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2019年度 認証研修会(札幌会場)ーワークショップー(抜粋)
酪農教育ファームファシリテーターの役割
藤樫 亮二 氏
プロジェクトアドベンチャージャパン


 プロジェクトアドベンチャージャパン 藤樫亮二さんを講師に迎え、ワークショップを行いました。
 体を動かし頭を使う参加型のワークを中心に、「自分にとっての酪農教育ファームファシリテーター」を見つけていきました。
「あそび」=「まなび」、成長の場づくりと支援
 今日は、みなさんで話したり、あそんだりしながら、ワークが終わるころには、「ファシリテーターってどんな人?」、「私はどんなファシリテーターになりたい?」ということが体験的に感じられる時間にしたいと思います。
 あそびといっても、体を活発に動かすと言うよりは、心を使うあそびです。人との関係性へのチャレンジや、自分自身へのチャレンジになればよいと思っています。自分の気持ちも、隣の人の気持ちも大事にしあえる心地よい場所を作りましょう。
あそび1:ペアで支えよう!
 ペアになり、サイコロ型の木のブロックを4つ、お互いの人差し指で挟むように固定。その状態のまま、歩いたり、飛んだり、回ったりします。
 次はその状態のまま、他のペアと対戦します。攻撃できるのは木のブロックに対してのみ。(木のブロックが崩されたら終了)
 1回目は攻撃されて崩されたら終了、2回目は崩されても復活可能、3回は崩されたらペアを変えて復活可能、と条件を変えて行いました。
 復活できるパターンと、できないパターンとでは、「復活ができると思ったら、守りより攻撃に重点をおけて勢いよくできた」や「人によって指先に伝わる力が違った」、「ペアを変えるワクワク感があった」と気持ちに変化が現れました。
あそび2:こんな時、自分はどんな気持ち?
 小さい円の中は安心ゾーン(comfort zone)です。その円を囲う大きい円はドキドキ・ワクワクゾーンです。円の外はパニックゾーンです。
 いつくかの場面を想像した時に、自分がどのゾーンにあてはまるかを考え、立ち位置で表現しました。
■バンジージャンプをする
■町内カラオケ大会で歌う
■英語が通じる国に1人で1週間滞在
■言葉が通じない国に1人で1週間滞在
■人前(30人位)で話(5分位)をする
 当たり前ですが、みんな立ち位置が違います。私にとってこれは大丈夫、だから相手も大丈夫ということはありません。
 私も今でこそ人前に立って話していますが、昔は緊張しましたし、苦手でした。でも、仕事などで、人前で話す機会が増えたら、だんだん平気になっていきました。
 昔、緊張していたことも、今はそうでもないことになったと考えると、何事も頑張ればできるかもしれないと思えてきます。想像しなかった外の世界が見えてくるような感じです。自分の安心ゾーンが広がっていくと、出来ることも広がります。それを私は「成長」という言葉に置き換えています。成長するためには、まずチャレンジしてみる必要があります。
 とは言え、その場に参加していること自体に緊張している人もいます。その人にただ「チャレンジしてみようよ」と促してもパニックしかありません。体験がつらいものになってしまいます。
 まずは、相手にとっての安心ゾーンを作ってあげることが大事です。この場所は大丈夫だと思えたら、一歩踏み出してチャレンジしてくれるかもしれません。
あそび3:真っ暗などうくつの中から宝物を持ち出そう!
 ペアになり、探検者とナビゲーターに分かれ、どうくつ内にある宝物を持ち出します。
 探検者は目を閉じ、ナビゲーターは言葉のみで探検者を安全に宝物の位置までガイドします。ナビゲーターはどうくつの中へは入れません。探検者はどうくつの中にある様々な障害物に触れたら、最初からやり直しです。

