2000.3.17 新聞広告
萩尾/私は1年のうち少なくとも半分の期間は1日1リットルも飲むほどの牛乳好きなんです。宅配の牛乳をとっているんですが、それだけでは足りなくなってしまい、スーパーで買い足すこともあるくらい。
立松/僕も事あるごとに牛乳を飲んでいます。つい先日も客船でヴェトナムとタイまで行ったんですが、船の冷蔵庫には、それぞれの、ボトルキープならぬ″パックキープ″の牛乳が入れてあって、それでも最後の頃は足りなくなって、取り合いになっていましたよ。
吉田/お二人にそう言っていただくと、酪農家としては嬉しい限りです。
萩尾/日本人にとって牛乳は、″国民的飲料″といってもいいほど身近な存在で、学校給食にも必ず出るくらいですから、栄養的にも優れているし、健康によいということは誰もが知っていますが、じゃあ、どんなところでどのように酪農が行われているのかと聞かれると、明確に答えられません。
吉田/酪農というと、北海道のような広大な牧場を思い浮かべる方も多いようですが、実際には山間地とその周辺部、いわゆる
中山間地と呼ばれる場所での酪農が、全体の約3分の1を占めているんです。

萩尾/私たち消費者にとっては、紙パックに入ってスーパーに並んでいる牛乳が馴染み深くて、酪農家が手間暇かけて乳牛を育て、その乳を絞ってというシーンとはなかなか結びつきにくいですね。酪農の現場と消費者との架け橋がないというか……。
立松/たしかに、酪農というものが一般の消費者からは遠い存在になっているような気がしますね。とくに子供たちは、まるで水道のように、蛇口を捻れば牛乳がジャーッと出てくると思っているかもしれない。
吉田/先日、学校給食で牛乳がよく残されるという話を聞きましたが、それは酪農家にとって非常に悲しいことなんです。一生懸命育てた牛の乳だから、粗末にせず大事に飲んでほしいと思うんです。それには一般の方たちに酪農への理解を深めてもらうことが大切だと思い、牧場を開放して乳牛と接してもらったりという取り組みをしているところです。
立松/命と寄り添って働く酪農家の姿を見て、牛乳はこうやって作られるんだということを知れば、子供たちも含めて消費者の意識も変わるんじゃないでしょうか。今、乳牛の搾乳期間というのは何年ぐらいですか?
吉田/私のところでは5?7年ぐらいですが、平均的には4?6年ぐらいでしょうか。
立松/牛の寿命というのは10数年ですよね。最近、太く短く乳牛を酷使するのではなく、牛だって生命体なのだから生理に合わせて細く長く搾乳するという考え方も芽生えつつあるという話を聞きました。ただし、そのためには、特殊な濃厚飼料などを利用するのではなく、自然な飼料を与え、乳牛を健康体に保つことが必要だそうですね。
吉田/そういった試みもたしかにあります。ただ、その際ネックとなるのが、成分無調整牛乳は年間を通して乳脂肪分3.5%以上という基準なんです。乳牛のホルスタインはもともと寒い土地に適した品種なので、暑さには弱く、牛乳の需要がピークに達する夏場は乳の出が悪くなります。さらに乳脂肪分も減ってしまうため、生産者は成分を保持して基準をクリアするのに苦労しています。
萩尾/そうなんですか。でも消費者の側は、夏場は生乳の脂肪分が低下するといった話をほとんど知りませんよね。牛乳の成分に基準があること自体、あまり浸透していないのではないでしょうか。
吉田/酪農家の側は、その基準を満たすため、海外から輸入した飼料をわざわざ使わざるを得ないという状況にあります。北海道のような涼しい土地で放牧を行い、良質な繊維の多い牧草を食べさせれば、自然のままでも基準を満たすことが可能ですが、関東など都市部周辺で、その土地に相応しい酪農をしようと思ってもかなり難しいでしょうね。都市部周辺では放牧型の酪農は壊滅してしまいました。
萩尾/そういった基準があるからこそ、消費者は年間を通じて一定の品質の牛乳を安心して飲めるという面はたしかにあるかもしれません。でも、自然に逆らってというのは、何か矛盾していますよね。乳脂肪分が落ちると味が変わるとか、栄養価が下がるといったことがあるんですか?
吉田/乳脂肪分が高いほうがおいしい牛乳だと思っている方も多いかもしれませんが、牛乳に含まれる栄養素は豊富なので、脂肪分が減ったからといって、牛乳本来のおいしさが損なわれることはありません。
萩尾/今、有機栽培や自然食品が注目を集めていることを考えると、
牛だって生き物だから乳に含まれる脂肪分は季節によってかわるということを消費者もちゃんと理解すれば、乳脂肪分がわずかに少ないからといって敬遠したりはしないのではないでしょうか。

吉田/一年中同じ成分の牛乳を提供するために自然に反した方法を採用することが、消費者や酪農家にとって望ましいことなのかどうかは問題だと思います。土地に根ざした放牧や、自給飼料をもっと利用できる酪農があってもよいと思います。
立松/僕には持論がありまして、地方の農村の中心には酪農家や畜産家がいるべきだと思うんですよ。今、農業は有機のほうに向かっていますから、それには良質な堆肥が絶対に必要でしょう。農村の中心に畜産家がいて、その周囲に稲作や畑作の農家があって、堆肥を稲ワラや野菜と物々交換する。そういう
地域に密着した自給自足的な酪農のあり方が考えられるのではないでしょうか。 あるいは都市近郊の酪農家なら、ビール粕や豆腐粕を飼料として有効利用する、リサイクルするというのも可能ですよね。食というのは健康を担うものだし、安全なものでなくてはいけないと思います。そのためにも乳牛の飼料は可能な限り自給してほしいですね。
吉田/僕もそれを目指しているんですが、酪農家の努力だけではなかなか難しいですね。
立松/地域で、あるいは国全体で、日本の風土に合った自給する酪農、自然の循環と共存する酪農を目指すべきだと思いますね。

 
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