2019年度 認証研修会(札幌会場)
ー酪農教育ファーム活動における安全・衛生の基準ー(抜粋)
酪農教育ファーム活動における安全・衛生の基準
村田 亮氏
酪農学園大学 獣医学群講師


安全について
危険区域の事前確認
 普段牧場で生活している皆さんは、危ない所を自然に避けることができますが、初めて訪れる方は避けることができません。外部の人にとって危険か、そうでないかを事前に確認し、「危険エリア」と「見学可能エリア」を明確に表示・区分してください。表示は難しい漢字を使わず、誰でも読めるものにしてください。
アレルギー体質の子どもへの配慮
 アレルギーの有無については事前に必ず確認しておいてください。牛舎では今で接したことがないアレルゲン(寝藁、牛舎の粉塵、ウシのフケなど)があります。元々何らかしらのアレルギーを持っていると、体質もあるかと思いますが、アレルギー症状を引き起こす場合がありますので気を付けてください。
 万が一「ひきつけ」を起こした場合は、安静にさせて衣服をゆるめ、5分経っても治まらない場合は救急車を呼んでください。発熱を伴う場合は、医師の診察を受けるように勧めてください。
衛生について
感染症の基本対策
●入れない(出入り口の消毒や靴底を洗うなど)
●拡げない(動線の確保、踏み込み消毒槽の設置など)
●持ち出さない(牛舎を渡り歩かないなど)

ウシに感染して問題となる伝染病
 口蹄疫、BVD、RSなどウイルス性呼吸器病、ロタ、コロナなどウイルス性下痢症、サルモネラ症などがあります。
 中でも特に口蹄疫は重要です。日本は口蹄疫の非清浄国に囲まれています。いつ・どこから・どんなタイミングで口蹄疫が入ってきてもおかしくないという意識は常に持ってください。ウイルスは目に見えませんので、ウイルスをくっつけた人が農場へ入ってくる可能性がある、目の前にウイルスがいると思って、農場管理を行ってください。
感染症について
感染症の成立要因
1.感染源(微生物そのもの、微生物を持つ動物など)
2.伝播経路(感染源と感受性宿主をつなぐもの)
3.感受性宿主(微生物が体内に入ると病気を起こしてしまう動物、人間など)
 感染症が起こるには3つの要因があり、このどれか1つでも欠けると感染症は起こりません。予防衛生を心がけるときには、この3つがどうかかわっているのかに意識を置くことで、より簡単に感染症の発生が予防できると思います。

伝播経路の遮断
 感染源を全て排除することは困難です。農場でまず皆さんができることは、伝播経路の遮断だと思います。
 感染源を全て排除することは困難です。農場でまず皆さんができることは、伝播経路の遮断だと思います。
まず、他の農場との接触を遮断してください。農家の方は分かっていると思いますが、一般の方は複数の観光牧場を渡り歩いていることもあります。複数の農場を渡り歩くことは牧場にとって危険だということを、事前に通達するようにしてください。また、牛舎周辺へ消石灰を散布し、関係者以外の立ち入りを禁止しましょう。流行国からの帰国者に関しては、飛び入りの体験希望は必ず断ってください。
 口蹄疫の消毒には4%炭酸ナトリウム液(別名4%炭酸ソーダ液)や消石灰が効果的です。身近で簡単な消毒といえばアルコール消毒だと思いますが、口蹄疫にはアルコール消毒薬は効きませんので注意してください。
 踏み込み消毒槽を使用する場合は、消毒剤を頻繁に交換すること。また、消毒剤は紫外線に弱く、寒い地域では消毒剤の表面が凍結することもあります。防止策としてバスマットのような穴が開いていて水に浮くものを中蓋として入れておくと良いと思います。
人に感染して問題となる伝染病
 人に感染して問題となる伝染病には、カンピロバクター症、クリプトスポリジウム、サルモネラ症、腸出血性大腸菌症などがあります。これらは動物には害がありません。来場者には動物たちが菌を持っている可能性があるということを伝えることと、洗い流して帰ってもらうための設備の充実が重要です。

