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ー酪農教育ファーム活動における安全・衛生対策の確認(抜粋)ー(11月5日)
令和3年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(6回目/11月5日)
酪農教育ファーム活動における安全・衛生対策の確認
村田 亮氏
酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医細菌学ユニット 講師


 酪農教育ファーム活動のメインは、牧場に来て頂いて色々な体験をしてもらうことだと思います。牧場に人を受け入れる場合、牧場側の事前準備と、来場者に対する事前説明が非常に大切です。手洗い・靴底消毒の徹底、危険エリアの確認、薬品類の管理等、基本的な事ですが、受け入れる前に確認するようにしてください。
安全について
危険区域の事前確認
 普段牧場で生活している皆さんは、危ない所を自然に避けることができますが、初めて訪れる方は避けることができません。
 外部の人にとって危険かそうでないかを、事前に見学ルートを歩いて確認し、「危険エリア」と「見学可能エリア」を明確に表示・区分してください。立入禁止区域にビニールひもを張って通れなくする等、物理的に入れなくすると分かりやすいと思います。また危険エリアに関しては、事前に来場者へ説明をしてください。やってはいけない事やなぜ危険なのかについて説明してあげることも勉強になるかと思います。

ケガについての留意点
 事前に救急箱の中身をチェックし、劣化しているようなものがあれば交換をしておいてください。
 消毒薬や飲み薬が入っている救急箱があると思いますが、今は皆さんが消毒をしてあげることは基本的にNGです。切り傷等は温水で洗い流すのがよいとされています。消毒液を塗る事によって傷が治りづらくなる場合もありますので、傷はきれいに洗い流し、傷パット等で覆い、あとは病院へ行ってもらうようにしましょう。
衛生について
感染症の基本対策
●入れない(出入り口の消毒や靴底を洗う等)
●拡げない(動線の確保、踏み込み消毒槽の設置等)
●持ち出さない(牛舎を渡り歩かない等)

 1日に複数の牧場を渡り歩くのは非常にリスクが高い行為です。見学者の方への事前周知が必要です。

ウシに感染して問題となる伝染病
●口蹄疫
●BVD、RS等ウイルス性呼吸器病
●ロタ、コロナ等ウイルス性下痢症
●サルモネラ症
●黄色ブドウ球菌
●ヨーネ病
感染症の成立要因
1.感染源(微生物そのもの、微生物を持つ動物等)
2.伝播経路(感染源と感受性宿主をつなぐもの)
3.感受性宿主(微生物が体内に入ると病気を起こしてしまう動物、人間等)
 感染症が起こるには3つの要因があり、このどれかをなくせば感染症を予防することができます。

伝播経路の遮断
 ウイルスの種類によって変わりますが、口蹄疫は極めて少量で感染します。罹っても死ぬわけではありませんが、乳量が落ちるなど著しく生産性を落とすため、悪性な病気として国が指定しています。また、口蹄疫ウイルスは風に乗って広がっていくとも言われ厄介です。
 感染を防ぐために皆さんが一番対応しやすいのは、伝播経路の遮断だと思います。
 他の農場との接触を遮断してください。複数の農場の往来を禁止し、牛舎環境周辺へ消石灰を散布、また関係者以外の立ち入りや流行国からの入国者・帰国者の期間を置かない立ち入り等を禁止するようにしてください。
 感染経路の主体は「ヒト」です。人間がウイルスを付着させた状態で移動すると広めることになりますので注意してください。

