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−安全衛生−(web①)
講演「酪農教育ファーム活動における安全・衛生・防疫対策」
山村 文之介氏
千葉県農業共済組合 北部家畜診療所 技術主査


 酪農教育ファームの目的は、「酪農を通して、食や仕事、いのちを学び、支援する」ことです。そのために来場者と受け入れる農場、双方にとって安全と衛生が必要になってきます。
安全対策
確認ポイント
1.危険区域の事前確認
2.アレルギー体質の子どもへの配慮
3.熱中症対策
4.怪我についての留意点

 普段見慣れた牧場でも来場者にとっては知らない場所であることを認識してください。例えば、少しの段差でも子どもからしたら大きな段差になりますので、特に子どもやお年寄り目線で危険区域の確認が必要です。また「自由行動ができる場所」「スタッフと一緒でなければ行けない場所」「立入禁止の場所」と区分けし、立て看板やロープなどで遮断して注意喚起をして下さい。
 牧場内での怪我についてでは、転倒した場合は頭部を打っていないかの確認、外傷がある場合は、まず水道水で洗浄をしてください。近くの病院などの連絡先は必ず控えておき、何かあった際には連絡、また搬送できる車両を確保しておいてください。
 酪農教育ファーム認証牧場は、保険加入が義務づけられていますので必ず加入してください。
衛生・防疫対策
 感染症対策は大きく3つの考え方があります。
【入れない】出入り口の消毒、専用衣類や長靴など
【拡げない】動線の確保、踏み込み消毒、健康管理など
【持ち出さない】衛生管理区域外への病原体の拡散防止

 酪農教育ファーム活動は、本来『関係者以外立ち入り禁止』の牧場に人を入れるということです。そのための衛生防疫対策として『飼養衛生管理基準』という決まりがあります。『飼養衛生管理基準』は農林水産省 消費・安全局 動物衛生課が所管する省令です。守らない場合は罰則がありますので気を付けてください。

『飼養衛生管理基準』は大きく下記4つの項目に分かれています。
【管理責任】家畜防疫に関する基本事項
【入れない】衛生管理区域への病原体の侵入防止
【拡げない】衛生管理区域内における病原体による汚染拡大防止
【持ち出さない】衛生管理区域外への病原体の拡散防止

 特に交流活動に影響の大きい点として、衛生管理区域専用の長靴、衣類の準備、使用が義務付けられました。これに関しては「観光牧場などにおける病原体の持ち込みおよび持ち出しを防止するための規則」を作成し、家畜防疫員の確認を得て、入場者に防疫対策の周知、協力を求めることで、この措置に代えることができますので、確認をしてください。

衛生管理区域について
 飼養衛生管理基準の重要なキーワードとして「衛生管理区域」があります。衛生管理区域は重点的に衛生な管理を行う必要がある場所です。牧場の衛生管理区域とそれ以外の区域を明確に分かるようにしてください。
 衛生管理区域の出入口の数は必要最小限とし、家畜、資材、死体などの持込み、または持出し場所を可能な限り境界に位置することが必要です。

具体的な防疫対策
■参加者名簿の作成
■動物と接触する区域、接触しない区域を明確に区別
■入場者に協力を依頼

 一週間以内に海外への渡航歴がある人の入場は断り、一週間以内に他の畜産施設へ行った人の立ち入りは注意をするようにしてください。
 また口蹄疫は肉製品を介して感染することもありますので、牧場への肉製品を含む食品の持ち込みは禁止してください。
人を感染症から守るために
 牛と人との共通感染症はたくさんありますが、牧場で見つかる可能性が特に高いのは病原性大腸菌O-157です。
 O-157は健康な牛の0.5〜15%が保菌していると言われています。牛の糞で汚染された何らか(水や食肉、無殺菌牛乳など)が人の口から入って、感染する経口感染です。3〜10日間くらい潜伏期間があり、乳幼児・高齢者では重症化、死亡することもありますので、気を付けてください。
 O-157をはじめいろいろな感染症がありますが、どれにも共通する感染症対策は手洗いの励行です。
 手洗いの方法としては、よく泡立てて、最低20秒間両手をこすりながら洗うこと。石鹸はよく泡立てることが重要です。洗った後は使い捨てのペーパータオルなどで十分に水分を拭き取り、そのタオルを使い蛇口を締めると、手洗い後に直接蛇口に触れず効率的です。また幼児の手洗いは監督者が手助けをするようにしてください。
手作り体験での注意点
■手洗い・消毒・手袋の装着
■手作り体験で使用する牛乳は市販のもの
■容器は加熱殺菌できるもの
■作ったものを持ち帰らせない
■不特定多数への販売・譲渡は許可が必要

 手作り体験でも、手洗い、消毒、そして手袋の装着が一番重要です。体験で作ったものはその場で食べてもらい、持って帰らせないようにしてください。なぜ持って帰ってはいけないかはきちんと説明すれば体験者もわかってくれると思います。
 コロナウイルス感染拡大防止の観点から手作り体験の開催はおススメしていませんでしたが、落ち着いてきている今、開催する際には、安全衛生に気を付けていただければと思います。

酪農教育ファーム認証牧場における動物愛護
 牧場を一般公開することは良いことですが、情報を発信するリスクも出てきます。最近は個人がインターネット上で簡単に情報公開でき、悪意のある、なしにかかわらず取り上げられ、拡まっていく時代です。
 酪農教育ファーム認証牧場に実際に消費者から動物愛護に関する問い合わせが届いています。内容としては「認証牧場で飼育している『牛以外の動物』への虐待を改善してほしい」というものです。
 現地確認した結果、虐待の事実はありませんでしたが、「誤解される恐れのある事例」はありました。牧場へは適切な対応を依頼し、問い合わせ者に対しては現地確認の状況などを伝えました。
 牧場では普通だと思っていることが、一般消費者にとっては普通ではない、違う視点から見ていることがあります。一般消費者の目線に立った畜舎環境の整備を心がけていただければと思います。
 価値観や考え方に違いがあるのは当たり前ですが、お互いの立場や価値観を学ぶ貴重な場と捉え、酪農教育ファーム活動をしていただければと思います。

千葉県農業共済組合 北部家畜診療所 技術主査 山村 文之介氏

神奈川県出身。元々猫が好きで獣医師を志したが、学生時代は旅行が趣味で長期休みは全て海外で過ごしていたことから、動物病院のインターンに行かず、「とりあえず」という気持ちで北海道十勝で産業動物の獣医師の仕事に就く。
仕事をしていくうちに産業構造を理解し、解決すべき問題や人材育成の必要性を感じ、気づけば12年間十勝で診療や疾病防除、人材育成に奮闘。平成29年から千葉県で日々の仕事や人材育成に取り組んでいる。
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