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平成26年度 酪農教育ファーム認証研修会(北海道会場)
―安全・衛生について―
平成26年度 酪農教育ファーム認証研修会(北海道)が行われました。
酪農教育ファーム認証牧場における安全・衛生の基準
帯広畜産大学 畜産フィールド科学センター家畜防疫研究室長
教授 木田 克弥
安全対策について
 私の大学でも一般の親子、市民を招いた酪農体験を実施しており、年間で2 万人以上の人が牛舎を出入りしています。家畜防疫ということでも、とても高いリスクを抱えています。
 病原体を持ち込まない、農場内に拡散させない、農場から持ち帰らせないという、バイオセキュリティ3 原則をいかに徹底させるかというのは、酪農教育ファームでも重要です。
 酪農体験で、外部から一般の人を受け入れる際に想定される危害ですが、まずは牛の健康に及ぼす病原体の持ち込みがあります。一般の方、子ども達に体験をさせる中で牛にけがをさせてしまうリスクもある、又その逆も然りです。
 アレルギーや、飲食による食中毒のリスクもあります。場内の器具を使わせることによっての怪我等、想定外の事が起こりえます。
 直接的な危害ではないですが、重要な「イメージ」もあります。徹底して汚い部分を排除するのか、実際の牛は汚れていて当たり前だという事を見せるのか難しい部分です。大学ではいい印象を持って帰って貰う事を常に念頭に置いています。
酪農体験受け入れに伴い、想定される危害
●牛の健康
・外部からの病原体の持ち込み
・不適切な器具取扱いによる怪我
●人の健康
・ 牛と環境からの感染やアレルギー、食中毒
・ 不適切な保安管理による外傷
●悪いイメージ
・悪臭、汚物、衛生害虫
牧場内の「ヒヤリハット」を探す。
 万全な体制を持ってしても事故は起こるという事を考えておかなくてはいけません。重要なのは、実際に事故が起きた時どう対応するかです。想定外だった、では済みません。事故によってはその酪農家だけでなく、酪農業界全体の問題になり兼ねません。
 場内で作業していると「ヒヤリとした」「ハッとした」体験が必ずあります。スタッフ同士で「ヒヤリハット」した場所、体験をピックアップしておくことが大切です。
何故防疫が必要なのか?
1.家畜の健康を守る
2.食の安全性を確保する
3.日本の経済を守る

 日本は2013 年にBSE のリスクはない、2011 年口蹄疫に関してウイルスは存在しないという認定を貰いました。その結果、日本の畜産物を海外展開しようという動きがあり、BSE、口蹄疫の影響を受けながらも牛肉の輸出額が増えています。
 しかし海外からの入国者数も過去最高を記録し、リスクが高まっているのも事実です。海外からの体験者に対して、是非体験して貰いたいという酪農家の気持ちもわかりますが、この気持ちが日本の経済に大ダメージを与えるかもしれないと、頭に入れておかなくてはなりません。
家畜の衛生対策
 農場での防疫の勘所は、とにかく遮断、侵入を防ぐ事です。まずやるべきことは、ゾーニングです。極力出入口を制限して衛生管理区域に立ち入るルートには必ず消毒ポイントを設置する。更に、柵など必ず物理的に遮断することが重要です。どうしても封鎖できない通路、道路についてはポスター、看板を立てます。
 牛舎の中は様々な生育ステージの牛がいて、それぞれが色々な病気のリスクを持っています。様々な体験、作業をさせる場合には基本的に一方通行の考え方をしてください。 哺育牛、新生子牛、育成牛は感染症にかかりやすいので親牛の世話をしてから子牛の作業をするのは極力避けましょう。
具体的な感染防止方策
最も有効な手段は手洗いの励行
1.手洗い場を適切に配置
2.家畜管理領域と居住領域を物理的に区画し,人の動線を制御
3.居住領域でも補助犬以外の動物の持ち込みは禁止
4.家畜管理領域入り口にはサニタリーエントランスを設置
5.エントランスには、スノコを置き、内と外を明確に区分
6.衛生管理区域出口に,来場者数に見合った手洗い施設を設置
来場者への啓発
1.動物から感染する病気がある
2.キスなどの過剰な触れあいをしない
3.手洗いを励行
4.効果的な手洗い法
5.衛生管理区域での喫煙、飲食物,おしゃぶり,ぬいぐるみ,おもちゃ等の持ち込み禁止
6.小児に指しゃぶりをさせない
7.糞便に触れない
8.幼児には必ず監督者が伴う
9.動物に触れる際は爪を短く切る
10.注意事項を入場口に提示、オリエンテーションで説明
11.退場時の手洗い,手洗い所への誘導標識
12.注意事項周知のためのスタッフ配置

 どこまで来場者に動物と触れ合わせ、その為にどうやって双方の安全衛生を確保するかは難しいです。来場者は家の犬猫と同じような感覚で動物に触れ合おうとします。私の大学では不特定多数の受け入れの場合は必ず一定の距離を取らせます。
 深く関わらせるなら、リスクをしっかり伝え、十分な理解の上で体験してもらいましょう。
帯広畜産大学 畜産フィールド科学センター家畜防疫研究室長
教授 木田 克弥

 1955年北海道滝上町生まれ。
 1980年帯広畜産大学大学院畜産学研究科修士課程(獣医学専攻)修了。同年北海道の滝上町農業共済組合(現オホーツクNOSAI)滝上家畜診療所へ就職し産業動物臨床現場に7年、北海道農業共済組合連合会家畜臨床講習所で獣医師の卒業教育に18年。この間に、乳牛の代謝プロファイルテストの技術開発・普及に従事。
 2005年帯広畜産大学畜産フィールド科学センター准教授となり、現在同家畜防疫研究室室長、教授となる。
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