1996年 雑誌広告 (1)
山のような形をして、八百キロもあり力の強い牛なのですが、実は繊細極まりない生きものなのです。足の裏をすりむいても、化粧をした女性が搾乳室にはいって香りを放っても、乳を出す量が変わります。暑さ寒さによっても、風が吹いても、乳量は変動します。やせすぎても健康に良くないし、太りすぎるとお産をしにくくなります。本当は強いのに、牛は気が弱くてやさしい動物なのです。それは目を見ればわかります。長い歳月、人間はこの動物と生きてきました。子供を産むと乳を出すのは人間もすべての哺乳類も同じなのですが、その身体の仕組みを実にうまくコントロールして、酪農が生まれたのです。人と牛との長い歳月があったればこその、精妙な技術です。見れば見るほど、牛は不思議な動物です。穀物や干草を食べ、毎日朝と夕、あんなにもうまい乳を大量に出すのです。
牛は牛なりに一生懸命生きて、酪農家は酪農家なりにこれまた一生懸命働き、その上で私たちはミルク やバターやチーズやアイスクリームや、いちいち数えきれないほどたくさんの乳製品を食べることができ るのです。酪農は生命産業です。工業などの無機的産業は大量の廃棄物を生み、おかげで地球はゴミの星になりつつあります。酪農の廃棄物とは牛の糞尿ですが、これも各酪農家が技術を持ちはじめて各 戸で有機肥料に変え、大地に還えるのです。酪農家は子牛の誕生にも立ち合い、牛の命に寄り添って働き、多くの人の生命をも養います。赤ちゃんは粉ミルクを飲むし、大人になっても乳製品は命の素です。生命産業とは、この地上で生きる私たちが必ず守らなければならない、命を育てていく道なのです。 一滴の白いミルクは、命の一滴なのですね。

※数字は、1995年のものです。1998年現在の酪農家戸数は約3万7千戸、乳牛頭数は186万頭です。

立松 和平

 
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