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講演「今を生きる、子どもたちの現状と育ち」(スキルアップ研修会北海道会場)
 私は学びの場を作る時に、まず人がどこに座るか、入ってきてからどんな行動をとっているかを見ます。それは、これからの参加者との関わり方にすごく関係があるからです。実は最初の子どもたちからの反応の仕方によって、講演の中身を変えたりすることあります。
 本日の講演では、ネタを持って帰ってもらうのではなく、今までのプログラムに対しての見方とか子どもたちの見方とかが少し変わるのではないかと思います。皆さん自身の在り方が変ったら、行動の仕方が変わります。在り方の中には、物の見方があります。物の見方をもって存在している在り方、そのものの中身が変わるのではないかと思います。
プレゼンテーションってなに?
 「プレゼンテーション」は日本語に訳したらなんというか知っていますか?「プレゼント」、「贈り物」でしょうか。
 実は、「プレゼンテーション」は日本語にすると、「提示」です。提示という言葉も分かりにくいので、国語辞典で調べてみると、「自分の考えを指し示す」。プレゼンテーションとは自分の考えを指し示すということです。大事なのは自分の考えであり、自分にとっての問題意識です。
 この問題意識とは、皆に呼びかけることです。「もう少し考えてみませんか」、「このままで良いですか?」という呼びかけ、提示することなのです。
 自分の問題意識はどこにあるのかが、これから皆さんがプログラムを作っていく時に大事な事なのです。自分の中の問題意識が研ぎ澄まされてないと、子どもたちが、なんとなく体験して帰ってしまうようなことが起きてしまう。プログラム全体の流れで、皆に何を提示して、何を考えてもらったりするかです。どこに自分が問題意識をもっているか、だれかの考え方ではなく、自分の考えを指し示すこと、それは「私のメッセージ」です。
 私は、高校生にプレゼンテーションを教える授業もやっています。彼らはいろんな調べ学習をして、それを発表します。これをプレゼンテーションと思い込んでしまっています。ほとんどの場合が調査報告で、「調べてみたらこうでした。」この中に自分は入っていません。調べた事が自分にとって何なのかを提示して、初めてプレゼンテーションになります。
 プレゼンテーションは、贈り物なのです。贈り物を、自分の好きな人や周りの人に、プレゼントする時にすごく考えますよね。相手にとってすごく嬉しいもの、渡し方も考えなければいけない。ある種のパフォーマンスです。パフォーマンスは自己表現的な要素があるから、得意分野で行なったら良いと思います。しゃべりが得意な人、絵を使って話す方がいい人、酪農教育ファームではあまりないかもしれないけど、音楽を使った方がいいのかもしれない。どんな方法でも良いです。
 プレゼンテーションは私のメッセージ「I(アイ)メッセージ」をプレゼントする、パフォーマンスと考えてもらったら良いかなと思っていますし、そこが一番大事だと思います。
今の子どもたち
 私が小学校で講演をやる時に、時間になって「今から始めるからおいでー」と言った瞬間に、子どもたちが最初にどんな行動をとると思いますか。実は、隣の人、周りを見ます。皆さんの牧場に来る子どもたちもしていませんか。周りが気になるのです。自分がどう見られているか、さらに、今の子どもたちの関係性で言うと、一番気になるのは仲良しグループです。 みなさんも小・中学校の頃に仲良しグループがあったと思いますが、何人位でグループを作っていましたか?これは私が見ている限り、年々減少傾向にあります。年配の方に尋ねると、だいたい5,6人。20代後半から30代のお母さんだとだいたい3人。今の子で多いのはペアです。だから周りを見るといっても、ペアの相手と合わせます。
 今の子どもたちの繋がり方がどんな感じかというと、ロープをピンと張った状態です。ピンピンの関係です。これは人間関係ではなく、対になっている対人関係です。
この関係性には、恐れがあります。切れたらどうしようという恐れがあるので、切れないようにしようとします。この二人の中で良いことは、対立が生じないということです。
ぶつかってしまったら切れてしまいそうで怖いから、相手に合わせるのです。大抵の場合はどちらかが主になっていて、それに合わせているケースです。これはコントロールする関係です。少し言葉が悪いかもしれないですが、支配する側と支配される側の関係という事です。人間関係の場合でいうと、客体性を持っていると言います。主体的でない。
主体と客体
 誰かの期待に応えたり、何かの評価と照らし合わせながら自分の行動を選んでいる、これを客体性といいます。主体的というのは、例えば、本日この部屋に入って来た時に、「空いているラッキー!」って言って一番前の席に座る人。これは主体的です。
 英語でこれを「be」。be動詞のbeです。be動詞というのは、いつも存在していることを表す言葉です。「私はここにいます。」この言葉の中には、なにも行為は入っていません。つまり、あるがままのことです。
