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平成26年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(関東会場1)
―パネルディスカッション1―
平成26年度 酪農教育ファームスキルアップ研修会(関東会場1)が行われました。
体験から学ぶ出前授業
 口蹄疫発生以降、牧場の受け入れリスクも高まっており、牧場における酪農体験と合わせて、「出前授業」が各地域で盛んになっています。パターンとしては、酪農家が学校に牛を連れていくパターン、酪農家のみが訪問して授業を行うパターンがあります。
 今回は、「出前授業」をテーマに参加者全員でパネルディスカッションを行いました。
―仁科先生は幼少期に、周りに酪農家が沢山いる環境だったそうですが、「酪農」という職業や、酪農家に会うのは加茂さんが初めてだったということです。仁科先生が子ども達と一緒に加茂さんの授業を受けた感想を聞かせ下さい。

仁科:
はじめて酪農家さんの一日の活動を聞いたり、堆肥や餌や糞を触ったり、においを嗅いだりしました。率直な感想は楽しかったです。また、加茂さんと一緒に授業作りをした楽しさと、その授業に自分も生徒として参加できた中にも色々な学びがあり、45分の授業を通して楽しむことが出来ました。

―加茂さんと授業を作り上げた楽しさとは、具体的にどのようなことですか。

仁科:
授業内容の提案から始まり、加茂さんが持っていた授業のイメージとこちらの思いをうまくミックスして、まとめあげていきました。酪農家と教員というまったく違う立場で作り上げた授業でも、子ども達の発見を促すことが出来ると感動しました。

―出前授業の話が来たときどう受け止められましたか。

仁科:
私の小学校では、3、4年生になると宿泊プログラムの中に自然教室として酪農体験や、遠足の一環で牛の触れ合いを行っています。ふれあいと酪農を学ぶことは違うので最初はイメージが持てず、少し考えさせてもらいました。ですが、このチャンスを逃したら二度とないのではないかと思い、話を受けました。

―その時に「命」というテーマを決められたのですか?

