（１）危険区域の事前確認
（２）アレルギー体質の子どもへの配慮
（３）熱中症対策
（４）怪我についての留意点

　毎日、牧場にいると見慣れてしまい、危険なものや場所を危険と感じなくなっているかもしれませんが、来場者にとっては危険なものかもしれないので確認をするようにしてください。危険だからといって全て取り除かなくても、牧場内を廻る時に注意を呼びかけてもよいと思います。危険だという認識を持つことが大事です。
　また、最近は外国人の来場も多いと思いますので衛生管理区域との区分の看板などには日本語以外もあるとよいと思います。

農場への口蹄疫の侵入を防ぐために
■農場を訪問する車両、持ち込む器具は必ず消毒し、
　関係者以外の農場への立ち入りは控えましょう。
■飼養する家畜の健康観察を行い、おかしいと思ったらすぐに
　獣医師または最寄りの家保に連絡してください。

感染症の基本対策は「入れない、拡げない、持ち出さない」
　まず、「入れない」ことが大事です。
　出入口に消石灰を撒いたり、靴底の消毒やブーツカバーを着用したりするなど徹底してください。牧場側が徹底していると、来場者の意識も変わると思います。
　次に、万一入ってしまったとしたら「拡げない」ように最小限に食い止めることです。導線の工夫や、要所への消毒槽の設置、牛の健康管理の徹底、ワクチンやネズミ害虫駆除をしてください。
　最後の「持ち出さない」というのは、牛舎から出さないということ。牛舎から他の牛舎へ渡り歩かない、牛舎を出る時の靴底の消毒や着替え、手洗いを徹底することがポイントだと思います。

手洗いの方法
■よく泡立てて最低20秒間両手をこすりつけながら洗う。
■爪の先、指間も良く洗うように注意する。洗浄後は流水で洗い流す。
■可能ならば、使い捨てペーパータオルで水分を拭い取る。
　使用したペーパータオルで蛇口を閉める。
■幼児の手洗いは監督者が手助けする必要がある。
　水が冷たいと、手洗いが不十分になる可能性もあるので、出来ればお湯が出ると良い。

牧場で注意すべき主な人獣共通感染症
　最も挙げられるのはＯ-１５７だと思います。Ｏ-１５７のキャリアは牛であることが定説化しつつあり、健康な牛の１５％前後の糞から検出さるといわれています。Ｏ-１５７は牛にとって定住菌ではなく、通過菌であると考えられています。
　Ｏ-１５７は、わずか100個足らずの菌が体内に入っただけで感染するので注意が必要です。特に注意を要するのは、妊婦、免疫機能低下者、５歳以下の乳幼児、知的障害を有する人、高齢者です。
　１番の予防方法は手洗いの徹底です。
　手洗い後、アルコール消毒することが多いと思いますが、アルコール消毒は万能ではありません。アルコールが効かない菌もあるので過信せず、必ずしっかりと手洗いをしてください。
　手洗いを確実なものにするためには、手洗い場を適切に配置しましょう。
　また、動物のエリアと非動物エリアはフェンスなどで物理的に区画し、動線が一方向になるような構造にするか、誘導のための標識を設置する。動物エリアの入り口には、動物由来感染症の予防に必要な情報の表示を行い、出口には、来場者に見合った手洗い施設を設けましょう。

「搾りたての牛乳をどうしても飲みたい！」どうする？
　■搾った牛乳をその場で参加者に飲ませてはいけない
　■手作り体験の原料は市販の牛乳を用いる
　■不特定多数へ販売・譲渡の場合は許可が必要（食品衛生法、乳等省令)

「このバタ−をお土産にする！」どうする？
　■原料は市販のものを使う
　■できるだけ屋根の下や、日陰で
　■良く手を洗う（次亜塩素酸・アルコール消毒も）
　■体験の順序を考える
　■作ったものは持ち帰らない
　■容器は加熱殺菌できるもの

トイレが足りない
　1人がトイレに行きたいというと、たいてい連鎖で数名行きたくなるので、事前に済ませてから来るように話をする。

アレルギーの発生
　牧草なのどのアレルギーは牧場に来てから判明するものもあるので、子どもの様子を注意深く見る様にしましょう。学校なら先生にも協力してもらって下さい。

牛を牧場外へ連れて行く
　出来れば、不特定多数の参加者が見込まれるイベントには連れて行かない。衛生上の動線の確保。特に決まりはありませんが、Ｏ-１５７の検査は可能な限り実施してください。体験前後の手洗いと靴底消毒をファシリテーターが必ず見届けること。

−質疑応答−
島田：学校へ出前に行った時、体験後の手洗いはどうしていますか？
参加者：私のところは、体験の最後に乳製品の試食をしてもらうので、必ず手を洗ってもらいます。「きちんと手を洗わないと食べられないよ！」と言うと子どもたちは真剣に洗います。
島田：引率の先生にお任せしないで、洗うところを必ずファシリテーターが見届けてください。

　消費者の方に乳牛、牛乳の温かさに触れてもらい、牛乳から酪農、食べ物へと興味が広がっていけばよいと思います。その為に皆さんにはしっかり安全衛生を守っていただきたいと思います。

最近では、子牛の下痢の原因について研究中。
昨年度よりスキルアップ研修会の講師を務める。
以下略歴
平成　８年３月　麻布大学卒業
　　　同年４月　岩手県遠野共済組合家畜診療所(現岩手県東南部共済組合)
平成１０年４月　千葉県農業共済組合連合会　南部家畜診療所
平成１４年４月　　　　　〃　　　　　　　　中央家畜診療所富津出張所
平成２４年４月　　　　　〃　　　　　　　　中央家畜診療所
現在に至る