令和2年度 酪農教育ファーム認証研修会(1回目)ー酪農教育ファーム活動における安全・衛生の基準ー(抜粋)
酪農教育ファーム活動における安全・衛生の基準

村田 亮氏
酪農学園大学 獣医学群講師


安全について
危険区域の事前確認
 普段牧場で生活している皆さんは、危ない所を自然に避けることができますが、初めて訪れる方は避けることができません。
 外部の人にとって危険か、そうでないかを事前に見学ルートを歩いて確認し、「危険エリア」と「見学可能エリア」を明確に表示・区分してください。立入禁止区域にビニールひもを張って、通れなくする等物理的に入れなくすると分かりやすいと思います。また表示は誰でも読める分かりやすいものが良いと思います。

アレルギー体質の子どもへの配慮
 アレルギーの有無については事前に必ず確認しておいてください。牛舎では今まで接したことがないアレルゲン(寝藁、牛舎の粉塵、ウシのフケなど)があるので、アレルギーを引き起こすかもしれない体質かどうかも含め確認しておいた方が良いかと思います。
 万が一「ひきつけ」を起こした場合は、衣服をゆるめ安静にさせて、5分経っても治まらない場合は救急車を呼んでください。発熱を伴う場合は、症状が治まっても医師の診察を受けるように勧めてください。
衛生について
感染症の基本対策
●入れない(出入り口の消毒や靴底を洗うなど)
●拡げない(動線の確保、踏み込み消毒槽の設置など)
●持ち出さない(牛舎を渡り歩かないなど)

ウシに感染して問題となる伝染病
●口蹄疫
●BVD、RSなどウイルス性呼吸器病
●ロタ、コロナなどウイルス性下痢症
●サルモネラ症
●黄色ブドウ球菌
●ヨーネ病

感染症の成立要因
1.感染源(微生物そのもの、微生物を持つ動物など)
2.伝播経路(感染源と感受性宿主をつなぐもの)
3.感受性宿主(微生物が体内に入ると病気を起こしてしまう動物、人間など)
 感染症が起こるには3つの要因があり、このどれかをなくせば感染症を予防することができます。

伝播経路の遮断
 他の農場との接触を遮断してください。複数の農場の往来を禁止、牛舎環境周辺へ消石灰散布、関係者以外の立ち入り、流行国からの帰国者の立ち入りや飛び込みの体験の禁止など。
 感染経路の主体は「ヒト」です。人間の移動の管理や事前の周知などが、皆さんの出来る最も効率的な感染症を防ぐ方法になると思います。
 口蹄疫の消毒についてですが、消毒剤はpH3、もしくはアルカリに偏らせると効果的です。特に近隣で口蹄疫の発生があった場合、消石灰の使用が有効だと言われています。日常的に使用すると結晶化しやすかったり、農場の排水が悪くなったりしますので、年中使用した方が良いとは言えませんが、口蹄疫のリスクがある場合には消石灰の使用をおすすめします。
 また、口蹄疫ウイルスにはアルコール消毒は効きません。身近で万能薬のように思われていますが、口蹄疫にはpHを傾けることができる消石灰や炭酸ナトリウム液が有効です。
 消石灰を用いた踏み込み消毒槽を使用する場合は、消毒剤を頻繁に交換すること。また、消毒剤は紫外線に弱く、寒い地域では消毒剤の表面が凍結することもあります。防止策としてバスマットのような穴が開いていて液体の上に浮くようなものを中蓋として入れておくと良いと思います。
 また、次亜塩素酸ナトリウムやヨード剤などハロゲン系と言われている消毒剤は温度が高いと揮発し、殺菌効果が落ちますので注意してください。

Covid-19について
 現段階で酪農教育ファーム活動の中で、家畜やペットからヒトへ感染する可能性は低いと考えていますが、密にならないように気を付け、事前の注意喚起やこまめな手洗い、消毒などを心掛けるようにしてください。

人に感染して問題となる伝染病
 人に感染して問題となる伝染病には、カンピロバクター症、クリプトスポリジウム、サルモネラ症、腸出血性大腸菌症などがあります。これらは動物にはあまり害はありませんが、人間が感染すると強い症状が出るものもあります。牧場に行って具合が悪くなったなど、マイナスイメージが出回る場合もありますので、注意が必要です。病原体は手洗いや消毒で十分に防ぐことができるものばかりなので、病原体を持ち出さないように注意してください。

手洗い施設
●来場者が動物エリアから退出する時に必ず手洗いが実行できるような場所に設置
●来場者数に十分対応できるだけの数を設置。十分な水量を確保
●手洗いは流水で行い、貯留水は使用しない
●小児やハンディキャップを有する来訪者でも使用しやすいよう設計
●石鹸(できれば液状石鹸)を常備
●ペーパータオルを常備することが望ましい
●特に冬期には、温水を供給できることが望ましい
●給水栓は、自動あるいは足で操作できることが望ましい
●給水栓の操作をするときは、手を拭ったペーパータオルを用いる
●消毒薬は、必ず手洗い・除水の後に使用
生乳の取り扱い
手作り体験時の注意点
搾った生乳をその場で参加者に飲ませることは避けましょう。
●手作り体験の原料は市販の牛乳を用いる
●屋内・日陰で作業する
●手指の洗浄・消毒
●容器は加熱(殺菌)可能なものを用いる
●作った乳製品は絶対に持ち帰らせない
 不特定多数への譲渡には許可が必要(食品衛生法・乳等省令)
こんな時どうする?安全衛生チェック!
Q1体験前後にきちんとアルコール消毒をすれば、手洗いは省いても良いですか?
 アルコールなどの消毒剤に汚れ(有機物)が混入すると、消毒効果が大きく低下します。手洗いをし、しっかりと乾燥させてからアルコール消毒をするようにしてください
Q2小学校から子供たちが見学に来ました。先生がきちんと見ているので、学校に戻ってから手洗いをしても良いですか?
 帰りの移動で色々なところを触りますし、手に付着していたものが口に触れることも十分にありえます。必ずその場で手を洗わせ、ファシリテーターの方がしっかりと見届けるようにしてください。
Q3冬場は寒いので消毒薬はお湯で溶かしても良いですか?
 次亜塩素酸系などの一部の消毒薬は高い温度で溶かすと消毒効果が薄くなるものもありますので、注意をしてください。
Q4すぐにでも踏み込み消毒槽を消石灰に変えた方が良いでしょうか?
 消石灰にも長所短所があります。地域で感染症が流行している状況であれば使用すると効果的かと思います。

酪農学園大学 獣医学群講師 村田 亮氏

生産動物も伴侶動物も、人間が生きていくためには欠かせない大切な存在である。そんな身近な動物たちが感染し、病気の原因要因となる細菌について、予防や治療に役立つ基礎的な情報を収集。
畜産物やペット(=家族)が安心で安全に暮らし、快適に生活を送れることを目指して、細菌病の研究を進める。

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