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平成27年度 酪農教育ファーム認証研修会(北海道・福岡会場)
−開会のあいさつ・プレゼンテーション−
平成27年度 酪農教育認証研修会(北海道会場)が行われました。
開会のあいさつ
(一社)中央酪農会議 業務部 草間 真平 

 現在、皆さんの努力により北海道の生乳生産は前年より2%を上回っており好調です。都府県も落ち込みを圧縮し、総数はプラスで推移しています。
 一方では、生乳は様々な乳製品に加工されて消費者の元に届くわけですが、その中で政府、国民を含め話題になっている、一昨年からのバター不足は引き続き続いています。
 酪農は現在どのような状況に置かれているのか等を消費者の方、国民の皆様に丁寧に説明し、理解を求めていく事も、これから酪農家が生き残っていく上で、非常に重要だと考えております。
 そのような状況の中、酪農教育ファームファシリテーターの認証を自ら取得しようと本日集まって頂いた皆様は、まさに第一線でその事に取り組まれる事となります。よって、これからの活動をますます充実したものにする為、この研修が今後の活動について考える一助になればと考えています。酪農が厳しい状況にも関わらず、生産だけでなく消費者の皆様とのふれあい活動をされていく中で、様々な悩み、負担も出てくると思いますが、そんな時は、我々中央酪農会議や、本日集まった同じ志を持つ仲間の皆さんと相談しながら、1人では無く、みんなで協力しながらやっていく活動なのだという事を念頭に置き、2日間の研修を受けて頂きたいと思います。どうぞよろしくお願い致します。


プレゼンテーション
酪農教育ファームアドバイザー
(有)オフィス ラ・ポート 代表 松原 明子


 私が酪農教育ファームに出会ったのは1998年、酪農教育ファーム推進委員会が立ちあがった年でした。もう20年経ちますがこの年は1991年にバブルが崩壊し、高度成長、経済成長が終焉を迎え、成熟へと移り変わっていった時代でした。
何故、酪農だけが教育ファームを続けられているのか?
 一方、農業に目を移すと、国は戦後の食糧不足から脱するために食糧増産を奨励し、国が穀物や牛乳など農産物の価格を決めていました。その後、徐々に農家の方々の努力もあり農作物、食糧が安定的に国民に供給されるようになります。そうすると、今度は農作物の過剰生産を調整するために、市場、マーケットが価格を決めようという動きに変わりました。これは、収穫等により農家の所得が安定しない場合が出てくるという事です。そのような中、主に酪農にはマーケットに評価されていない価値があるのではないか、その部分に国が補助金を出していこうという政策が動き始めました。マーケットに評価されない価値というのは環境の維持であり、農村の保健休養機能と呼ばれるものでした。

 農村の保健休養機能を「教育的視点」で活用しようと始まったのが酪農教育ファームです。その後、2000年に認証制度が創設され、初めてその年に認証研修会が開かれ116の牧場が認証されました。その後は、口蹄疫や震災、飼料の高騰や後継者不足等でやむを得ず廃業する酪農家も増えている状況ですが、現在認証牧場は300前後で推移し、社会的な評価も年々高まっています。実は、酪農以外の農業も教育ファームに乗り出そうとしていた時期がありましたが、根付きませんでした。何故、酪農だけがこの活動が続けられているかを、2日間の研修を通して皆さんと考えたいと思います。個々の酪農家が努力されたというのもありますし、組織が頑張ったというのも、もちろんあります。しかし、私はそれ以上に、時代の必然性があったのではないかと考えています。

 時代や社会の期待に「答えるべき要素」、それが酪農にあるのではないかという事です。では「答えるべき要素」とは何なのか、私はまず1つは、新しい時代を作り出そうとする考え方を持った、センスある人材が酪農家には多いと感じています。その背景に、皆さんは物を言わない大型哺乳動物である乳牛を飼育されていて、相手の立場、乳牛の立場に立って関係性を作っていると思うのです。相手の立場に立って考える事、教育の立場では「他者意識」と言われていますが、実はこの力が今の子ども達に求められています。もう1つ、乳牛との関係性で、酪農家は常に一歩先を察知する「感じる力」が求められる仕事ではないかと思います。これはいつもと違う乳牛の体調の変化を瞬間に感じ取り、健康に牛を飼育する酪農家さんの生命線であるのではないかと感じています。「他者意識・感じる力」この2つが、新しい時代を切り拓く大きな鍵になるのではと思います。新鮮な洞察力は感じる事から始まります。感じたことは、他の方と共有し共感する、共感するとは他のの意見や考えを否定、排除するのではなく、そういう考え方もあると受け入れる、まさしく他者意識の観点だと思います。感じ、共感し、他と分かち合うことで生まれる化学反応、そこに生まれるのが、少し大げさですが、私は地球的、宇宙的な広い視野で物事を考える新しい時代、新しい社会の表れではないだろうかと感じています。

 私の好きな言葉で「知ることは感じることの半分も重要ではない」という言葉があります。これは、世界的に著名な海洋学者で1960年代にすでに自然破壊を警告していたレチェル・カールソンが「センス・オブ・ワンダー」という著書の中で残した言葉です。感じる事は、酪農の中に沢山存在します。まずは、これから未来を築いていく子ども達に牧場でいっぱい「感じさせて」あげてください。その子ども達が、自信を持って生きていく為に。そして、その子ども達が、将来賢い消費者になって酪農家の応援団になってくれる事を、私は信じてやみません。
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