どうくつ探検を終えて気付いたこと
■「前に一歩」と言っても、自分の一歩と相手の一歩は違っていた。
 まず相手の一歩をみてから指示をすれば良かった。
■指示をしてからの相手の動きが早く、ナビゲーター側が焦ってしまった。
■最初の説明を何も聞いていなかった(ルールを無視していた)
 例えば、子どもたちの学びの場では、大人の指示が多すぎると子どもの自由度が少なくなり、自分が参加した感覚が薄くなってしまいます。
 子どもにとっての自由の幅を増やすことが大事です。極端ですが細かな支持を何もせずとりあえずやってもらうのも良いと思いますし、相手に質問して意見を聞きながら促していくような関わり方もあると思います。
 主役(主体)は、チャレンジする人です。ファシリテーターが主役の活躍や学びを促進する人だとすると、指示だけでチャレンジを促すのは難しいと思います。子どもたちに主体性を持たせるような関わり方を意識すると良いでしょう。
ファシリテーターってどんな人?私はどんなファシリテーターになりたい?
 今日行ったいくつかのあそびの中で、「ファシリ―テーター的」だなと感じる行動や言動を「目」、「耳」、「気持ち」の3つの視点から考え、書き出しました。

【目】どう見えているか。こういう行動をする人?
 笑顔。同じ目線。みんなの反応を見る。
【耳】声、言葉、こんな言い方をする人?
 他人の声を聞く。「○○はどう?」という問いかけをする。相手を気遣う言葉。共感する言葉。
【気持ち】こんな気持ちになる。こんな気持ちで接する人?
 一緒に楽しむ。一人一人のペースを大切にする。自分のままでその場に係わる。

 ファシリ―テーションを深く学んでいくと、きっとここで書かれたようなことが出てくると思います。もちろんこれ以上に出てくるものもあると思います。ファシリテーションの定義だけではなく、ここに書かれたようなことを大切にしていけたら良いと思います。
酪農教育ファームファシリテーターへの道
Keep(維持したいこと)私のつよみ、得意なこと
Problem(改善したいこと)私の苦手なこと、もっとこうなりたいという願い
Try(これから取り組みたいこと)

 今日のワークショップを通して感じたことなどを振り返り、自分はどんなファシリテーターになりたいかを考え、発表しました。

●伝えたり、発信したりすることは得意な方で熱意もこもります。でもそれが強すぎて、相手のことを引き出すことは得意ではないと感じました。これから活動するにあたって聴くことももう少し上手に出来るようになりたいです。
●ファシリテーターにはそれぞれ形があると思いました。私の強みは何だろうと考えました。前に出るのはまだ難しいけれど、例えば、全体をみてグループの輪から離れてしまった子に声を掛け、寄り添えるようなファシリテーターを目指したいです。
●人前に出で説明するのが苦手で未だに慣れません。接客でも気を遣いすぎてしまいます。もっと話を広げたり振ったりした方が良いと分かっているけれど、中々できず悩んでいました。これから色々な牧場や場所へ行く機会が増えるので、勇気を出して相手の間合いに歩み寄っていきたいです。
ファシリテーターとは種をまく人
 「牧場に行く」、「牛と触れ合う」というのは非日常的な体験だと思います。非日常的な世界での体験は刺激的で、人の感情が揺れ動き、行動が溢れます。そんな体験が持つ力はすごいと思いますし、私は体験の力を信じています。さらに体験者、参加者自身の学ぶ力を信じています。非日常の体験を通じて、絶対に何かを感じ取ってくれるはずです。この2つが揺るがなければ良いと思います。
 体験で感じたものが、その人のこれからの生活に変化をもたらすかもしれません。体験は未来の何かに繋がっているのだと思っています。ファシリテーターは今咲くのか、何年後かに咲くのかわからない、はたまた咲かないかもしれない花の種まきをしているのだと思います。みなさんのファシリテーターとしての今後の活躍を楽しみにしています。

プロジェクトアドベンチャージャパン 非常勤講師
藤樫 亮二氏


1980年東京都町田市生まれ。
遊びのような学びの場で、個人の気づきが生まれ、コミュニティが居心地良くなる支援をすることに喜びを覚える。

ニューハンプシャー州の Plymouth State Universityにて、アドベンチャー教育を専門に学び、玉川大学の心の教育実践センターにて、6年間アドベンチャー教育プログラムの実践、研究、開発に取り組む。
現在は松戸市にある学校法人藤樫学園矢切幼稚園にて、子どもたちの運動あそびの指導をする傍ら、フリーランスのファシリテーターとして学校関係を中心に子どもから大人まで、体験学習ベースに、人間関係づくり、コミュニケーション、リーダーシップの育成などに携わる。
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