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平成29年度 スキルアップ研修会(新潟会場)
ー酪農教育ファームにおける安全・衛生対策の確認ー(抜粋)
酪農教育ファームにおける安全・衛生対策の確認
木島 秀雄
愛知県学校給食牛乳協会 事務局長


 酪農教育ファーム活動をしていると、普通の酪農家(牧場)より人の出入りが多いと思います。人を介して、外から病気を家畜にうつしてしまう可能性や、逆に家畜から人に病気をうつしてしまう可能性もあります。リスクがあるということを再度確認して下さい。
 家畜から人への感染症・伝染病が確認された場合、金銭的な損害が発生します。また、信用がなくなりますし、近隣の牧場への影響も懸念されます。おかしいと思ったらすぐに家畜保健衛生所に連絡してください。連絡が遅れると、抑えきれなくなり近隣へ迷惑をかけることになります。最近はすぐネット上で拡散されてしまいます。業界全体への影響、風評被害に繋がります。
安全な酪農教育ファーム活動を行うための4つのポイント
1.安全に実施するための準備  
2.乳牛の衛生管理  
3.牧場、畜舎の清掃・消毒、環境美化
4.来場者への指導


異常牛と要注意牛の注意
 いつもと様子が違う、体調が悪いと見受けられる動物については、子どもたちが来る場所から少し離れた所へ移動させてください。子どもたちが危険なエリアに入らないように、ハッキリと注意書きをしてください。
 踏込消毒槽については、ただ置いてあればよいというわけではありません。きちんと管理し、使用頻度に応じで消毒液を取り換える必要があります。
 また、消毒液は直射日光によって劣化するので、置く場所も工夫してみてください。
 手作り体験をする場合は、事前に保健所へ連絡をしましょう。もし連絡をせず手作り体験をして、万一体調不良を訴える子どもが出た場合、牧場が原因ではなかったとしても、保健所から疑われてしまいます。事前に連絡をして指導してもらうことで保健所の対応も変わります。
手洗い施設の条件
 食中毒を予防する上で、手洗いはとても重要です。
 せっけんをつけて、サッと洗って終了ではなく、きちんと泡立ててください。泡立つ前に流してしまったら、細菌を洗い流す効果が半減します。きちんと泡を立てて指の間まで洗うようにしてください。

■石鹸(できれば液状や泡状のもの)を常備する
■ペーパータオルを用意する
 (手を拭いたペーパータオルで蛇口を閉めると汚れないため)
■冬場に温水が出るとよりよい
■給水栓が自動あるいは足で操作できるものだとよりよい
 (ペーパータオルで止水する必要がないため)

 アルコール消毒薬は、70〜80%の濃度で最も高い消毒効果を発揮しますが、手が濡れたままでアルコールを吹きかけると水とアルコールが混ざって濃度が薄れ、消毒効果が期待できなくなります。必ず手の水分を拭き取ってから使用してください。
「清潔」と「衛生的」の違い、分かりますか?
 例えば人を見て、「あの人は清潔そうな人だよね」とは言いますが、「あの人は衛生的な人だよね」とはあまり言いません。
「清潔」は見た目で決まります。「衛生的」とは、科学的根拠に基づき、健康を維持したり病気を予防したりするのに適している状態を指します。

感染症の3つのメカニズム
1.病原体
 患者、あるいは自分で感染していると知らずに菌を保菌・排菌している健康保菌者、吐しゃ物・便・血液など。
2.感染経路
 感染経路を遮断すれば感染症は成立しません。
3.宿主
 感染を受ける側の対象の生き物のこと。免疫があり、健康体であれば、病原体を跳ね返すことができます。
この3つのうちどれか1つでも欠けたら感染症は成立しません。
来場者への啓発
(1)汚れの付着しやすいような服装をあらかじめ止めさせる
(2)原因菌に直接触れないようにする。
(3)作業の後は必ず手洗い
(4)導線を確保する


 動物から感染する病気があることを説明する。動物に由来する感染症は、キスなどの過剰な触れあいを避け、手洗いを効果的に行うことで予防できます。
 また、幼児には必ず監督者が伴うようにし、注意事項を周知するためにファシリテーターが現場で指導をすれば、よりよい酪農体験ができると思います。

感染症を予防する上での基本対策
■入れない
■拡げない
■持ち出さない

 まずは、感染症の病原体を「入れない」。また、もし入ってしまっても牧場内で「広げない」。牛の健康管理などに気を付けてください。最後に「持ち出さない」は、牛舎を渡り歩かない、汚れの付きにくい服装にするなどに注意をしてください。

牛に感染して問題となる伝染病には、口蹄疫、ヨーネ病、サルモネラ症、黄色ブドウ球菌による乳房炎などがあります。
口蹄疫は外国から入ってくるので、皆さんの牧場でいつ発症するかわかりません。
日本は早い段階で清浄国になりましたが、近隣諸国には未だ非清浄国である国も多いです。
口蹄疫の消毒ですが、口蹄疫はウイルスなので4%炭酸ナトリウム液(別名4%炭酸ソーダ液)が有効です。もしくは、消石灰を水で溶かして撒いたり、粉のまま撒いたりしても有効です。また、口蹄疫が確認された時には早く通報するようにして下さい。遅くなればなるほど被害が広がります。
動物から人に感染して問題となる伝染病
病原性大腸菌O‐157の特徴
 多くの食中毒は100万個以上の菌が体内に入らないと食中毒は起こりませんが、O‐157は、100個程度が体内に入っただけでも病気を起こしてしまうほど感染力が強い菌です。
 潜伏期間は3〜14日と長く、発症してからでは原因物質を追及するのが困難です。酸に強い菌なので、菌が体内に入ると胃酸では死なず、小腸に行き増殖します。その際に腸を刺激して、下痢の症状が出ます。下痢だからといって、市販の下痢止めは服用しないでください。体は毒素を追い出そうとしているので、それを止めてはいけません。下痢はある程度止めず、その代わり水分補給や栄養(点滴等)を摂るように対処します。
 平成28年度にはO‐157で亡くなった方が10人いました。特に、妊婦、免疫機能低下者、5歳以下の乳幼児、知的障害を有する人、高齢者は注意が必要です。
質疑応答
Q1.ブーツカバーを着用する場合にも、消毒はした方がよいですか?
木島:消毒の効果は確率の問題です。どれだけやれば100%ということはありませんが、ブーツカバーを着用して、更に消毒もした方が、汚染を防止する確率は高くなります。


愛知県学校給食牛乳協会・愛知県牛乳普及協会
事務局長 木島 秀雄氏


岐阜大学農学部獣医学科卒業。
 愛知県職員に獣医師として採用され、30数年にわたり衛生関係部局にて食品衛生・環境衛生・公衆衛生・動物愛護法関係等の分野に係る業務に従事する。
 平成5年には愛知県からオーストラリア・ヴィクトリア州に派遣され、乳業工場や牧場の現況、家畜衛生等様々な課題について研修を実施。
 愛知県職員を退職後、現在は愛知県学校給食牛乳協会、愛知県牛乳普及協会など5団体の事務局長として、学校給食での牛乳の供給推進や普及啓発をはじめとする様々な牛乳消費拡大対策、並びに牛乳生産・処理に係る衛生指導等に取り組んでいる。
 名古屋学芸大学にて、公衆衛生全般に係る非常勤講師も務める。

 平成25年よりスキルアップ研修会で「牧場の安全・衛生」の講師を務めている。東海酪農業協同組合連合会とは、愛知県牛乳普及協会として協働し、牛乳消費拡大に向けた様々な普及啓発活動などに取り組んでいる。
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