平成29年度 スキルアップ研修会(東京会場)
ー酪農教育ファームにおける安全・衛生対策の確認ー(抜粋)
島田 亘氏
千葉県農業共済組合連合会 中央家畜診療所 係長


酪農教育ファームにおける安全・衛生の基準

1.安全 
1.危険区域の事前確認
2.アレルギー体質の子どもへの配慮
3.熱中症対策
4.怪我についての留意点
2.衛生
1.家畜
  人から牛へ感染して問題となる感染症→口蹄疫
2.訪問者
  牛から人へ感染して問題となる感染症→O-157

飼養衛生管理基準の改正
 家畜伝染病の発生予防・蔓延防止のため、家畜の所有者が守るべき衛生管理方法の基準が平成28年10月に改正されました。皆さんに関係が深いであろう変更点は次の2点です。
1.畜舎に侵入した野生動物による病原体伝播の可能性が確認されたため、現行の給餌施 設等への野生動物の排せつ物の侵入防止の規定に加え、家畜の死体の保管場所への野生動物の侵入防止が規定。
2.と畜場やふん尿処理施設に持ち込まれる家畜の死体や排せつ物による病原体伝播の可能性が確認されたため、家畜の死体及び排せつ物を移動する場合の適切な措置を規定。
2については去年、一昨年に流行した豚流行性下痢(PED)によって、死体や排泄物の処理の問題が出たことが大きな理由です。

農場への口蹄疫の侵入を防ぐために
 ■農場を訪問する車両、持ち込む器具は必ず消毒し、
  関係者以外の農場への立ち入りは控えましょう。
 ■飼養する家畜の健康観察を行い、おかしいと思ったら
  すぐに獣医師または最寄りの家保に連絡してください。


感染症の基本対策「入れない、拡げない、持ち出さない」
 まず、入れないということが大事です。
 出入口に消石灰を撒いたり、靴底の消毒やブーツカバーの着用したりするなど徹底してください。
 牛に感染して問題となる伝染病としては、まず口蹄疫です。また最近ではBVD−MD(牛ウイルス性下痢・粘膜病)も問題になっています。
 また、RSウイルスなどの呼吸器病もあります。呼吸器病は冬場に流行するイメージですが、夏場に牛伝染性鼻気管炎(IBR) が何件か出ました。理由は特定できていませんが、時期を選ばなくなってきていると感じます。
牧場で注意すべき主な人獣共通感染症
 最も挙げられるのはO-157だと思います。O-157のキャリアは牛であることが定説化しつつあり、健康な牛の15%前後の糞から検出さるといわれています。O-157は牛にとって定住菌ではなく、通過菌であると考えられています。
 1番の予防方法は、手洗いの徹底です。手洗い後、アルコール消毒することも多いと思いますが、O-157をアルコールで殺菌することは不可能です。最近は、次亜塩素酸の消毒剤が薦められています。ただし次亜塩素酸で消毒した後は、必ず拭き取り、きれいにするようにしてください。
手洗いの励行で感染リスクが低減
手洗いを確実なものにするために
 ■手洗い場を適切に配置
 ■動物のエリアと非動物エリアをフェンスなどにより物理的に区画
 ■非動物エリアには補助犬以外の動物の持ち込みは禁止
 ■動物エリアの出口には来場者に見合った手洗い施設を設ける
3.生乳の取り扱い・手作り体験時の注意点
「搾りたての牛乳をどうしても飲みたい!」どうする?
生乳の取り扱い、手作り体験時の注意点
 ■搾った牛乳をその場で参加者に飲ませてはいけない
 ■手作り体験の原料は市販の牛乳を用いる
 ■不特定多数へ販売・譲渡の場合は許可が必要(食品衛生法、乳等省令)

「このバタ−をお土産にする!」どうする?
乳製品の手作り体験時の注意点
 ■原料は市販のものを使う
 ■できるだけ屋根の下や、日陰で
 ■良く手を洗う(次亜塩素酸・アルコール消毒も)
 ■体験の順序を考える
 ■作ったものは持ち帰らない
 ■容器は加熱殺菌できるもの

出前授業などで牛を牧場外へ連れて行く場合
 ■体験者の情報が確認できる場合のみ
  (不特定多数の参加が見込まれるイベントには連れて行かない)
 ■衛生上の動線確認(消毒マット。手洗い等)

 イベント等に牛を連れてきてと頼まれることがあると思います。連れて行かないというのは無理かもしれませんが、危険だという認識があるとないでは違うと思います。
質疑応答
Q1.アルコール消毒はあまり効果がないという話だったが、アルコール消毒と殺菌剤の使い分けを教えてほしい。
島田:ブドウ球菌やレンサ球菌はアルコールで殺菌できますが、アルコールに耐性のあるノロウィルスやo-157、サルモネラ菌には効果がありません。それらに対しては次亜塩素酸が薦められていますが、1番は手洗いが有効です。

Q2.体体験前に海外渡航歴を確認しますが、例えば、1クラスに1人だけ、口蹄疫発生国に渡航歴があったとする。その場合は、その1人だけ体験を断った方が良い?
島田:1人だけ外すのも問題だと思いますし、1人だから体験をさせてもいいだろうと見過ごすことも出来ません。学校の先生と話しをして、日程をずらしてもらうのが一番よいと思います。

Q3.搾乳体験に使う牛は、事前にO-157の検査をしていますが、農場で、体験者が触れる可能性がある牛は全頭検査したほうが良いのでしょうか??
島田:乳牛からO-157が出る確率はそれほど高くないというデータはありますが、出ない可能性がゼロではありません。しかし、100頭いるから100頭の検査も現実的に難しいと思います。状況によると思いますので、お近くの保健所と相談してください。

Q4.「自分の家の牛乳は体験に使えない」とのことですが、菓子製造業許可があり、パスチャライザーでパスチャライズした牛乳なら、体験に使用してもよいですか?
島田:乳処理の資格がないと提供できません。

千葉県農業共済組合連合会 中央家畜診療所
係長 島田亘(とおる)氏


千葉県出身。
大学在学中に大型動物に興味を持ち、大動物診療を目指す。
最近では、子牛の下痢の原因について研究中。
昨年度よりスキルアップ研修会の講師を務める。
以下略歴
平成 8年3月 麻布大学卒業
   同年4月 岩手県遠野共済組合家畜診療所(現岩手県東南部共済組合)
平成10年4月 千葉県農業共済組合連合会 南部家畜診療所
平成14年4月     〃        中央家畜診療所富津出張所
平成24年4月     〃        中央家畜診療所
現在に至る
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