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2019年度 スキルアップ研修会(岡山会場)ー酪農教育ファームにおける安全・衛生対策の確認ー(抜粋)
酪農教育ファームにおける安全・衛生対策の確認
木島 秀雄
愛知県学校給食牛乳協会 事務局長


 酪農教育ファーム認証牧場は一般的な酪農家と比べて人の出入りが多く、人を介在して家畜が伝染病に感染するリスクが非常に高くなります。また、牧場へ来た子どもたちが動物に由来する感染症にかかる可能性もあります。
 感染症には牛や動物だけが発症するもの、動物はなんともないのに人間だけが発症してしまうもの、そして動物と人間双方が感染して問題となるものがあります。
 家畜から人への感染症や家畜伝染病が発生した場合、牧場の金銭的な損害や信頼の低下が想定されます。さらには他の牧場、ひいては風評被害も含めて業界全体に大きな被害をもたらす可能性もあります。
 被害が大きくなってからでは遅いので、少しでもおかしいと思ったらすぐに家畜保健衛生所に連絡をしてください。
安全な酪農教育ファーム活動を行うための4つのポイント
1.安全に実施するための準備  
2.乳牛の衛生管理  
3.牧場、畜舎の清掃・消毒、環境美化
4.来場者への指導
安全に実施するための準備
■異常牛と要注意牛は隔離しておく
■危険エリアと見学可能エリアの区分を明確にする
■畜舎周囲の整理整頓、清掃・消毒
■牛舎出入り口の踏込消毒層の設置
■手洗い場の準備や石鹸・消毒液等の確認

手洗い施設の条件
■石鹸(できれば液状や泡状のもの)を常備する
■ペーパータオルを用意する
 (さらに、手を拭いたペーパータオルで蛇口を閉めると汚れない)
■冬場に温水が出るとよりよい
■給水栓が自動あるいは足で操作できるものだとよりよい
■アルコール消毒薬の利用も有効だが、必ず手の水分を拭き取ってから使用する
 手洗い場やトイレは、来場者の人数に合わせた数を準備する必要があります。手洗い場は牛舎の出口付近に設置し、体験後すぐに手洗いができるようにしましょう。小さな子どもや車いすの方等も使用しやすいよう設計に配慮されているとなおよいと思います。
 石鹸はできれば液状・泡状のものが良いです。細菌を洗い流すのは泡の力なので、石鹸をきちんと泡立たせる事が大切です。また、子どもたちがきちんと手を洗っているかどうかを、ファシリテーター自身が目で見て確認しなければいけません。
感染症 発生のメカニズム
1.病原体
 患者、あるいは自分で感染していると知らずに菌を保菌・排菌している健康保菌者、そして彼らの吐しゃ物・便・血液など。
2.感染経路
 経口、飛沫、経皮、接触など感染の経路。
3.宿主
 感染を受ける側の生き物のこと。人間、動物であれば牛や豚等。

 感染症が起こるには、病原体、感染経路、宿主の3つが必要で、どれかひとつが外れれば感染症は起こりません。
来場者への啓発
 来場者に対し、動物から感染する病気があることを説明する必要があります。多くの場合、動物に由来する感染症は、キスなどの過剰な触れあいを避け、手洗いを効果的に行うことで予防できます。
 手洗いは子どもたちが知っているような歌を替え歌にするなどして注意を引き付けながら行うと効果的かと思います。手洗いは手を濡らしせっけんを手に取り、ぶくぶくに泡立てる、この3部分が非常に重要です。
 ファシリテーターが責任者として現場で指導をしていただければ、よりよい酪農体験ができると思います。
感染症を予防する上での基本対策
■入れない
■拡げない
■持ち出さない


 牛に感染して問題となる伝染病には、口蹄疫が一番多く、ヨーネ病、サルモネラ症、黄色ブドウ球菌による乳房炎等もあります。特に口蹄疫は世界的に発生しており、アジア圏はほとんどの国で発生しています。
 動物から人に感染して問題となる感染症にはカンピロバクター、サルモネラ菌、腸管出血性大腸菌症等があります。これらはすべて牛が介在しています。特にO-157は死者が出ますので要注意です。
 多くの食中毒では100万個以上の菌が体内に入らないと感染しませんが、O-157は100個程度でも感染するという特徴があります。潜伏期間は3日から14日と長く、酸に強いため胃酸に負けずに腸まで届いてしまい、ベロ毒素という毒素を出して下痢を起こします。
 平成23年には日本でユッケを食べO-157に感染した人が7人亡くなっています。その他ふれあい動物施設でもO-157に感染した方が出ています。妊婦や免疫機能低下者、乳幼児、高齢者は特に注意をして下さい。
質疑応答
Q.1
 体験の前後には手洗いをしますが、それでも体験の際は手袋をしなければなりませんか?
木島
 手洗いをしっかり行っているのであれば、手袋は必ずしも必要ありませんが、手洗いにプラスすることで、リスクがさらに軽減されると考えられます。
Q.2
 牧場に来られた方には、消毒槽で靴を消毒してから牧場に入ってもらっていますが、ブーツカバーは履いてもらった方が良いですか?
木島
 消毒液は、作ってから時間が経つと消毒効果が低下します。消毒槽に加え、ブーツカバーを履いてもらうことで、靴底からの感染リスクを低減させることができます。

愛知県学校給食牛乳協会 事務局長 木島 秀雄氏

岐阜大学農学部獣医学科卒業。
愛知県職員に獣医師として採用され、30数年にわたり衛生関係部局にて食品衛生・環境衛生・公衆衛生・動物愛護法関係等の分野に係る業務に従事する。
平成5年には愛知県からオーストラリア・ヴィクトリア州に派遣され、乳業工場や牧場の現況、家畜衛生等様々な課題について研修を実施。
愛知県職員を退職後、現在は愛知県学校給食牛乳協会、愛知県牛乳普及協会など5団体の事務局長として、学校給食での牛乳の供給推進や普及啓発をはじめとする様々な牛乳消費拡大対策、並びに牛乳生産・処理に係る衛生指導等に取り組んでいる。
名古屋学芸大学にて、公衆衛生全般に係る非常勤講師も務める。
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