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平成30年度 スキルアップ研修会(東京会場)
ー酪農教育ファームにおける安全・衛生対策の確認ー(抜粋)
島田 亘
千葉県農業共済組合連合会 中央家畜診療所 係長
酪農教育ファームにおける安全・衛生の基準
 みなさんは酪農教育ファーム活動をすでに行っていると思いますので、安全・衛生の対策はいろいろされていると思います。再確認ということでお話しさせていただきます。

受け入れ前に実施しておくこと
■要注意牛と異常牛
■危険エリアと見学可能エリア
■畜舎周囲の整理整頓・清掃・消毒
■農場出入り口の消石灰 
■牛舎出入り口の踏み込み消毒槽
 安全に体験活動をしてもらうため、牧場のマナーについてもお話しすると良いと思います。少人数ならあまり問題ないと思いますが、クラス単位など大人数になると全員に目が行き届かないと思いますので、先生たちと事前に打ち合わせて対応を考えていかなければならないと思います。
安全
1.危険区域の事前確認
2.アレルギー体質の子どもへの配慮
3.熱中症対策
4.怪我についての留意点


 危険な場所、入ってはいけない場所には「立ち入り禁止」などはっきりと誰にでも分かるような看板を立てるなどの対応をしてください。
 最近はアレルギーを持つ子も多いので、事前に先生に確認するようにしてください。牧場に来て牧草やエサなどでアレルギー反応が出る場合もあると思いますので、マスクやティッシュペーパーを用意しておいても良いと思います。
衛生
 1番注意しなければいけないは、口蹄疫です。2年後にオリンピックも控えていますので一層注意が必要です。
 農場への口蹄疫の侵入を防ぐために、農場を訪問する車両、持ち込む器具は必ず消毒し、関係者以外の農場への立ち入りは控えてください。また、飼養する家畜の健康観察を行い、おかしいと思ったらすぐに獣医師または最寄りの家保に連絡してください。

感染症の基本対策
「入れない、拡げない、持ち出さない」

 「入れない」というのは自己防衛しかありません。出入口に消石灰を撒いたり、靴底の消毒やブーツカバーを着用したりするなど徹底してください。牧場側が徹底していると、来場者の意識も変わると思います。
 踏み込み消毒槽で足を消毒する場合、汚れを落とさないで消毒槽に入っても効果が薄れて意味がないので、必ず汚れを落としてから入るように来場者にも伝えてください。
万一病原菌が侵入してまったら「拡げない」ように最小限に食い止めることです。
 導線の工夫や、要所への消毒槽の設置、牛の健康管理の徹底、ワクチンやネズミ害虫駆除をしてください。
 最後の「持ち出さない」というのは、牛舎から出さないということ。牛舎から他の牛舎へ渡り歩かない、牛舎を出る時の靴底の消毒や着替え、手洗いを徹底することがポイントだと思います。
手洗いにつて
 「手洗いをしましょう」とみなさん言われていると思いますが、ではどのように洗ったら良いのでしょうか。最初に見本として実際にやって見せたり、写真や図入りの掲示物があるとよいと思います。
 夏場は良いですが、冬場は冷たい水だと、さっと洗って終わりにしてしまう事もあるので、お湯が出るようにしたり、泡の石鹸にしたりするなど、きちんと洗ってもらえるように工夫するとよいと思います。
 流水と石けんで15秒間手洗いすると、細菌数は4分の1から12分の1に減少、さらに30秒間洗うと63分の1から630分の1に減少します。
牧場で注意すべき主な人獣共通感染症
■病原性大腸菌O-157
■クリプトスポリジウム症
■破傷風