 口蹄疫の消毒剤には、pHをアルカリ性に傾けることができる4%炭酸ナトリウム液や消石灰が有効です。身近によくある消毒剤にアルコールがありますが、口蹄疫には効きませんので気を付けてください。
 消石灰を用いた踏み込み消毒槽を使用する場合は、消毒剤を頻繁に交換してください。消毒剤は紫外線に弱く、寒い地域では消毒剤の表面が凍結することもあります。防止策として、穴が開いていて液体の上に浮く、バスマットのようなものを中蓋として入れておくと良いと思います。
 また、次亜塩素酸ナトリウムやヨード剤等ハロゲン系と言われている消毒剤は温度が高いと揮発し、殺菌効果が落ちますので注意してください。
Covid-19(新型コロナウイルス)と酪農教育ファーム
 牛や豚等の家畜への感染性については報告が上がっていません。牛がコロナに罹ってそれを人にうつす可能性は心配しなくて良いと思います。
 コロナウイルスは消毒剤には非常に弱いと言われていて、アルコール消毒剤等で十分失活します。こまめな手洗いだけでも感染性は低下すると言われていますので、心掛けるようにしてください。
人に感染して問題となる伝染病
 人に感染して問題となる伝染病には、カンピロバクター症、クリプトスポリジウム、サルモネラ症、腸出血性大腸菌症等があります。これらは動物にはあまり害はありませんが、人間が感染すると強い症状が出るものもあります。牧場に行って具合が悪くなった等、ネガティブなイメージが出回る場合もありますので、注意が必要です。
 牛舎内の見学中の飲食は控えてもらうこと。これらの病原体は手洗いや消毒で十分に防ぐことができるものばかりなので、牛舎を出たらすぐに手洗いをしてもらうようにしましょう。
手洗い施設
●来場者が動物エリアから退出する時に必ず手洗いが実行できるような場所に設置
●来場者数に十分対応できるだけの数を設置。十分な水量を確保
●手洗いは流水で行い、貯留水は使用しない
●小児やハンディキャップを有する来訪者でも使用しやすいよう設計
●石鹸(できれば液状石鹸)を常備
●ペーパータオルを常備することが望ましい
●特に冬期には、温水を供給できることが望ましい
●給水栓は、自動あるいは足で操作できることが望ましい
●給水栓の操作をするときは、手を拭ったペーパータオルを用いる
●消毒薬は、必ず手洗い・除水の後に使用

 大腸菌等には次亜塩素酸ナトリウムの消毒が有効です。手荒れ等が心配になりますが、十分に希釈すれば安全性も保てます。
生乳の取り扱い
手作り体験時の注意点
 搾った生乳をその場で参加者に飲ませることは避けましょう。
●手作り体験の原料は市販の牛乳を用いる
●屋内・日陰で作業する
●手指の洗浄・消毒
●容器は加熱(殺菌)可能なものを用いる
●作った乳製品は絶対に持ち帰らせない
 不特定多数への譲渡には許可が必要(食品衛生法・乳等省令)
 
  今はコロナ禍で換気をしなければいけないので、屋内かつ日陰で、風通しが良く砂埃が入らない場所を探して行っていただければと思います。
 また、今は使い捨ての容器もありますので、ぜひご活用ください。
こんな時どうする?安全衛生チェック!
体験前後にきちんとアルコール消毒をすれば、手洗いは省いても良いですか?
 アルコール等の消毒剤に汚れ(有機物)が混入すると、消毒効果が大きく低下します。手洗いをし、しっかりと乾燥させてからアルコール消毒をするようにしてください
冬場は寒いので消毒薬はお湯で溶かしても良いですか?
 次亜塩素酸系等の一部の消毒薬は高い温度で溶かすと消毒効果が低下するものもありますので、注意をしてください。
質疑応答
最近アルコール過敏症の子どもが多いです。手指消毒はアルコールではなく次亜塩素酸水を使用しているが、問題ないですか?
村田
次亜塩素酸水も効果があるので、濃度に注意をして使用していただければ問題ありません。

酪農学園大学 獣医学群 獣医学類 獣医細菌学ユニット 講師 村田 亮氏

生産動物も伴侶動物も、人間が生きていくためには欠かせない大切な存在である。そんな身近な動物たちが感染し、病気の原因要因となる細菌について、予防や治療に役立つ基礎的な情報を収集。
畜産物やペット(=家族)が安心で安全に暮らし、快適に生活を送れることを目指して、細菌病の研究を進める。
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