スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



ーワークショップ(抜粋)ー(9月7日)
令和3年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(1回目/9月7日)
上田 融氏
NPO法人いぶり自然学校 代表理事


 私は小学校の教員をしていた時にネイチャーセンターの立ち上げに関わったり、その後NPOの活動に参画し自然活動をしたりしていました。
 教員をしていた時から「自然学校」をキーワードに活動を続けているので「教育」との関わりが多いです。最近では森の幼稚園活動や里山小規模畜養等もはじめています。
 皆さんのように乳牛は飼っていませんが、馬や羊等を数頭飼って活動をしています。
ファシリテーターとは?
 最初に「酪農教育ファームファシリテーター」のおさらいです。「酪農教育ファームファシリテーター」とは何でしょうか。
 例えば「酪農教育ファーム指導者」という言葉があったとして「酪農教育ファームファシリテーター」とは一体何が違うでしょうか。似たような意味の言葉では「コーチ」や「インストラクター」もあります。
 「コーチ」や「インストラクター」は何となく意味が分かると思います。何か技術を持っていてそれを教えてくれる人、技術を提供してくれる人。「指導者」も似たような位置にあると思います。目標に近づくためカリキュラムを組んでくれる人。
 では、「ファシリテーター」とは何でしょう。日本語で言うと「促進、促す、そそのかす」という言い方になります。少しかみ砕くと「〇〇しないではいられない」ということです。
 つまり子どもたちが「牛乳が飲みたくて仕方がない」、「明日から酪農家になる!」と、自発的に思ってしまうことが、促すという言葉の意味です。
 子どもたちに「明日から牛乳を飲め!」と命令するのではなく、子どもたちが自ら「牛乳を飲みたくて仕方なくなる」という自発的な行動を起こさせることが、ファシリテーションです。そして、「酪農教育ファームファシリテーター」の皆さんはそれをやることが出来ると認証された人だと思います。
効果的な学習法「体験学習法」
 子どもたちが「〇〇しないではいられない」となる効果的な教育方法があります。それは「体験学習法」です。ただ一方的に話を聞くだけではなく、直接牧場へ行って色々な体験をすることでアクションを起こしたくなることが体験学習法です。
 「体験学習法」は同じ体験とつく言葉でも「体験主義」とは違います。ただ体験するだけではファシリテートはされません。「体験学習法」は体験を学びに変えるということが違います。
 「体験学習法」には4つのサイクルがあります。まず「体験(Do)」する。その後体験を「振り返る(Look)」、そして体験でなぜそうなったか「分析(Think)」し、次にこうしたらうまくいく等、考えを「一般化(Grow)」する。この4つの要素のサイクルを回すことにより体験が学びに繋がります。
コロナ禍での酪農教育ファーム活動
 酪農教育ファームファシリテーターとしての役割や、体験学習法が良いということをおさらいしました。
 しかし現在、新型コロナウイルス感染拡大防止の観点から、ありとあらゆる活動が自粛され、なかなか体験が出来ない状況です。
 では、体験が出来るようになるまで待ちますか。私はこんな状況でもできる体験があるのではないかと思っています。それは「議論」、「話し合う」体験です。
 話し合わせる、議論をさせることはファシリテーターの重要な技術です。体験学習法における「分析」や「一般化」の部分は議論させる技術がないと成り立ちません。
 今日はその「議論」や「話し合う」体験をみなさんにしてもらおうと思います。
話し合いの体験をしてみよう
 これから、Zoomのブレイクアウトルーム機能を使って、参加者同士で3〜4人のグループに分かれ、3回のグループワークを行います。

1回目:アイスブレイク
 アイスブレイクとして、自己紹介をしてもらいます。早めに自己紹介が終わってしまったら雑談をしていて構いません。

【アイスブレイクを終えての感想】
・良い雰囲気でお話ができました
・様々な地域の人と話せて良かったです
・少し恥ずかしかった
・初対面の方とお話しするのは緊張しました
・リードしてくれる方がいてスムーズに進みました
2回目:議論の体験
 あるストーリーを読み、それについて話し合いをしてもらいます。
 まず個人で、ストーリーの登場人物を好感の持てる順に順位付けします。その後、グループに分かれて話し合い、グループでの順位を決めてください。
 グループでの順位付けにあたり、いくつかルールがあります。多数決やじゃんけん、くじで決める、年長者や偉そうな人の意見に従うのもはナシとします。また、妥協や論破もナシです。全員が納得する順位を決めること。つまり全員が合意する必要があります。

【話し合っている最中で納得した瞬間はどこですか?】
・話に説得力があった
・このストーリーの続きがどうなるかで順位が変わる
・損得で考えると意外と纏まる
・人の役にたったか、たっていないか

 説得力があるかないか、話し合いの軸をどこへもっていくかで議論が進んだり、膠着したりするかもしれません。今回の話し合い体験から生み出されたコツかもしれません。

【話し合い活動をファシリテートするとしたら○○が大切!】
・積極的な傾聴
・広い視野
・視点を変える

3回目:議論の結果の振り返り
 今日はファシリテーションの中で特に「分析」、「一般化」という部分にフォーカスして、皆さんに体験してもらいました。今後、皆さんの牧場に子どもたちが来た時にこの経験を活かしてもらえればと思います。
 最後はこのテーマで話し合ってみましょう。

【今度子どもたちにこのテーマで話し合わせたい】
・私たちの町に酪農・牧場は必要?
・牛が人に飼われていることについて
・給食で牛乳を飲むって?
・牛の一生について
体験活動が再開できるその日まで
 オンラインでも出来る体験ということで、話し合う体験をみなさんにしてもらいました。
 ファシリテーターの役割は何度も言った通り「分析」、「一般化」を深めることです。体験して「面白かったね、美味しかったね」で終わるのではなく、「何が面白かったのだろう、なぜ美味しかったのだろう」をみんなで議論する。それが正しいか正しくないかは重要ではありません。自分なりの考えを持って「明日はこうする」という次のアクションを引き起こすのをお手伝いすることがファシリテーターです。
 少し難しい研修で疲れたかもしれませんが、近い将来、体験活動を再開した時のため今から準備をしていったらいいのかなと思います。



NPO法人いぶり自然学校 代表理事 上田 融氏

昭和48年生まれ。
小学校教諭1種、幼稚園教諭1種、CONE トレーナー、社会教育主事等の資格を持つ。
平成24年度から、酪農教育ファーム研修会の講師を務める。


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