手洗い施設
●来場者が動物エリアから退出する時に必ず手洗いが実行できるような場所に設置
●来場者数に十分対応できるだけの数を設置。十分な水量を確保
●手洗いは流水で行い、貯留水は使用しない
●小児やハンディキャップを有する来訪者でも使用しやすいよう設計
●石鹸(できれば液状石鹸)を常備
●ペーパータオルを常備することが望ましい
●特に冬期には、温水を供給できることが望ましい
●給水栓は、自動あるいは足で操作できることが望ましい
●給水栓の操作をするときは、手を拭ったペーパータオルを用いる
●消毒薬は、必ず手洗い・除水の後に使用
生乳の取り扱い
手作り体験時の注意点
●搾った生乳をその場で参加者に飲ませてはいけない
●手作り体験の原料は市販の牛乳を用いる
●屋内・日陰で作業する
●手指の洗浄・消毒
●容器は加熱(殺菌)可能なものを用いる
●作った乳製品は絶対に持ち帰らせない
 不特定多数への譲渡には許可が必要(食品衛生法・乳等省令)
こんな時どうする?安全衛生チェック!
体験前後にきちんとアルコール消毒をすれば、手洗いは省いても良いですか?
 アルコール消毒前にきちんと手洗いをしていないと消毒の意味がありません。必ず手洗いをして乾燥させてからアルコール消毒をするようにしてください。
冬場は寒いので消毒薬はお湯で溶かしても良いですか?
 消毒薬はあまりにも温度が低いと効きません。ぬるま湯位で溶かす分には問題ないと思いますが、次亜塩素酸系などの一部の消毒薬は高い温度で溶かすと消毒効果が薄くなるものもありますので、注意をしてください。
すぐにでも踏み込み消毒槽を消石灰に変えた方が良いでしょうか?
 地域で感染症が流行していなければ、いつも使っているもので問題ありません。感染症が流行り出したら、地域の家畜保健所などと相談し、段階的に消毒効果の高いものに変えていけば良いと思います。
質疑応答
Q.1
牛が見学者(衣服など)を舐めてしまうことがあります。消毒などどう対応したら良いでしょうか。
村田
手指など皮膚なら後で洗い流してもらい、洋服の場合は消毒剤をしみこませた布で拭くとよいと思います。

Q.2
次亜塩素酸水は使うと水に戻るので衣類を傷めないで消毒できると聞き、牧場内に入る前の消毒トンネルで噴霧して使っていますが、消毒効果は十分にありますか。
村田
噴霧して使うものは、微生物を殺す瞬間の1回だけ効くように消毒効果が設定されていて、その後は消毒効果が切れて水に戻ります。ただ、もともと濃度が低いということは念頭に置いて、期限が切れたものや、日当たりが良いところに置いてあったものは、消毒効果が切れてしまっている可能性があるので使わないようにすることが大事です。

Q.3
講義の中で口蹄疫ウイルスは風で飛ぶという説明がありましたが、黄砂で飛んでくることはありませんか?
村田
もし黄砂に乗って飛んでくるのであれば、すでに日本で口蹄疫が発生しているはずです。今の所は心配しないで良いかと思います。

Q.4
団体のお客さんが来場される場合、乗って来たバスの中でブーツカバーを履いてもらった方が良いのでしょうか。降りてからの方が良いでしょうか。
村田
バスの中でブーツカバーを履いてしまうと、バスの中にいる菌を牧場内に持ち込む可能性があります。またバスを降りるときに、滑って怪我をする可能性もあります。そのためブーツカバーはバスを降り「衛生管理区域」に入る直前に履いてもらうようにしましょう。そしてブーツカバーを脱ぐタイミングにも注意が必要です。「衛生管理区域」を出た直後に脱いでもらうようにし、菌を持ち出ささないようにしましょう。

酪農学園大学 獣医学群講師 村田 亮氏

生産動物も伴侶動物も、人間が生きていくためには欠かせない大切な存在である。そんな身近な動物たちが感染し、病気の原因要因となる細菌について、予防や治療に役立つ基礎的な情報を収集。
畜産物やペット(=家族)が安心で安全に暮らし、快適に生活を送れることを目指して、細菌病の研究を進める。
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