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平成27年度 酪農教育ファーム夏の研究集会−報告2−
酪農と多様な学び
新宿区立淀橋第四小学校教諭 秦 さやか氏


自分にしかできない授業
 私は北海道に生まれ、小さい頃から生き物と直接向き合い、いのちに触れる事で自分自身の生きるエネルギーについて学んでいました。獣医を目指していた学生時代の海外での実体験も含め、この思いを何かの形で誰かに伝えたいと思い小学校の教員になりました。
 「食の実践」の動機となっているのは食といのちというものが生きるという事だと感じ、携わる仕事、関わる人々が見えてくるからだと思います。
食糧自給の問題や一次産業の価値を学べるのが酪農教育、食の教育だと思っています。
 「ある精肉店のはなし」という映画を紹介します。大阪で7代にわたり精肉店を営んでおり、この方の凄いところは、牛を育て、屠畜、解体、販売するまでを全て一家で行っています。この映画の監督は「五感を通して実感するという事でしか、考えたりする事は学べない」と言っていました。私がこのような授業を行いたいと思ったのも、子ども達に実感してほしいからです。だから、子ども達には生の体験をして欲しいという思いがあります。
 もうひとつ教職大学院に3年前通っていた際、菅野静二さんという早稲田大学の先生が「いのちの学習」という事を教えてくださいました。「いただきます」とは何か、自分が何かのために役に立つ事が本当の意味でのいのちの教育だと教えて頂き自分の中の力になっています。
 好奇心を持ちアンテナを張っていると、色々なところで人と繋がっていくと思います。私が今ここで話をしているのも皆様との繋がりの中で成り立っているのだと思っています。
「酪農」は全ての教科に繋がる学びとなる
 実践事例の紹介です。5年生の総合の時間で行いました。5年生が1番この事について扱いやすいと思います。社会科では自給率や国際関係について触れる機会が増え、理科ではいのちの誕生や生態環境問題などを扱います。国語の教科書にも似たような内容が掲載されていて、私は全部の教科を使い1年中いのちや食に関しての教育をしています。
 授業では、食というキーワードをもとにいのちの繋がり、「いただきます」の意味について考えました。学校給食にどんな食材が入っているか子ども達と数えてみました。豚肉でひとつ、人参でひとつというような形でいのちの数を数え、1回の給食で大体16個のいのちがある事がわかりました。それを1日に3食、1週間で21食、というように数え人生80才まで生きるとすると、170万のいのちをいただいている計算になりました。
 自分が生きていくためにそれだけのいのちをいただいている。だから無駄に出来ないし、いのちは人の役に立っている事を教えました。
 食に関わる人について考える項目で、酪農家さんを呼びました。授業後に、実際に酪農家になりたいという子どもが現れました。その時だけかと思ったら卒業の時にまだ酪農家になりたいと言っていました。クラスのなかで手をつけられないような子がこの授業の事だけは覚えていると書いてきてくれた手紙を貰った時は、嬉しかったです。
 酪農は環境問題にも関係しているので、これからの生き方について考える事も学べます。地産地消、輸入輸出問題なども考えられます。食や生きる価値を考える事から、自分にできる事、自分と関わる人との関係に気付く事は凄く大事な学びになります。
 社会科や総合の時間では牛乳や肉の食糧生産、持続の可能性について、理科では牛からいのちや循環、生態について、道徳ではいのちの尊重、生き方、家庭科で食育、食文化、調理して食べる事も学びに繋がります。
 お話した事例は中野の学校での実践ですが、現在の新宿の学校でも実践授業をしています。2学期は酪農と稲作という観点から農家の方にお話しいただく予定です。3学期は里山の生き物や、循環について扱う予定です。
 普通はカリキュラムに沿って授業を行うのですが、「めざす社会像」という目標がなければ授業をする意味がない、と考えています。
 子どもの中にある育てたい力を、学校の先生たちにも考えてほしいのですが、体験や価値観、考えは皆違います。それでも一緒に考えていく事が重要だと考えています。
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