スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



講評/審査発表(スキルアップ東京会場)
審査発表「一番おいしいバターはどのグループ?」
 今回、バター作りでもチーズ作りでも、いろいろな乳製品を作ることは重要な意義があると感じました。ただ単に作って食べるだけでは、効果は薄いと思います。なぜ牧場で酪農家が行うかという視点で考えた時、生産している場所で、乳牛がどの様な過程で乳を生んで、皆が使う牛乳を提供しているのかという一連の流れが最も重要な見学のツールだと思います。それに伴うものとしてバター作りがあるのだろうという気がします。
 バターの味は多様であり、作り方によって、全然違うことがはっきりしました。
 バターはどうして固まるのかということに関して、D班は牛乳だけで作っています。ですから、牛乳だけで作れないという事はないです。
 かなり努力が必要になりますが、風味豊かな素晴らしいバターが出来ます。少し水っぽいですが、特徴としては甘いです。先ほどD班が、今日の牛乳は甘いから、バターも甘いに違いないと発表していましたが、全部が甘くなるのではなく、水分がどれだけ含まれているかどうかで強弱がつきます。
 また、はっきり言えるのは黄色いほど水っぽくないこと。水っぽいほど甘みが少なくなりますが、その辺りは兼ね合いで、甘みがあり風味豊かななめらかなバターが出来ると思います。
食べものを評価する時の三つのこと
 今回の評価はあくまでも私の視点で、これが絶対と言うわけではありません。
 どの様な視点で評価したかということを説明すると、食べものの評価は、必ず食べる前と、食べている時の評価をして、食べた後の余韻を楽しみます。その三つの過程をすべて、今日は楽しまさせていただきました。
 まず、食べる前の評価は見た目です。色と艶、なめらかさは食べる前の視覚のポイントです。
 色で予想されることには、水っぽさがあります。同じ牛乳、生クリームを使ってるので原料に差はありませんが、出来るものに差がでます。脂肪が多いか、水分が多いかということに繋がります。
 また、食べる前になめらかさを手で感じます。手にとってみて、どんな粘性となめらかさがあるのか。基本的には手が温かいので、そのまま香ると、バターの風味がでてきます。かたまりの場合は表面を香るのではなく、中を割って香ります。できるだけ鼻近くで、風味を確かめます。
 食べた後は、甘みがあるか、酸味があるか、塩味が適切かどうか。後は、先味があるのか、コクがあるか風味がいいか、それと総合的においしいかどうかというのを判断をします。
A … 色が黄色で艶があるが、甘さが弱い。風味の点で優れている。特徴は塩味が強い。
B … 塩味が強く、若干甘みが弱いが、風味の点で優れている。AよりBの方が塩味が弱く感じた。
C … 甘さ、クリーミー、先味、濃厚さ、コク、風味の点で優れている。
D … 色が良くコクがあり、なめらかさの点で優れている。甘みが若干弱い。
D’は、牛乳だけで作ったバター。先味や溶けが素早く、なめらかさにやや欠けるが風味に優れている。
E … 甘みが強く先味としてのインパクトがあり、なめらかである。風味豊かで白色が強い。甘さとなめらかさが、絶妙に絡めあって良かった。
F … 塩味は全然加味していなかったが、若干他より甘みが薄かった分、塩味があったと認識した。黄色味が強くなめらかである、甘みにかけるが風味が強い。
G … 白色が強く、甘みがあり、先味ととろみがあり溶け味のいいバター。
G’は、ジャージー乳で作ってきていただいた発酵バター。酸味があり、バターミルクも飲みましたが、ヨーグルト状ですごく濃厚な香りと酪酸臭のような香りがしました。カロチン含量が高いバターであることが見た目ではっきり分かり、一番黄色味の強かったFのものより十倍以上黄色かったと思います。
H … なめらかさに富み、甘み先味にややかけるが風味の点で優れているバター。
 最後に食べた後の感想として、油分が残っているとコクが出てきて、舌に残っていいバターということです。その中で、順位を付けるのは難しかったですが、いいなと思ったのは、Cです。ダントツにCが良というわけではなく、EやFなど、甘みの点、なめらかさの点で甲乙付け難いところがありました。AとBは塩味の点で全体の評価をしたときに甘みが薄れてきており、全体と分けて考えた方が良かったのかもしれません。黄色が強いのがEとFで、その中で、Fはそれほど強くなかったですが甘みもあり、なめらかさもあって、黄色味が優れていて総合的なバランスとして高い評価です。
 この様に評価する時に、味覚として酸味を含めて塩味や甘みなどを判断する基準を持っていて欲しいです。塩味もつけると相殺される場合がありますが、バターとして舐めた時にしょっぱいかしょっぱくないかという事もひとつの基準ですし、塩味はどれくらいが適当なのかという自分自身の基準を持っていたほうが良いと思います。
嗜好は個人のもの、正解はありません
 色味と塩味の点から、子どもたちに同じ牛乳から作ったバターなのにこんなに違うという差を見せて、びっくりさせるのも手段だと思います。味の差を感じ取れる子どもたちになれば、二つのバターを作る事も可能です。こういう学びの視点もあると思います。味を味わう経験、味を分析することは、大人でも子どもでも出来ることで、能力として持っていた方が良いことです。その辺りを加味しながら体験を行っていただければと思います。
 味の嗜好性は個人のものです。甘みの強さなど判断する基準はあると思いますが、おいしさは総合的な基準です。個人が美味しいと思うものを否定することは、味覚教育の場合はほとんどありえません。こっちが美味しいと思う人、あっちが美味しいと思う人がいて良いのです。それを無理やりこっちの方が美味しいという指導は絶対しないようにお願いします。子どもたちの経験がだんだん蓄積されていくと、おのずと同じような嗜好性になる可能性もあるわけで、経験の中であたかも正解を強要するような言動だけはファシリテーターとして謹んでいただければ幸いです。それが最も重要だと思っていただいても過言ではないと思います。
(C) Japan Dairy Council All rights reserved.