スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



平成30年度 スキルアップ研修会(福岡会場)
ーワークショップー(抜粋)
「〜話し上手は、きき上手〜
     『積極的傾聴』でプログラムの質が格段に変わる」
上田 融氏
NPO法人いぶり自然学校 代表理事


 NPO法人いぶり自然学校の上田氏を講師に迎えてワークショップを行いました。
 体や頭を使いながら参加者同士がコミュケーションをとり、「きく」ことの重要性を実感しました。
 私は普段、子どもや親子などを北海道の自然の中に連れて行き、いろいろなことを見て、聞いて、体験してもらい「イイよね!」と思ってもらえるような活動をしています。最近は酪農家さんにもお手伝いいただき、農家民泊なども行っています。

 みなさんの記憶にも新しいところかと思いますが、北海道で大きい地震がありました。まだ余震が続いている状況です。
私はスタッフと共に支援活動をしています。建物などの解体や片づけ作業のほか、子どもたちに遊び場を作るといった支援もしています。 
 大きな災害が起こるとインフラ整備が優先され、子どもたちと動物が取り残されるような気がしています。避難所に牛や豚まで連れていくことはできませんし、仮設住宅は公園に建てられることも多いので、子どもたちの遊び場がなくなるのです。避難所や仮設住宅に閉じ込められているような状況は、子どもたちに良い影響を与えるとは決して言えません。たとえ全国からたくさんの物資が届いたとしても、それだけでは解決しないことがあります。「どうだった?」と話を聴く、コミュニケーションをとることでしか子どもたちの心の問題は解決していきません。せめて私たちと関わっている間は、話したり聞いたりする。それが重要だと思いますし、今、その技術が問われています。このことは、今回のワークショップのテーマにも合致すると思っています。
ファシリテーターってなに?
 私は、ファシリテーターとは相手を「そうしないではいられなくする」人だと思っています。
 例えば、子どもたちが牧場に来て体験して帰る頃には、牛乳が飲みたくて仕方がなくなる。「牛乳を飲んで」と直接言うのではなく、自然と言わせるように「促す人」です。決して「指導者」ということではありません。
 今日はワークショップという方法でプログラムを進めていきます。
 ワークショップとは参加型の研修のことです。一方的に話を聞くだけではなく、動いたり、話したり、書いたり、発表する形で進めます。きっと、「恥ずかしい」「分からない」など、心を揺さぶられるような体験をすると思います。そのつもりでお付き合いいただければと思います。
見方を変える
「なぜ牛は白黒なの?」
これを説明できる人はいますか? 例えば、幼稚園児にどう説明しますか?

「今日は白黒の気分だったから」
 こんな回答でも意外に子どもたちは納得したりします。アイヌの人々は、動物は様々な洋服を着た神様だという考えを持っています。例えば牛は、神様が白黒の服を着て下界に降りてきているということです。そういう話をしても良いのです。
 大人は生き物を科学的、生物学的にみますが、子どもたちに伝える時には必ずしもその言い方が良いとは限りません。物の見方を変えたほうが案外子どもたちに伝わることもあります。


『どんな漢字が隠れている?』
 ものの見方を変える練習として、ある図形にどんな漢字が隠れているのか探すゲームを行いました。3〜4人で班になり、隠れている漢字をできるだけ多く出し合います。ものの見方を変えることがどれだけの可能性を持っているかを体験します。
きく関係性をつくる
『デートゲーム』
1.1週間(月曜から日曜まで)、日ごとに違う相手とデートの約束を取り合います。全ての曜日で違う人と約束してください。
2.「1」で約束した全員の所に行き、本当に約束したか確認してください。
 
