スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



ー酪農教育ファーム活動における安全・衛生対策の確認(抜粋)ー(11月10日)
令和3年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(7回目/11月10日)
酪農教育ファーム活動における安全・衛生対策の確認
天野 はな氏
千葉県農業共済組合 西部家畜診療所 技術主査


コロナウイルスと教育ファーム活動

 酪農教育ファーム活動ではそもそも感染症対策を十分考慮して実践されていると思います。緊急事態宣言が解除されました。活動を再開する際には、三密の回避、マスク着用、手洗い等の手指衛生の徹底はもちろんですが、何よりも大切なのは牧場として「感染予防対策を実施している」ことを十分に説明し、来場者の協力を得ることです。
動物を飼っている人に向けて新型コロナウイルス感染症の対応として 
 犬や猫、牛など様々な動物からは、それぞれ固有のコロナウイルスが検出されています。多くの場合、宿主となる動物は軽症で済み、動物のコロナウイルスが種の壁を越えて他の動物に感染することはほとんどないと言われています。しかし、犬・猫が新型コロナウイルスに感染し、それは人から感染したと考えられる事例も報告されています。逆に、ペットから人にコロナウイルスが感染したという事例はなく、また牛等の家畜への感染の報告もありません。いずれにせよ、体験時の動物との過度な接触は避け、接触の前後には手洗いや消毒等の一般的な衛生管理をするようにしてください。
酪農教育ファーム活動における衛生・防疫対策
〜牧場を感染症から守るために〜『人・動物から牛 編』
 酪農教育ファーム活動における衛生・防疫対策では、『飼養衛生管理基準』を重視しています。法律で定められた基準を理解したうえでの活動であることが重要です。
 2020年(令和2年)4月『家畜伝染病予防法』が一部改正されました。26年ぶりに監視伝染病『豚熱(CFS)』が発生し日本国内に感染が拡大したことがきっかけです。
 農林水産省が調査した結果、飼養衛生管理基準の遵守のためにとるべき具体的な措置内容への理解が不足している事例や、飼養衛生管理基準が遵守されず指導等を受けても改善されない事例が明らかになり、すべての家畜の『飼養衛生管理基準』も見直されることとなりました。
 飼養衛生管理基準は家畜伝染病予防法の中の省令にあたります。守らない場合は罰則がありますので気を付けてください。

主な改正9ポイント
1.家畜の所有者は衛生管理に責任を持つこと
2.『衛生管理者』を定めること
3.『衛生管理マニュアル』 (令和4年2月施行)
4.放牧制限に備えた準備措置 (令和3年10月施行)
5.衛生管理区域専用の長靴、衣類の準備と使用
6.車両の消毒装置の設置と使用
7.衛生管理区域内での愛玩動物の飼育禁止
8.衛生管理区域内の除草、整理整頓、敷地の消毒
9.罰則の強化

 農林水産省のHPに掲載されている情報や、地域の家畜保健衛生所からの情報を日頃からチェックするようにしてください。
愛玩動物の飼育禁止について
 衛生管理区域内での愛玩動物の飼育が禁止されました。ただし、愛玩動物の飼養を業務とする観光牧場、トレーニングをうけた牧羊犬等は飼育場所を限定する等、家畜伝染病の伝播を防止する対策を講じた上で、衛生管理区域内で飼育する場合は不遵守にならないとされています。

衛生管理区域への病原体の持ち込み防止
■必要のない者を立ち入らせない
■接触の機会を最小限にする
■出入口・施設付近に看板設置や必要な措置
■その日のうちに他の牧場へ行った者(関係者を除く)を立ち入らせない
■過去1週間以内に海外から入国・帰国した者を立ち入らせない
■立ち入る者の手指・靴の消毒
■衣服の上から着用する衛生的な衣服および靴(ブーツカバーを含む)
■更衣による病原体の侵入を防ぐ(仕切る、経路を一方通行とする、汚れた場合は洗浄および消毒)
■車両消毒
■過去4か月以内に海外で使用した衣服・靴を持ち込まない
感染症の基本対策
 感染症の基本対策でもっとも重要なのは手洗い、うがいの励行です。コロナ禍で一般の方にも広まって常識になりつつあります。
 体験受け入れ時には、手洗い、うがいを励行しましょう。また可能であれば、衛生管理区域専用の衣服、長靴またはブーツカバー等を用意しましょう。ただし、家畜防疫員の指示を受け、入場者に適切な消毒や清潔な衣服で来場してもらう等の協力を得られれば、必ずしも用意する必要はありません。
 当日に他の牧場に行った人の来場は基本的には断り、やむを得ない場合には着替えてきてもらうこと。また、過去1週間以内に海外へ行った人にはご遠慮いただきましょう。
 これらをしっかりと実施するように、必ずファシリテーターである皆さんが見届けましょう。
〜人を感染症から守るために〜 『牛から人 編』
 牛と人との共通感染症はたくさんありますが、代表的なのは病原性大腸菌O-157です。
 O-157は健康な牛の0.5〜15%が保菌していると言われています。牛は無症状で、糞で汚染された何らか(水や食肉、無殺菌牛乳等)が人の口から入って、感染する経口感染です。潜伏期間は3〜10日間で、乳幼児・高齢者では重症化、死亡することもありますので、気を付けて下さい。
手作り体験教室での注意点
■手洗い・消毒・手袋装着
■手作り体験教室で使用する牛乳は市販のもの
■容器は加熱殺菌できるもの
■作ったものを持ち帰らせない
■不特定多数への販売・譲渡は許可が必要

 手作り体験教室を実施する際は、守るようにしてください。手洗い、消毒はもちろん、手袋の装着も勧めましょう。
酪農教育ファームが牧場で開催できるようになったら
 酪農教育ファーム活動における『安全・衛生・防疫対策』で最も重要なことは、1.入念な計画、2.主催者側と来場者側との事前の打ち合わせ、3.当日の事前説明です。
 牧場の方で色々計画しても、来場者側の協力が得られなければ実現しません。受け入れをする際は、この3つのこと思いだし実施するようにしてください。
質疑応答
カウキーパーの使用について、どう思われますか?
天野
私の意見になりますが、カウキーパーを万が一の時のために使われる牧場もあると思いますが、一般消費者はキーパーが取りつけれられている牛がかわいそうと思う事もありますので、イベントや搾乳体験にはおとなしい牛を選んでいただくのが良いのかなと思います。
参加者A
安全対策の一環として使用しています。
参加者B
多くのお客様がいらっしゃるので動物福祉という観点から使用はしていません。安全対策として、比較的おとなしい牛を選ぶことと、何かの際には従業員が対応できるようにしています。
参加者C
夏はアブやハエが多く、おとなしい牛を選んでも動いてしまう時がある。安全対策という意味では使用してもいいのかなと個人的には思う。


千葉県農業共済組合 西部家畜診療所 技術主査 天野 はな氏

東京都出身。産業動物臨床の学生実習中に食糧生産現場の仕事の尊さに感銘をうける。
同時に畜産現場での女性獣医の活躍を知り、大動物臨床を目指す。
令和元年度より酪農教育ファーム研修会の講師を務める。
趣味はスキューバダイビング。SSI認定マスターダイバー。
(C) Japan Dairy Council All rights reserved.