平成23年度酪農教育ファームスキルアップ研修会(盛岡会場)ー講演ー
平成23年度酪農教育ファームスキルアップ研修会 (盛岡会場)を開催いたしました。

何に関心があるかにより、見えること・理解できることが違う
 みなさんが子供たちに一生懸命話していても、本当に伝わっているのかなと思う時があるかと思います。一度で全員の子どもたちが理解するという事はありえません。3分の1の子たちが分かってくれたらいい、残り3分の2の子どもたちにどうやって理解させていけばよいかということを考えます。その時に、別の方法を準備しているかどうかです。なかなか理解してもらえないということを前提で考えていただくと良いと思います。
 みなさんの牧場に子どもたちが来る時は、学校単位だと思いますが、一番大事なことは、現場に来た子どもたちよりも連れて来る先生達の意識です。ただ漠然と牧場体験させたいというようなことで来ているのか、ここで子どもたちにどんな体験をさせたいと思っているかを打ち合わせして、理解をしておかないと、ぜんぜん違う視点で物を見ることになります。
 また、体験に行くことを楽しみに行くのと、何もなく行くのでは気付きがまったく違います。いかに事前の準備をするかです。体験すればいろいろな発見はありますが、その後、学校でどんなまとめをするのか振り返り、思い出してどれだけ、楽しかった・良かったと思えるかです。10年以上経っても覚えている・心に強く残っている事が体験の重要さだと思います。そういう理解をしている人が増えれば、酪農を推進していくエネルギーに繋がると思います。体験して終わりではなく、交流(手紙など)すれば、考えます。牧場と牧場にいた人たちとの繋がりになります。意識して繋がりを持つことです。
 子どもたちは、知識も情報もないので牧場に来て何を見ても十分に理解が出来ません。知識があれば分かる事も沢山ありますが、知識がないと判断する手立てがないのです。皆さんに教えていただいて初めて分かることなのです。ですから、ただ体験すれば良いわけではなく、体験したことを意味付けて知識も付けてあげると、もっと牧場や牛のことが理解出来ると思います。
子どもたちに何を伝えたいのか
 子どもたちに、体験を通して何を伝えたいかということをしっかり持っておくこと。例えば、安全衛生のために消毒槽に足をつけます。ただ機械的につけるのではなく、「何でつけると思う?」と聞いてみると、子どもたちは考えます。消毒した方がきれいだからなど意見が出ます。そうすると意識して消毒槽に足をつけるようになります。している事は一緒ですが、目的が違うことを意識させる一言を追加してあげると、見方や行動が変わってきます。
 学年の発達段階に合った内容や方法という事で、ただ説明を聞くだけでは、受身になって内容が入ってきません。1つの手立てとして、クイズにしてあげると良いです。これはどの学年でも有効的です。まず、自分で答えを予想します。それが合っていたら、自分の考えが正しかったと感じ、違っていたら、なぜ違ったのかということを、自分の予想した答えと比較して考えるようになります。
 普段、みなさんが普通に使っている言葉(単語)でも、子どもたちの中には初めて聞いた子もいます。例えば、「牧草(ぼくそう)」。大人は「牧草」と聞いたら漢字で思い浮かべますが、子どもたちは漢字も分かりません。そこで、実際牧草を見せて、初めてこれが牧草だと分かりますが、「ぼくそう」は平仮名のままです。そこで、漢字を見せて考えてもらうと繋がります。ヒントになるようなものを沢山持っていれば、忘れても手がかりがあるからまた思い出すことができるので、出来るだけ手がかりを多く残してあげるために、サンプルやプレートなどを見せながら話をしていくと良いと思います。全てに対応は出来ないと思いますが、1つの手法としてあります。
 みなさん沢山伝えたい事があると思いますが、一度に沢山言われても許容範囲を超えてしまいます。なので、優先順位を決めてその事に付け加える事と、全てが繋がるような話の仕方をしていただくと、繋げて覚えていくと思います。
 「もっと知りたい」と思わせるような、余韻を残す体験。結論でまとめてしまうのでなく、次に繋げられるような終り方をすると、また来たいと思ってもらえるのではないでしょうか。
活動・体験の工夫
 子どもたちは牧場に行った時に身体全体で感じると思います。牧場は学校とは違う空間という事で、比較していると思います。視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚と、子どもたちが身体全体で感じ考えたことを引き出してあげること。いろいろな手立てで子どもたちが見つけたことがあるということを、感じるようにしてあげると、体験した事が意味付けされると思います。
酪農教育ファームの充実のために
 学校での活動の位置付けとして、1回体験して終わりではなく、何年生になったら酪農体験が出来るというような、継続的な係わりをすることが大事です。
 子どもたちにとって「楽しいこと・面白いこと」はエネルギーになります。体験した事が楽しい、もっとやりたいと思うような活動になる工夫をしていただけると、間違いなく子どもたちは喜んで牧場のことを理解してくれると思います。


津川 裕・福岡教育大学 生活総合教育講座教授・附属小倉中学校校長

大阪市の小学校・大阪教育大学附属天王寺小学校教諭、大阪市の小学校の教頭、福岡教育大学助教授を経て現職。現在の研究課題は、生活科・総合的な学習の時間の授業作りのあり方についての実証的研究。酪農教育ファームとの出会いは、平成21年に熊本県オオヤブデーリーファームにおける清水小学校の2年生の酪農体験を参観したことがきっかけとなり、平成22年度よりスキルアップ研修会の講師をお引き受けいただく。
著書に 「平成20年度改訂小学校教育課程講座生活」(共著、ぎょうせい、2008年)「すぐに役立つ学校評価大宰府市の小中学校の取組み」(共著、ぎょうせい、2008年)「生活科の授業方法」(共著、ぎょうせい、2003年)
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