 代表的なのはO-157だと思います。O-157のキャリアは牛であることが定説化しつつあり、健康な牛の15%前後の糞から検出さるといわれています。
 O-157の1番の予防法は手洗いの徹底です。アルコールでも殺菌できますが、汚れが残っていては意味がありませんので、まずは手洗いが大切です。
 またクリプトスポリジウム症は仔牛が下痢になる病気ですが、人間にもうつるので要注意です。症状は同じく下痢になります。1度かかると抗体ができるので、成牛がかかることはありません。
 感染リスクを低減させるために最も有効な手段は手洗いの励行です。
手洗いを確実なものにするためには以下の点が重要です。
■手洗い場を適切に配置
■動物エリアと非動物エリアをフェンスなどにより物理的に区画
■非動物エリアには補助犬以外の動物の持ち込みは禁止
■動物エリアの出口には来場者に見合った手洗い施設を設ける
生乳の取り扱い・手作り体験時の注意点
生乳の取り扱い、手作り体験時の注意点
 ■搾った生乳をその場で参加者に飲ませてはいけない
 ■手作り体験の原料は市販の牛乳を用いる
 ■不特定多数へ販売・譲渡の場合は許可が必要(食品衛生法、乳等省令)

乳製品の手作り体験時の注意点
 ■原料は市販のものを使う
 ■できるだけ屋根の下や、日陰で
 ■良く手を洗う(次亜塩素酸水・アルコール消毒も)
 ■体験の順序を考える
 ■作ったものは持ち帰らない
 ■容器は加熱殺菌できるもの
こんな時どうする?
 出前授業やイベントなど、体験後に引率の先生が教室近くの水道で手を洗わせますと言っています。片付けもあるし、お願いしてもいい?
 いけません。体験者が手洗い、靴底消毒をしているか、ファシリテーター自身が必ず見届けてください。

 出前授業に牛を連れていくけれど、O-157の保菌検査はした方がいい?
 リスク回避のためのも可能な限り実施してください。
 O-157はわずかな菌量でも感染し、例えばトイレの蛇口やタオルなどを通じて人から人へ二次感染します。特にタオルは、たとえ自分のタオルで拭いても、感染したものを家に持ち帰ることになるので、ペーパータオルを用意するようにしてください。
 目に見えない菌だからこそ、考えられるところは注意するようにしてください。

質疑応答
Q.1
 消石灰の散布の有効性について教えてください。
島田
 撒く頻度や量によります。また、雨や風にさらされて有機物が混入すると効果は落ちます。本当に効果を求めるのなら毎日やるくらいでないといけないと思います。ただ、毎日散布はできなくとも、定期的に実施することで、周囲に「この牧場は衛生対策をしっかりやっている牧場だ」と思わせることは重要です。
Q.2
 小学校への出前授業の際、父親がイスラム圏の方で、出前授業の前にその国に渡航し、授業の直前に帰国する子がいた。その時は、結果的にその子は出前授業に参加しないことになったのだが、例えば口蹄疫が発生しているアジア諸国に渡航した子がいた場合、出前授業に参加させてよいでしょうか。
島田
 その子だけ出前授業に参加させないのはかわいそうですが、服や靴を変えれば参加させてよいということではありません。最低でも2週間は空ける必要があります。口蹄疫の発生国に渡航してすぐの子がいるのなら、私は、出前授業の日程をずらすしかないと思います。
Q.3
 牧場でサルモネラが出たときは、体験の受け入れを自粛すべきでしょうか。
島田
 サルモネラは正常化までが長く、3〜6か月かかります。その間は自粛してください。

千葉県農業共済組合連合会 中央家畜診療所
係長 島田亘(とおる)氏


千葉県出身。
大学在学中に大型動物に興味を持ち、大動物診療を目指す。
最近では、子牛の下痢の原因について研究中。
平成8年3月 麻布大学卒業 
同年4月   岩手県遠野共済組合家畜診療所(現岩手県東南部共済組合)
平成10年4月 千葉県農業共済組合連合会 南部家畜診療所
平成14年4月     〃        中央家畜診療所富津出張所
平成24年4月     〃        中央家畜診療所
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