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平成26年度 酪農教育ファーム認証研修会(北海道会場)
―ワークショップ「酪農教育ファームファシリテーターの役割―
平成26年度 酪農教育ファーム認証研修会(北海道)が行われました。
NPO 法人ねおす 理事 荒井 一洋
人間は快いことなら持続していける
 私たちのミッションは持続可能な社会を作ることです。人間は、快いと感じれば持続出来ます。不快な事は持続不可能です。学びでもなんでも、普段の生活でも「快」体験を大切にしたいと考えています。教育でも何でも快い場でなくてはなりません。
 その手法のひとつとしてのファシリテーション(促進する)。その人の快い体験を促進することで学びが出来たら一番効率が良いのではと考えます。
 今日はその練習をしてみようと思います。
 同じ「やる」でも「やらされている事」と「これはやらずにはいられない事」の違いです。それをどのようにやれば体験者が主体的に、能動的に動けるかを考えようと思います。
 一生懸命考え、スケジュールをしっかり立てても、人がやるように促す役割は難しく、成功率は低いです。重要性や感覚、学び方を学ぶという部分を共有し、それぞれ皆さんのフィールドや得意技で、実践していく事が出来ればと考えています。
「自分は何?」情報を集める能力を知る
 皆さんで円になり、カードを渡します。そのカードは人に見せないでください。そのカードを前の人の衿に留めてください。そして二人組になりお互いに「はい」か「いいえ」で答えられる質問をしてください。相手を変えながらいくつも質問をして、自分のカードが何かを当ててください。

 最初に何を質問したらいいのか考えたと思いますが、まず知りたいのは、動物の分類です。勘のいい人は、まず動物の分類から質問します。情報を集める為の質問をどう出すか。このやり取りの中で、情報を集める能力が高まります。
 ファシリテーターとしては、この人にはこういう課題を与えて考えて貰おうというような、参加者それぞれ、全員がちょうどいい課題を与えられて動いている状況を作れるといいでしょう。
3つの立場を使い分けよう
 皆さんが人前に立って何かをする時には3つの立場を使い分けます。
1、指導するインストラクター
2、解説するインタープリター
3、促進するファシリテーター

 自分が今どの立場なのかを自覚して行動しましょう。
インストラクターの時は、短くシンプルに情報を出すことに集中しましょう。様々なインストラクションの方法があると思いますが、言葉を磨いて、どの順番で話したらわかりやすいかを研究して文章化し、伝えるのがインストラクターです。
 インタープリターは工夫が必要で、例えばひとつの咲いている花を説明する時に、なぜそこにこの花が咲いているのかを、土壌、気候、進化の過程などから、この環境だから咲いているという解説をするのがインタープリターです。
 ファシリテーターは考えさせる事。何故良い悪いと思ったか、自分で解釈を考えさせます。そういうマインドに持っていくことが重要です。
対象者を理解するために、情報を出来るだけ集めよう
 ファシリテーターを目指す為の、ステップを踏んでいきましょう。
 まず、自分は誰に対してメッセージを発信しているのかを考えます。
 今回は対象者を小学校高学年に仮定しました。
  小学校の高学年は生物学的に見て、100%が成人の完成状態だとすると、生殖器は15%、臓器は50%、神経はすでに成人並みに発達しています。リンパ(ホルモン)は成人の約2倍出ており、これはその後の発達の為ですが、そういう生き物に、じっとしていろと言っても無理です。ホルモンが沢山出ている状態の彼らを押さえつけると、「不快」になります。そこを理解してあげる事が、とても大切です。そして、私たちが彼らにとって信じられる大人になってあげないといけません。そうでないと、コミュニケーションは成り立ちません。
 器用さは成人並みに発達しているので乳搾りや作業、優しく撫でるというような力加減も出来ます。これが幼稚園児だと、強く握ってしまったりしてまだ出来ません。
対象者に合わせたアプローチ
 更に対象者の現在の環境を考えます。学校に行っていて、教員と親がいるというのが、一番近い生活環境なので先生、学校の意図にあった内容でなければなりません。保護者がどんな想いで体験学習に預けたのかも想像することが大切です。 こういった事を踏まえて、喋る言葉を作っていきます。
やらずにはいられない!言葉を考えよう。
 搾乳の掴みの部分の言葉を考えてみましょう。
 ポイントは「体験をやらずにはいられなくなるようなアクティビティー化」「どうしても興味を持ってしまう」ようなキーワードを入れることです。
 自分で基準を作らないと、言葉を考えるのは大変です。ファシリテーターは、自分で基準を作るしかありません。その基準に体験者が合わなかったとしたら、それはしょうがないですが、それで開き直らず、出来るだけ情報を仕入れるようにします。
 活動前に沢山喋っても体験者は忘れてしまいますから、言葉は簡潔に、分かりやすく、シンプルにしましょう。
ファシリテーターに必要なのは、度胸!
 体験の流れを仮定して、シナリオを作ってみます。やりながらうまくいっているのかチェックし、だめだったら改善して、やり方を変えてやってみるという事をひたすら回していく。そして、自分の理想とするファシリテーターに近づくことです。この回すスピードは15分おき位のイメージです。1つの活動の中でも、細かく回していくのです。参加者の行動や言動は、自分の想定を超える事が多々あるので、参加者に会ってから決めるというのもありです。
 ファシリテーターに必要なのは度胸です。間違ったり、予想と違う事が起きても無理に取り繕わず、子どもたちにどうするか問いかけて、一緒に考える、その方が信頼関係が築けます。そうなったらしめたものです。それをきっかけに一体感が生まれ、信じられる大人になるのです。
 色々とマニュアルを説明しましたが、うちの牛の素晴らしさを紹介したい、子ども達にこれからもずっと美味しい牛乳を飲んでもらいたいという事を真剣に考えていれば、自然と仲良くなれます。ちゃんと伝わります。酪農家は普段牛に対してそれをやっているはずなので、そういう関係性をお客さんと一緒に作るイメージです。
 感情と、マニュアルを常に意識して、困った時はどういう手順でやるのかマニュアルをチェックする、実際にやる時は感情を出してやってみる。うまくいけばOKで、ダメだったらマニュアルをチェックするというような使い方をして頂ければ良いなと思います。
NPO 法人ねおす 理事 荒井 一洋
北見生まれ、札幌市西区宮の沢育ち。
 札幌手稲高校からニュージーランドの高校に転入し、ニュージーランドの大学を卒業する。大学では、国立公園管理・自然保護を専攻する。その後、管理という受身の自然保護活動では、根本的な問題解決につながらないと思いはじめ、環境教育や自然体験学習に興味を持つ。
 現在は、大雪山の主峰、旭岳の麓町、東川町にて大雪山自然学校を運営し、インタープロテーションやエコツアー、子どもの自然体験活動と旭岳パークレンジャーとしての国立公園管理活動を行っている。大雪山の持続可能な保全と利用を目指して、楽しく暮らしていくことを望んでいる。
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