「学びの姿勢」を身につけることが書かれている箇所があります。これは酪農教育ファームに行ったら、つながるのではないかと思っています。
そして論点6「その他の重要課題」です。これは「地域との連携や社会とのつながりの強化、キャリア教育の充実」と、1つの重要課題として書かれています。ここを酪農教育ファームの強みとしてアピールしていかなければならないと思っています。
次の学習指導要領の下で酪農に携わる方々が教育に貢献するためには、「探究学習の質を高める」ことに重点を置いて、酪農教育ファームの在り方を明確にし、その価値の普及・啓発に努める。「心と命、感動体験」の方へ現場が傾いていくように意識して、活動をしていきましょう。
酪農教育ファーム推進委員会 委員長 國分 重隆
1956年 東京都生まれ
1978年 早稲田大学社会学部卒業
1978年 公立小学校教諭・管理職
2016年 教職員研修センター教授など歴任
2023年 東京都教育庁指導部指導企画課専門員
2025年 明星大学客員教授、国士館大学講師
〃 日本酪農教育ファーム研究会顧問
〃 酪農教育ファーム推進委員会委員長
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