 コミュミケーションが大事と言いますが、初対面の人といきなり話をするのは難しいと思います。
 どこかで聞いたことがあるかと思いますが、ワークショップなどの始めに「アイスブレイク」というものを行います。
 アイスブレイクとは、「お互いの関係を崩す」「心の氷を溶かす」といった意味です。
 アイスブレイクをすることで、1.場に馴染み、2.進行役が誰かが分かり、3.場にいる人々の性格が分かります。
 このことでその後の体験がスムーズに進みます。
きくに迫る体験
 コミュミケーションには、相手を見る、聞く、話すなど、いろいろな要素がありますが、今回は「きく」ことに絞ってみます。
『Faxゲーム』
 発信者が1人。他は全員、受信者です。
 発信者が“ある図”を言葉のみで説明します。受信者はそれをきき、紙に描きます。理論上は発信者が説明した“図”と受信者が描いた“図”は、同じものになるはずです。
 受信者はFaxです。機械は話しませんので、質問はできません。ひたすらきいてください。
発信者が見ていた図と同じ図になりましたか? 発信者を一人ずつ増やしながら3回発信したので、段々と精度が高まってきたと思います。Faxなので縮尺も一緒になるはずです。
3人の発信者は同じものを見ているはずなのに、性別や世代で違うように受け取り発信します。シンプルな形でもきくだけでそれを理解するのは難しいことです。普段いかに視覚や雰囲気に頼っているかがわかります。
言語だけではなく、立ち居振る舞いや顔の筋肉の動き、伝わってくる雰囲気もひっくるめてきく、全てをひっくるめてコミュニケ―ションが成り立っていると感じてもらえればと思います。
感動の拡大再生産
話す=技術・語彙表現の選び方
きく=度量の大きさ・全て受け止める


『ペンをひたすら褒め続ける』
 きくと話すをミックスしたような体験をしてもらいます。2人1組になり、ペンを褒め続けてください。相手が言ったことを否定してはいけません。時間は1分間、交互にペンをひたすら褒め続けます。

 ポイントは、相手の言葉を一度しっかり受け取ること。受け取らないと、相手の褒めている部分を認めていないことになるので、受け取ったうえでさらに褒めてください。
『インタビューゲーム』
 2人組になり、話す人と書く(きく)人を決めます。
話す人は、出されたお題についてひたすら話し続け、書く人は黙って全てを書きます。交替し、お互いどちらの役もやります。
同じことをもう一度やります。今度は、書く人も話すことができます。「リポーターの4つの言葉」を使って相手の話をききます。
ポイントは共感すること。相手の感動を拡大して返しながら話をきき出します。これを「感動の拡大再生産」と言います。

リポーターの4つの言葉
 リポーターは自分が目立たぬよう、きき出すための言葉を使い対応している。
 ■へぇー
 ■ほぉー
 ■なるほど
 ■そのあとは?
明日からこれを取り入れます!
 「きく」をテーマにワークショップを進めてきました。「きく」ことは思ったより難しかったと思います。でも、きき方や言葉のかけ方でどんどん話が出てきました。また、受け取ることで相手がもっと話してくれる、そんな技術が見えたと思います。
 それでは、今日掴んだコツや勘所はどこで使いますか。最後に、明日から何をどこでどう取り入れるかを紙に大きく書いて、宣言しましょう。

「1つのギモンに対して何でだろう? をみんなで共有」
「まずは、職場のスタッフと感動の拡大再生産を行います」
「相手が今、何を思っているか引き出す」
「他人と心をつなぐために、話す前にまず聞く」
「子どものの話を聞き出す」


NPO法人いぶり自然学校 代表理事 
上田 融(とおる)氏


昭和48年生まれ。
平成8年より北海道の小学校で6年間勤務。
平成14年より4年間、登別市教育委員会社会教育グループで社会教育主事として、ふぉれすと鉱山の運営に携わる。平成18年よりNPO法人ねおすの活動へ参画し、道内各地の自治体と協働し、第一次産業の取り組みを子どもたちに体験的に伝え、学ばせるプログラム開発および協議体の設立に関わる。
平成20年より苫東・和みの森運営協議会副会長。平成27年より現職。
プロジェクト・ワイルドファシリテーター、小学校教諭1種、幼稚園教諭1種等の資格を持つ。
平成24年度より中央酪農会議の開催する研修会の講師を務める。
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