スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



ワークショップ「酪農教育ファームファシリテーターの役割」
(認証研修会:大阪)
 本日の講習で、ファシリテーターとはどんな感じの動きをするかを共有できたらと思っています。言葉やレジュメを使って説明するより、私が普段どんな感じで行っているかを体験いただいて、自分の牧場で応用出来るものが一つでもあれば、ご活用いただければと思います。

実践!牛の絵を描いてみましょう!
絵の上手い下手は問いません。また、描いた牛にセリフを付けてみましょう。皆さんの牧場に子どもたちが来たとして、牛から子どもたちに、もしメッセージがあるとしたらなんだろうということを想像してみてください。
 牛が何を思っているか、私たちには分かりませんが、きっとこんなことを思っているのではないかということを、酪農家さんが話すと、子どもたちはそれを信じたりします。
 この絵を描く実践は、動物園のファシリテーターの方が行っている方法です。動物園に入る前に、子どもたちにパンダの絵を描いもらいます。これが結構描けないようです。描いてもらったら、実際パンダを見に行き、爪や足、しっぽなどがどうなっているか自分の絵と何が違うかよ〜く見てもらいます。その後、もう一回描いてもらうと、今度はきちんとパンダのことを把握して描けます。牛のバージョンも有りかなと思ってやってみました。

 皆さんは、酪農体験で子どもたちの前に立つことも多いと思いますが、酪農体験を進めていく、支援をしていく上でのコツとかやり方とか、こういう風にすると子どものウケが良いなど、ノウハウのようなものがあると思います。経験したこと、先輩から教わったことなどについて話し合ってください。知りたいことがあれば、それを既に誰かが知っていたらラッキーです。
【知っていること】
・どうしても伝えたいことを絞り込んで用意してから話をする。
・危ないことや、やめて欲しいことだけは伝え、後は何も言わない。見たままのことや自分で感じたことを持ち帰ってもらう。
・最初に牛の名前(ニックネーム)を呼んで、親しみや興味を持ってもらう。その方が牛を見てくれる。

[子どもたちに「言うスタイル」と「何も言わないスタイル」は何が違う?]
 言ってから触るより、言わないで触る方が興味が湧くように感じます。興味が湧けばそれに対して調べたり、深く考えたりすると思うので、何も言いません。興味を持って質問してくれることには答えます。
 学校などでも基本的には、事前に説明してから実践というのが多いパターンだと思います。説明をせず実践に移ると、その人の感性や感覚で行動します。気持ちに火が付くような瞬間があると、素晴らしいと思います。その人の内側から出てくるものを支援するというのが、ファシリテーションです。ファシリテーターと名乗っていないだけで酪農家の方々は非常にそういう人が多いと思います。

[親子で牧場に来られた時に、親が暇そうにしているのはどうしたらよい?]
 乳牛はメス牛なので、子どもを産むことは母親も一緒だから、「陣痛はどうだった?」など、自分(人)の体験に重ねて話をすると、陣痛自慢など子どもを産んだ時の話をして盛り上がり、親御さんを巻き込んでいけます。哺乳体験の時にも、おっぱいの話になり、自然と「なんで牛乳はできるの?」という流れになります。普通は赤ちゃんを産まないとおっぱいは出ないという話を、お母さんが子どもに説明を始めるパターンもありました。
 牧場主さんたちが話している時間から、体験者が自分の話をすることになる、これが「私たち(体験者)の時間」になるという事です。