仁科:
せっかく6、7歳という年齢でやるので何か関わりをもたせて、最終的に自分の生活に落とし込めたらいいなと考えていたら、牛と自分との生活の年表が頭に浮かんだので、そこでテーマを決めました。
―次にパネラーの皆さんにお話しを聞きたいと思います。
改めてどのような想いで酪農教育ファームに取り組んでいるかと、年間どのくらいの割合で、どのような方を受け入れているのか、また出前授業の経験についても教えてください。
関口:
私の考えの大元は、実は子ども達のことは一切考えていません。自分が楽しんで、どのようにやれば牧場が出来るかというのを一番に考えていました。
酪農家の願いは自分の牛乳が売れることです。どうしたら自分達の牛乳が売れるか、その為には「理解」してもらわなければならない。どういう風に理解してもらうか、それは自分達が毎日やっていること、こんな苦労をして絞った牛乳が水より安い。ではどうしたら自分達に付加価値を付けることが出来るのか、本当の味を子ども達に教えることが出来るのかを考えた時に自分の想いは一変しました。
小学校低学年には牛は子どもを産まなくてはお乳が出ないことから教えます。高学年、中学生、高校生とレベルを上げていきました。
最終的には消費者が来た場合は、どのようにすれば牛乳が売れるのかを伝えるのが一番の問題でした。それで体験内容を色々考えた中で、一番のメインは乳搾りで、その他に餌をあげたり触れ合ったり、ブラッシングなどやりました。
命を考えた時に、人間には様々な娯楽がありますが、動物達にとっては食べることが一番の楽しみです。それを一番に教えてあげなければならない。私の牧場では、どういうものを食べなければいけないかを教えることで消費拡大につながるのではないかという事を一番に考えています。
出前授業に関しては、あまり賛成してはいませんでした。やはり牧場に来てくれるのが一番です。しかし中には、行きたくても行けない子ども達も多いのです。そういう子ども達にも今後来てもらえれば、それは素晴らしいことだと思います。
野口:
私は、元々自然とか動物が大好きで酪農に関りたいと思って北海道の牧場に行き、今の夫と結婚したという経緯があります。命の大切さ、牛乳の消費拡大など、そのような大それたことを考えたことはなく、子ども達と楽しめたらと思い、スタートしました。
現在、中学生の体験学習を主に受け入れています。自分の娘が中学生の時に受け入れしてほしいという要望があり、その時は相当力が入って、朝早くから搾乳、子牛の世話、掃除と、盛りだくさんで子ども達がへとへとになるくらいやりました。
子ども達の生の声が聞きたいと思い体験が終わった後に感想文を書いてもらいましたが、「最後の牛乳が美味しかった」、「猫と遊べてよかった」など、私達が期待するような言葉ではありませんでした。私達は、何日も前から色々な準備をしてきたのに子ども達の感想はこれなのかと思いました。子ども達の望んでいることはこういう事ではない。決して酪農家になる子ども達を教えているのではないと気づき、牛舎に来て、自分達より大きい牛がいて、牛乳が出たとか、番号があるとか、そういうことの方が子ども達の教育的な何かをくすぐるのではないかと思いました。それからは肩の荷をおろして、どんなことを経験させようかと考えるようになりました。
8年前にアイスクリームの販売を始めてから、食育とか牛乳の消費拡大などに力を入れようと思い始めました。ジェラート販売と一緒に紙芝居を読んだり、酪農家の友人を招き酪農家の仕事の苦労や、お産の話などしてもらっています。スタートは出前授業というより、消費者の方々に私達の生活を知ってもらいたいということから始まりました。
牧野:
酪農教育ファームをどのような思いで始めたかというと、まず両親が職場体験という形で中学生、高校生を牧場へ呼び、生産の現場を知ってもらう目的で始めました。その後、酪農教育ファームの認証を受け活動をはじめました。
当時は、いじめなどで自ら命を絶つ子ども達が多かった時で、自分の命の重みを知らず生きている子ども達に対して酪農教育ファームを通じて、自分の命の重さを知ってもらいたいという思いで始めたそうです。
自分は6年前に活動を始めました。食育を通じて、酪農家は牛を飼って生活をしているという事を理解してもらうと事と共に、肉や牛乳など牛から命を頂いているといいう事を子ども達に伝えようと思って行っています。
出前授業に関して、東日本大震災の半年後に被災地へ行き、わくわくモーモースクールを行いました。最初は牛を通じて子ども達に何を伝えられるか不安でした。しかし、実際行ってみたら、こちらが元気を与える前に子ども達から元気をもらいました。
今年、盲学校で出前授業があり、親牛と子牛を連れて行きました。子牛が怖くて触れなかった女の子が、親牛に触ることが出来「あたたかい」と言ってくれました。普段目に見えて牛を触っている子からしたら、何気ない一言だと思いますが、実際自分達が目を閉じて触ったり、搾乳することを考えるとこれほど怖いことがあるのだろうかと思いました。この女の子にとっては一生の中で大きな出来事になったのではないかと思います。
酪農家のありのままを伝えてほしい
―酪農が子ども達に与える一番の学びとは?子ども達と接する時に酪農家さんにお願いしたいことはありますか。

仁科:
小学校でも生きものを飼って育てる事は非常に多く、動物と触れ合う機会はどの学校も多いと思います。ですが、飼育している動物、もしくは家で飼っているペットと酪農では関わり方が違うと思います。ペットは自分の命を全うしていますが、酪農は命に期限があること。ただそれには意味があって、その命の期限はみんなにつながっているという事を伝えたかった。
酪農は普段の飼育では学ぶことのできない生きものを飼っている。私がそれを話しても意味がなく、やはり酪農家さんが話してくれることにすごく意味がある。ひとつひとつの言葉に重みがあるなと感じます。酪農家の方にお願いしたいことは、ありのままを伝えてほしい。酪農家の方の1人1人の思いを子ども達の前で話して頂ければ、とても意味があって伝わることだと思います。

―ありのままとは具体的に?

仁科:
低学年だったので、お肉になる事を最初はぼやかして伝えなくても良いかなと思っていました。ただ、いずれ知ることですし、こういう機会で直接酪農家の方にお話しして頂けるチャンスがあるので、隠すのではなく「牛の一生をしっかり伝えて下さるとうれしいです。」と、加茂さんにお伝えしました。
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