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−安全衛生−(認証研修会東京会場)
講演「酪農教育ファーム活動における安全・衛生・防疫対策」
山村 文之介氏
千葉県農業共済組合 北部家畜診療所 技術主査
酪農教育ファーム活動で重要なこと
酪農教育ファーム活動は「酪農を通じて、食やしごと、いのちの学びを支援する」をねらいとし活動していますが、その活動をするためには「来場者」と「受け入れる牧場」の双方にとっての「安全」と「衛生」が重要です。
酪農教育ファーム活動における衛生・防疫対策
〜牧場を感染症から守るために〜『人から動物編』
酪農教育ファーム活動は、本来「関係者以外立ち入り禁止」である牧場に人を入れることになりますので、衛生・防疫対策を守ることが必要です。その基準として「飼養衛生管理基準」があり、定められた基準を理解した上で活動を行うことが重要です。「飼養衛生管理基準」は家畜伝染病予防法という法律の中の省令です。守らないと罰則もありますので気を付けてください。
「飼養衛生管理基準」は、大きく4つの項目に分けることが出来ます。
1.牧場主・スタッフの管理責任
2.病原体を入れない
3.病原体を拡げない
4.病原体を持ち出さない
2018年に岐阜県で26年ぶりに監視伝染病「豚熱(CFS)」が発生し、日本国内に感染が拡大しました。発生に関して実施した調査などにより、特に「飼養衛生管理基準」が順守されていない、指導しても改善されていない農場で発生していたことが明らかになりました。このことを受け、すべての家畜の「飼養衛生管理基準」が見直されました。
「飼養衛生管理基準」は家畜を伝染病から守るための「重要マニュアル」になりますので、家畜を飼っている人、畜産に従事する人は知っていなければなりません。
酪農教育ファーム活動を行う上で特に重要視する飼養衛生管理基準
■家畜の所有者は、伝染病の予防およびまん延防止に対する責任を有する
■家畜保健衛生所から提供される情報を必ず確認すること
■講習会へ参加、農林水産省のホームページの閲覧など家畜防疫に関する情報を積極的に把握すること
■家畜保健衛生所が行う検査を受け、指導に従うこと
■飼養衛生管理マニュアルを専門家の意見を反映させた上で作成し、従事者へ周知徹底すること(令和4年2月施行)
■畜舎ごとに飼養衛生管理者を配置すること。伝染病を発見した時は直ちに家畜衛生保健所に通報することを従事者に周知徹底すること(令和4年10月施行)
現在どんな病気が流行っているかなど家畜保健衛生所から提供される情報は常に確認するようにしてください。
アジアではまだ口蹄疫が発生しており、日本は発生国に囲まれている状況です。最新情報を把握し、しっかり対策をする必要があります。
いろいろな感染症や伝染病がありますが、なぜ口蹄疫のことばかり言うのかというと、1.経済的な損失、2.防疫の難しさ、3.人への影響、この3つのことが、重要な伝染病を選ぶ基準になっています。その中で口蹄疫の重要度が高いです。
宮崎県での口蹄疫の時に目の当たりにしたと思います。口蹄疫はもちろん目に見えません。人、物、動物、畜産物、いろいろな物で運ばれ、いつ来るかわからず、防ぎようがありません。普段から飼養衛生管理基準をしっかり守って、目に見えないものも防げるような状況を作っていきましょう。
衛生管理区域設定
病原体の侵入およびまん延の防止を重点的に行う区域として衛生管理区域を設定し、それ以外の場所を明確に分けることが必要です。
出入口の数を必要最小限とし、家畜、資材、死体などの持込みまたは持出し場所は可能な限り境界に位置するように設定すること。
衛生管理区域への病原体の侵入を防止するために、接触の機会を最小限にする、出入口・施設付近に看板設置や必要な措置、また過去1週間以内に海外から入国・帰国した者を立ち入らせないなど対応をしてください。
さらに、病原体の汚染拡大防止するために、立ち入る者に対し、消毒設備を利用して手指の洗浄・消毒だけではなく、靴が汚れたら靴の洗浄・消毒などにも気を付けましょう。