[お産の場面を子どもたちに見せたい!]
 以前、読み聞かせに行っていた学校の校長先生が、子どもたちにお産を見せたいと話をしていました。ちょうど、近々お産の牛がいて、いざお産となったので、急いで学校に電話して、見に来てもらいました。足が少し出た位から、子牛が生まれお乳を飲んで立ち上がるまでを皆で見ました。その時、先生が泣いて、「この感動は今しかない」と言って、すぐ子どもたちに絵と作文を書かせました。実際その現場を見ていなければ描けない素晴らしい作品が届いて、私も感動しました。
 [だいたい何分くらいかけて見ていたんですか?]
 本当に産む直前に学校に電話したので一時間ぐらいです。
 知らない人が見ていたら、そわそわして産みにくくなる気がしますが、その中で産む牛もすごいし、子どもたちが産める環境へ持っていったことがすごいと思いました。なかなかその現場を見せること自体難しいと思います。
 牛が座り込んで、もう赤ちゃんが出るという時に呼んだので、本当に直前でした。初めに、「今からいのちが生まれるから、大きな声を出してはダメです。もしかしたら死んでしまうこともあるよ」と伝えました。もしかしたら死ぬこともあるというのも、ひとつのいのちの勉強だと私は思っています。
 「死」に直面した子どもが、どういった影響を受けるのか、心配な面もあると思いますが、「いのち」とはそういうものだということをきちんと伝えることも大事です。
 酪農体験、教育の方法には色々な可能性があると思います。他所でやっている例を参考にして、自分たちのやり方にアレンジしていってもらいたいと思います。
DVD鑑賞
 牧場での酪農体験DVDを観て、「これはうまい!ナイス!見習いたい」という点と、「うーんイマイチ、もっとこうしたら良いかもしれない、自分だったらこうする」という点を書き出し、グループで意見交換、発表してもらいました。

[バター作り体験は、生クリームだけではなく、牛乳を入れた方が良かったと言う意見が出ましたが、どうして牛乳を使った方が良いのですか?]
 牛乳と生クリームを混ぜるところ、水と生クリームを混ぜるところと、別れました。確かに、水と生クリームを混ぜた方がコストが安いのですが、せっかく牧場で行うので牛乳を使った方が良いのではないかと意見が割れました。
 順番として牛に触って、牛にエサをあげ、あげたエサが牛乳になる。それがバター作り体験でバターになる。この順番で行った方が良いと思います。牛乳がバターになるという過程を知ってほしい。

[色々な種類のエサと水もたくさん飲んでるということですが、水はどれくらい飲むんですか?]
 たくさんです。お乳の2〜3倍と言われています。暑いと汗をかくので、気温にもよると思います。実際、測ったことはないですが。

 私の妻は、地球温暖化や環境問題を伝える仕事をしています。
 以前、市販の灯油のポリタンク(18L位)を使って、アメリカ・日本・中国の石油消費量がどれ位違うかを体験する実践をしていました。ポリタンクには水が入っていて、実際持ってみると、「こっちが重い、こっちは軽い」といって、どの国がどれくらい1日にガソリンやエネルギーを使うのか、体感して分かると思います。
 同じように、牛が1日に飲む量と人が1日で飲む量が見てわかる、体感できるものがあっても良いと思います。頭で50kg、100kgと考えるのと、実際に自分で持ってみるのとでは、感じが違います。数字を言われただけでは通過していくような記憶でも、体験をすると少なくとも1か月は覚えているのではないかと思います。それでも忘れてしまうとは思いますが、大事な事を伝え、覚えてもらうために、どんな工夫をするか。重さを伝えることが本当に大事なのかというのも含めて、何を工夫すれば何を覚えてもらえるのかを考えてみる。
 「大事なことは三つ持つ」という話がでましたが、もしその三つがあるとしたら、その三つを絶対に覚えてもらい、子どもたちが家に帰った時に、お父さんお母さんに話したくなるような体験をデザインするために、どんな工夫が必要なのかを考えてみても面白いかもしれません。


青木将幸・青木将幸ファシリテーター事務所 代表

1976年生まれ。1994年より学生環境サークル、エコリーグ、A SEED JAPANなど、オゾン層、森林、地球温暖化、ゴミ問題などをテーマに活動を開始。
その中で「成功&失敗経験の共有」や「市民活動リーダーの育成」の必要性を強く感じ、19歳の頃から人材育成ワークショップを開始。企画会社ワークショップ・ミューで、さまざまな市民参加型企画を経験し、2003年、青木将幸ファシリテーター事務所を設立。「エコでピースな市民社会を作ろう!」をモットーに、会議や研修、教育の場面のファシリテーターの育成と実践を手掛けている。平成21、22年度の酪農教育ファーム認証研修会講師。
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