スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



全体の講評
(スキルアップ福岡会場)
食べること、食べるもの、食べかたから考え、育てる
 食を教える教育から食を意識する教育へ。その為に私達は、何を感じなければならないか、食をどうやって味わうかという視点で、フードコンシャスネスという活動を行っています。
 人が本質的にもっている生命力を涵養する。食を教えるという教育を見直し、食に対する感謝の念や自然観、味わいや香りに対する五感を耕しながら、生きる力、考える力、文化や未来を創造する力を育成する「食を意識する(フードコンシャス)教育 」、感覚や味覚教育を中核とした五感を通じた人間力(五感/社会性意識)復活型教育の必要性を意味します。

 フードコンシャスネスは既存教育のあり方のみならず、失われつつある日本人の感性を見つめ直し、「食は命なり、食は社会なり、食は地球なり」を意識でき、豊かな知性と感性の喜びをもたらす人間教育の源泉となり得るのです。酪農を通じ、牛乳やバター、チーズなどを含めて色々な体験が出来るような気がします。
 「牛乳はおいしい」というのが表層です。牛乳は甘くて白い、毎日当たり前に存在するために、感謝の念がないのです。子どもたちを含めて、そういう食の表層だけを教えるのではなく、食の隠されたものや事柄を感じ取るために、五感や心で味わう。その評価や背景を理解し、食を自律的に選択できる力。さらに、自分で思考し生きる力、人生を豊に味わう力、文化や未来を創造する力を培うことが出来るのです。

 食に隠されたものや事柄を感じ取るというのは、牛がどういう風にして乳を出しているのか、何の為に乳を出しているのかという事をきちんと感じとって乳を頂くこと、命を頂いているという意識が重要なのです。このような意識がある子どもや大人を育てることが重要であり、その役割を担うのは教員なのです。
残念ながら教員にそういう意識がない場合も多いので 親であり、生産者である皆さんに頑張って頂き、多くの大人や子どもにその情報を伝えていただきたいと思います。

 その時の伝え方ですが、問いかけを中心にして答えを言うのではなく、出来るだけ思考させることが重要です。「どんな味がある?」と問いかけた時に、「甘いのがあるよね?」と自ら言わず、子どもたちから、「甘いのがある!」という答えが出たら、褒めてあげる。「こっちの方がねっとりしている」という言葉が出たら「それをコクというのだよ」などと伝えるように、子どもの体験と感性が最初にあって、それを助言するという事が皆さんの役割だと思います。
「食は命であり、繋がりであり、恵みである」
 命(食べ物)が産まれた瞬間、産まれた大地や海、牧場も含めて、食するまでの過程に想いをめぐらす機会を提供する。「味わう」とは五感や心で感じる事であり、地球上の多くの繋がりがあってはじめて成り立つものと意識してほしいというのが、フードコンシャスネスの意味合いです。

 私たちが提唱する4つの心「ありがとうの心」、「いただきますの心」、「ごちそうさまの心」、「もったいないの心」。これにより食や命、そのほか多くのものとの繋がりを意識することにより、食教育の新たなる展開が生まれると考えています。

 ちなみに「ありがとう」の反対はなんだと思いますか?
「ありがとう」と言うと「どういたしまして」と言いますが、こちらは挨拶の「ありがとう」の方で、私たちが使っている「ありがとう」は別の意味です。「ありがとう」は、「ありがたい」というのが根本です。
では、「ありがたい」の反対はなんだと思いますか?
実は、「当たり前」です。当たり前に存在しているからこそ、感謝しなくなってしまいます。牛乳があることは当たり前ではないのに、子どもたちは当たり前だと思っています。なにが違うかというと、周辺の状況を心で感じたことが無いから、感謝の心は無いのです。
それを伝えるのは生産者である皆さんなのです。


品川 明・学習院女子大学 国際文化交流部 日本文化学科・環境教育センター教授

  
海洋生理生体学、環境教育、人・職・環境コミュケーションを研究分野とし、重要な環境資源である水・食物・生き物・人を通じてそれらの関係を考える。
児童・生徒や教員および社会教育指導などに水辺の環境教育プログラムや味覚教育、食物教育を実践している。体験型アクティビティーとそれらを指導するための問いかけをベースにした教育学を提供し、コミュニケーションやファシリテーション能力を有し、社会性ある人間を育てる事を目標としている。
また、最近では「食べること」「食べるもの」「食べ方」から考え、育てる知の未来を合言葉に、産官学連携食育プロジェクト「フードコンシャスネス」の実行委員長も務める。
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