 「being」この言葉はあるがまま、その人の在り方そのものです。先ほど話した、ロープをピンピンに張った状態の中では、あるがままでしょうか?たぶん自分の思っている事は言わないはずです。あるがままであることを認めさせなかったり、あるがままではない関係性なのです。このピンピンの関係のことを、「強い絆」と呼んでいます。酪農教育ファームに来ている子どもたちもこの状態を引きずって来ているかもしれません。それが投げかけた時の反応に出ているのかもしれません。
 では、考えてみてください。相手がbe、あるがままだったら、何が生じるか。違いが出てきます。さっきは違うことを認めなかった。違いがでてくると今度は対立が起きます。けれども、二人の関係の中で、違いが認められるようになったら、強い絆が「深い絆」になります。言い換えるとしたら、信頼関係です。信頼関係は大丈夫だと思える関係だと思います。ぶつかり合うかもしれないけれど、私たちは絶対に大丈夫。大丈夫だと思えるから対立できるのです。親子関係もそうです。絶対にお母さんはロープを離さないから大丈夫だと思っているから、反抗期が来るのです。今の子にあまり反抗期がないということは、ずっとピンピンのままになっている可能性があります。だから対立をしないのです。親に合わせるから、親の物語を生きている、客体性の強い生き方になっているかもしれません。
 一方で、主体的であるということは、ものの見方は自分にあるということです。自分にとってどうなのか、やってみたい、やってみたくない、自分が主体だったら自分の中にある価値観とかも大切になります。それで行動を選ぶ。でも客体性が強いと、人がどう見るかというのが一番なのです。
「do beのクロス」
 皆さんは、体験に来る子どもたちの行動を見ていると思います。それを見て色々な事に気づいたり、感じたりしていると思います。
 子どもたちがしていることが見えやすいのは、doの方。表質の仕方、行動です。一番目立つのは「積極性」だと思います。積極性の強い子はどちらかというアクティブです。
 もう一つ大事な軸は、在り方の軸です。どうあるか。
在り方に、人それぞれ独特の在り方があります。主体性の強い人は、自分にとってその人がどうか。という事。そのものの見方で見て行動しているはずです。客体性が強い人は、周りがどうかという物の見方を持って存在しているはずです。つまり、主体性の強い人の方があるがまま度が高いです。
 皆さんに、在り方そのものが変わったら良いなという話をしました。つまりdoingが変わるのではなく、それ以前に在り方(being)が変わったら、結果的にdoingが変わるということが起こるのです。doとbeはいつもクロスしているのです。
プレゼンテーションの時のポイント
 牧場体験のDVDを見ていて、子どもたちの中で色々な感情が動いていると見て取れたシーンありました。それは例えば、子牛が生まれた時、母牛といれる時間がほとんどないという話を、牧場主さんが話している時です。子どもたちの顔が「きゅーん」ってなっていました。なぜかと言うと、自分とお母さんの事に置き換えているからです。子どもたちがすごく主体的でいる瞬間でした。子どもたちが感じている時間に一緒に揺れてあげる。間をあける(deing)、それがdoingに繋がります。心の中が動いているということを大事にしたいのです。子どもたちが主体で、主役だよということを意識しているから間があるのです。彼らと一緒にいるのです。参加者が自分のこととして受け取ることはすごく大事だし、それから、投げかけをして、参加者が学びの主体になるように心がけることはすごく大事かもしれないですね。確かにプレゼンテーションってプレゼンテーターがただ一方的に話しているようだけれども、ちゃんとここで学びの場に乗っかってもらうためには、投げかけは実はすごく大事なのです。
 学校の授業でも投げかけた瞬間に、先生が主だったものが変わる瞬間があります。例えば歴史の話で、その時どうなったと思う?もし皆だったらどうする?と聞かれたら、子どもたちは自分に置き換えます。その後、実際の歴史を話すと、話の中に入りやすくなると思います。それくらい主体的になるというのはすごく大事です。在り方なのです。在り方に影響力を持っているのです。今の子たちは、主体性がすごく弱いと、自分に言われている感じがしません。先生が話していても、自分に言われている気がしなくてそこに存在していないかのように聞いています。最近すごく多いです。寄って行って、君に言っているのだよと言うと、「うん」と笑い返されます。自分に言われている感じがしないのです。それは、しっかり話を聞いてもらったり、寄り添って話をしてもらっていない。自分が主体になって話している経験が著しく少ない。だからそういう意味でもきちんと投げかけてみたり、触れたり、できるだけ、子どもたちがありのまま実在できるように、工夫をしてみてください。
マザーアース・エデュケーション 主宰 松木正

1962年、伏見生まれ。
大阪府立北摂高等学校 学校協議委員会
大阪府立泉南市教育委員会「学びの場づくり」プロジェクト座長
大阪府立学校人権教育研究会スーパーバイザー
聖マーガレット生涯教育研究所(SMIEL)環境教育アドバイザー   など
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