スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



平成24年度酪農教育ファーム全国実践研究会
ー研究報告ー
酪農体験におけるファシリテーターの
効果的な声かけとは

ー経験豊富な酪農家の実践をもとにー

体験には共通する言葉がけある

酪農体験活動におけるファシリテーターの指導内容としては大きく下記の通りです。

1、全体的な指導:全体の指導
2、体験毎の指導
 (搾乳・えさやり・掃除・ブラッシング・バター作)
 ・技術的な指導
 ・個別的な指導
3、全体的なまとめ指導:全体の指導

体験毎に共通する言葉がけは…
■搾乳でのしぼり方の技能指導・安全管理指導
■体験の流れを説明する・約束ごとを確認する
■牛について説明する
 搾乳体験を例に取ると、まず牛の紹介から入り、搾乳の仕方、安全管理指導、上手に出来たら褒めること。ミルクが温かいという事を共感することです。最初の3つは体験の中で、後の2つは個別の声かけの中で行っています。褒め方も酪農家で違います。いつもは厳しい酪農家さんでも、褒める時はすごく褒めたりといったようにです。

全ての体験に共通する言葉がけは…
■「いただきます」の意味を伝える   ■最初にお手本を見せる
■安全面に配慮する言葉がけ    

具体的には…
・いただきますの意味         ・褒める
・経済動物であるということ      ・最初にお手本を見せる
・安全面に配慮する
・牛の気持ちを伝える

 子どもたちは牛が、経済動物であることを意識していないので大きな影響を与える可能性があります。
また、相手の(牛の)気持ちになって考えること。牛の気持ちを代弁すること。皆も怖いかもしれないけれど、牛さんも怖いんだよ、と牛の気持ちを代弁する事で、牛と子どもたちの距離を縮めることが出来るのではないかと思います。

小学校教諭経験者が読み取る、子どもに影響力のあるファシリテーターの声かけ…
■自分と牛との比較          ■生活との関連づけ   
■自分と牛の同化           ■期待感を高める
■命の大切さ

 例えば、自分と牛との比較では「しっかり自分の音、どくどくしているか聞いて、そのまま聞こえる状態で牛さんと比べてみてください。」牛さんの心臓の鼓動と自分のを比べて同じような音だね、なにが違う?など意識的に取り上げて注目させる。生活との関連づけ・命の大切さという点では、「子牛さんは生まれてから1週間しかお母さんのミルクは飲めません。皆が飲んでいる牛乳になるので…赤ちゃんたち本当は飲みたいんです。みんなに飲んでもらうために分けてくれています。だから今日から残さないで飲んで欲しいと思います。」命の大切さと絡めた声かけもされています。
酪農家さんの特徴的な声かけ・指導
 個別指導場面で見られた、子どもがすごく変化したのは何がきっかけだったのか。
最初一番嫌がっていた子が、帰るときに喜んで帰ったら大きな効果ではないかという事、嫌がっている子どもが何がきっかけで変わるのか?!そこに注目し調査を行いました。
 一斉指導の時ではなく、個別指導の時に徐々に引き込まれていき変化がみられます。では個別指導に特徴的な声かけがあるのではないか。
 ファシリテーターは、個々に思いをもって酪農体験活動を行っています。その思いを出した指導が、個別指導に良く見られます。

<酪農家Kさんの特徴的な指導>
 ・どの場面においても「命」の事を伝えている
 ・全体を良く見て個別に対応している
 ・活動にしっかりけじめをつけさせていること
 時には、教師もびっくりするくらい厳しく怒ります。牧場(自分の仕事場)で絶対守ってもらいたい信念がある。ひとりひとりにけじめをつけてしっかりと行って欲しいという願いが反映された活動が行われている。

<酪農家Yさんの特徴的な指導>
 ・牛の気持ちを自分の気持ちに置き換えさせ、牛を通じて思いやりを考えさせる
 ・牛と子どもを同化させる
 五感を使って体験して欲しいということ、牛と人間を同化させること。牛を通しての思いやり意識を身につけさせる、人間と牛のライフスタイルの共通点と違いを分からせるという根本的な願いが活動に反映されている。

Kさんはルールをきちんとし厳しく指導するスタイル、Yさんは心に訴えながら少しづつ動かしていくスタイルです。しかし、どちらの中にも最終的に嫌がっていた子どもたちが体験を通じ変わっていく様が見られます。

 体験の中で共通した言葉がけは多くありますが、ほとんどは一斉指導の中にあります。個別指導になると、ファシリテーターが酪農教育ファームをどんな思いでやりたいかという部分が出てきて、それを子どもたちにぶつけている。それが嫌がっていた子どもたちに伝わり、変化が見られると思います。
意識した声かけをしていく
 今後は、言葉がけでどれだけ子どもたちに影響があるのか、ベテランファシリテーターの声かけと、その後の子どもたちの行動。また、酪農教育ファームを始めて間もない人たちとの比較をしていけば、もう少し具体的に出てくるかなと思います。
 酪農教育ファーム活動が始まって10年になります。ちょうど10年前に体験をした子どもたちが、10年間でどれだけ酪農体験をやったことで影響を受けたかをみていこうという取り組みを考えています。
 今まで酪農教育ファームは、教育関係・学校の取り組みに注目していましたが、体験活動だけではなくファシリテーターの方々の言葉がすごく重要な意味を持っていると思い調査した結果、やはり意味があるので、皆さんにも意味のある声かけを意識して体験活動を行っていただけると、子どもたちの効果は大きくなると思います。


詳しくは、下記をダウンロードしてご覧下さい。(PDF)−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

■酪農体験における効果的な声かけ
■ダイジェスト版


石井 雅幸氏 大妻女子大学家政学部児童学科 准教授−−−−−−−−−−−−−−−
昭和33年12月4日生まれ
昭和56年から東京都公立小学校教諭、主幹教諭を経て、平成19年4月から現職
研究の概要
 主な研究は、小学校理科の授業をいかに行うのか、その目標、指導法、指導内容、評価についてです。その中でも特に、小学校理科で、一人一人のこどもが科学の考えをどのように身につけていくのかを研究しています。また、小学校教育全般における生命に関する内容や、食育に関する指導法の開発をすすめています。さらに、小学校と教育関連機関とを連携させた教育活動のあり方などを考えています。中でも、酪農教育ファームに関わる教育機関での実践的な指導法や教育効果を研究対象としています。

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