具体的な防疫対策としては参加者名簿を作る、動物と接触する区域、接触しない区域を明確に区別する、入場者に防疫処置を周知し協力してもらうなどの対策をとってください。
酪農教育ファーム活動における衛生・防疫対策
〜人を感染症から守るために〜『牛から人編』
感染症の基本対策は、病原体を「入れない」「拡げない」「持ち出さない」です。そのために、手を洗うことはとても重要です。
よく泡立てて、最低20秒間、両手を擦りながら洗いましょう。「よく泡立てる」ということが重要です。指の間など洗いづらい箇所もあるので注意してください。洗い流す時は、バケツなどに溜めた水ではなく流水で洗い流してください。自分で洗うことのできない幼児などには監督者の手助けが必要です。
人を感染症から守るために
牛と人との共通感染症はたくさんありますが、酪農教育ファーム活動において重要視される代表的なものは病原性大腸菌O-157です。
O-157は健康な牛の0.5〜15%が保菌していると言われています。牛の糞で汚染された何らか(水や食肉、無殺菌牛乳など)が人の口から入って感染する経口感染です。症状が出るまでの潜伏期間は3〜10日間あり、基本的な症状は下痢です。乳幼児・高齢者では重症化、死亡することもありますので、気を付けてください。
O-157をはじめいろいろな感染症がありますが、どれにも共通する対策は手を洗うことです。
受入れ時の安全を考える
危険区域の事前確認
皆さんは自身の牧場のことは十分に把握していると思いますが、来場者にとっては知らない場所であるという認識を持っていなければなりません。特に子どもやお年寄りの目線に立って牧場内を見るようにしましょう。
アレルギー体質の子どもへの配慮
アレルギーは呼吸困難になってしまったり、ひどい時は命にかかわることもあるので注意してください。
事前の打ち合わせ段階と見学開始前に、必ずアレルギー体質の方がいないかを確認するようにしましょう。
牧場には、牛の毛や乾草など普段の生活で触れることのないアレルゲンとなる物質が多くあります。もしアレルギー症状が出た場合は、安静にして、衣服をゆるめ、意識がもうろうとしている(血圧低下の可能性がある)場合は仰向けで寝かせ、足を少し高くするなどの対応が必要です。
酪農教育ファーム認証牧場における動物愛護
認証牧場に消費者から「牧場で飼育している『牛以外の動物』への虐待を改善してほしい」という問い合わせが近年寄せられています。
現地確認した結果、虐待の事実はありませんでしたが、「誤解される恐れのある事例」はありました。牧場へは適切な対応をお願いし、問い合わせ者に対しては現地確認の状況などを伝えています。
牧場を一般公開することは、いろいろな視点で見られることになります。また、伝える側としての考えの発信だけではなく、消費者から伝えられる側にもなるということを常に認識してもらえればと思います。
価値観や考え方には違いがあるのは当たり前のことで、立場や価値観などを互いに意見交換し、学んでいくことが、酪農教育ファーム活動の醍醐味や目的だと思います。一般消費者の目線に立った畜舎整備が重要になります。
ー質疑応答ー
Q.
大学学内に農場があり、留学生が見に来ることが多いのですが、英語の立て看板を掲示していても、平気で衛生管理区域まで入ってしまいます。日本の常識が分からない通じない方に有効な対策や過去の事例があれば伺いたい。
A.
以前に聞いた話ですが、ある牧場では衛生管理区域の境界に溝が掘ってあり、出入り口以外からの出入りが容易にできないようにしていたそうです。物理的に遮断する方法が有効かもしれません。
千葉県農業共済組合 北部家畜診療所 技術主査 山村 文之介氏
神奈川県出身。元々猫が好きで獣医師を志したが、学生時代は旅行が趣味で長期休みは全て海外で過ごしていたことから、動物病院のインターンに行かず、「とりあえず」という気持ちで北海道十勝で産業動物の獣医師の仕事に就く。仕事をしていくうちに産業構造を理解し、解決すべき問題や人材育成の必要性を感じ、気づけば12年間十勝で診療や疾病防除、人材育成に奮闘。平成29年から千葉県で日々の仕事や人材育成に取り組んでいる。
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