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2000.SPRING Vol.6
去る2月9日、東京・大手町のパレスホテルにおいて、中酪主催のバターに関するプレスセミナーが開かれました。
動物性脂肪であるバターはこれまで、摂りすぎると生活習慣病を招く恐れがあるといわれてきました。そのため「コレステロールやカロリーの高いバターより、油を使うなら植物性脂肪を使ったほうが良い」というのが定説でした。しかし世界各国の研究結果から、長年の常識がくつがえされることとなったのです。今回の発表はバター消費を拡大する起爆剤ともいうべき新発見。会場には、各分野から百名近い報道陣が詰めかけ、脂質栄養学の専門的な報告に熱心に耳を傾けました。
中酪・伊佐地専務理事の開会挨拶に続くセミナーでは、名古屋市立大学薬学部薬学科教授の奥山冶美先生を講師に迎え、スライド上映による詳しい解説がありました。
そもそも日本で、動物性脂肪でなくリノール酸を多く含む植物性脂肪を増やそうという栄養指導が始まったのは、1960年代の中頃のこと。この時は、人や動物を使ったテストで、動物性脂肪のほうが血液中のコレステロールを2倍に高めるという結果が出たからでした。
けれども、この実験はわずか一週間という簡単なもので、その後の研究により、長い間で見ればその他の脂肪分でも体内のコレステロール値に大きな差がないとわかったのです。
例えば、アラスカ北部で動物性脂肪がたっぷりのアザラシなどを多く食べるイヌイットの人たちは、デンマーク人に比べると、コレステロールを2倍多く摂っているのにもかかわらず、血液中のコレステロール値はむしろ低くなり、心臓病などの心疾患にかかる率は10分の1以下との報告。世界7ヶ国で25年にわたり、この心疾患による死亡率とコレステロールとの関係が調査されましたが、心疾患で亡くなるのは、やはりコレステロール以外の別の原因というデータが上がっているのです。
「バターは風味があっておいしいけれど、健康を考えて食べるのを控えてきた」。ちまたでよく聞くこうした声も、バターがコレステロール値を上げるから悪者だとの考えが根強かったからです。ところが最近の研究では、マーガリンや食用油(大豆、紅花、コーン油など)に多く含まれるリノール酸が体内に増え、魚介の油やシソ油、エゴマ油などに多く含まれるαリノレン酸が減ると、血液の粘りが強くなり、血栓が出来やすくなって動脈硬化や心疾患が進むことが明らかになったのです。
つまり、それぞれの脂肪に含まれる脂肪酸の中身やバランスこそが問題。「今までいいと思ってきた植物性脂肪のほうが、生活習慣病を招く」との、まさに食生活の常識を破る結果でした。動物性脂肪だからといってバターを控える必要などまったくなかったのです。
しかもリノール酸は、欧米型のがん(肺、胃、腸など)を誘発する危険のある物質を体内で作ります。バターの場合は、体内でオレイン酸などを作りますが、オレイン酸はリノール酸と違い、生活習慣病などを招く危険物質を作り出すことはありません。
動物性脂肪だけがコレステロール値を高めるのではないと前述しましたが、セミナーではまた「コレステロール値の低いほうが短命」との驚くべき発表もありました。
コレステロール値と死亡率の追跡調査(対象:40歳以上・国内、70歳以上もしくは85歳以上・欧米)により、寿命が長いのはむしろコレステロール値の高い人だったことが検証されたのです。ここでもコレステロール悪者説は逆転してしまいます。
生活習慣病の危険因子といわれるリノール酸が少なく、かつ、気がかりだったコレステロール値も寿命に影響しない。となれば、バターをがまんする根拠などもうないのです。講演後は、医療、育児、食生活の専門記者と奥山先生との質疑応答も白熱。脂肪分と健康の関わりに対する関心の高さが伺われました。
最新脂質栄養学がもたらしたバターの真価。それは酪農家の皆様が心を込めて生産されるバターを、「安心してもっと食べて良い」というお墨付きを得たことでもあります。中酪はこれを機に、バターの利用拡大策を積極的に進めていきたいと考えています。
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