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平成29年度 認証研修会(札幌会場)
−ワークショップー
平成29年度 酪農教育ファーム認証研修会(札幌会場)を開催しました。
酪農教育ファームファシリテーターの役割
上田 融 氏
NPO法人いぶり自然学校 代表理事


 NPO法人いぶり自然学校の上田融さんを講師に迎え、ワークショップを行いました。
 参加者自らが体を動かしながら、ファシリテーションとは何かを考えていきました。
 私は、苫小牧で「いぶり自然学校」という自然学校を運営し、子どもたちや親御さんたちに自然と触れ合う体験を提供しています。
 前職は教員だったので、野外で活動をするという真逆なことをしています。
 人から一方的に話されたことは伝わらないし、すぐ忘れてしまいますが、自ら発見・体験したことは忘れませんし、学びになります。それがまさにファシリテーションです。
 皆さんは今まで「ファシリテーション」や「ファシリテーター」という言葉に出会ったことはありますか? この言葉が生まれてだいぶ経ちますが、まだ世間の認知度は低いです。
 例えば、酪農教育ファーム活動においては、「食・いのち・仕事」の大切さを伝えることが、酪農教育ファームファシリテーターの役目だと思います。
 では、どうやって伝えたらよいでしょうか?
 方法は2つあると思います。言って聞かせる方法。これは学校の先生のやり方です。もう1つは、思わずつぶやいてしまう状況に導く方法。これは皆さんが目標とするファシリテーターのやり方です。
 もちろん、一方的に話すことを否定するわけではありませんが、参加者が学ばずにはいられない状況に導くことがファシリテーターの役目なので、この研修会後、皆さんもそうなることを目標にして頂ければと思います。
 
どうしたらなれる?
 ファシリテーターが人を促すには、言葉や文字で伝えるだけではだめで、脳と体を揺さぶるような体験が必要です。
 「バター作り体験やった。面白かった、おいしかった」ではだめなのです。体験を通して「気付いてほしい」に気付かせるひとひねりをプログラムに仕込むこと。「おいしかった、だから命が大切なんだ」と思わず口にだしてしまうような、技や理念が感覚的でも皆さんの中に入っていったら良い。
体験、ファシリテーション!
 人の脳は体験でしか成長しません。例えば、見ているだけでスケートが滑れるようになるでしょうか? なりませんよね。1度でも滑る体験をしないとできないのです。見るだけでは脳も体も発達しません。体を動かすことで脳が動くのです。

『アハ体験』
  スクリーンに映し出された1枚の絵の中にいる「人物」を探す「アハ体験」をしました。
※アハ体験とは、「あっ!」という不思議なひらめきを感じる体験のこと。

 最初はみんな席に座って見てました。分かった人からのヒントで身体を動かしたり、移動したりし、知りたいと思い自ら動きました。
 自ら動いたり、話を聞いたり、人と係わることこそがファシリテーションです。最初から、これが目で口で鼻…と説明したらそれで終わりです。
 でも、今皆さんが体験したアハ体験を子どもたちに体験させても同じようにはいきません。子どもの発達段階で興味関心が違うからです。発達段階に応じた体験を提供できるかどうかで、活動の質が変わってきます。意識的に行うかどうかがファシリテーターの腕です。
体験シナリオをつくる
素材をつくる
「牧場の面白いもの、一般家庭にはないもの」
1.牧場の面白いもの、一般家庭にはないものを、思い付くだけたくさん書き出してください。
2.書いた中で、似たものを分類します。

「子どもたちに体験後、言って欲しい一言」
1.幼稚園・小学校・中学高校・大学生・一般観光客の別に、体験後に言ってほしい一言を書き出す(帰りのバスでつぶやいてしまうくらいのテイスト)思い付くだけたくさん書いてください。
2.書いた中で、似たものを分類します。

 2つの素材が揃いました。この素材を組み合わせて、体験のプログラムを作ります。
「言ってもらいたい言葉」を選び、その為にはどんな体験を仕掛けていけばよいかを材料から選んで組み立てていきます。周りの人と相談して作ってもかまいません。カンニングもOKです。

人のプログラムを見て「いいね!」を付けよう
 人のプログラムを見て回り、共感できるところなどがあれば「いいね!」と書きましょう。また、もっとこうした方が良いなどあれば加筆してみてください。

ワークの中の仕掛け
1.プログラムが完成したら明日から使える、活動がさらに良くなる。
2.シナリオの考え方を示した。
3.私が教えを説いたわけではない、自分の中からのアイディアが出た。
 書き出した素材は、全てみなさんから出たものです。プログラムの加筆も、私が集めて採点したわけではありません。知恵を出し合いながら、互いを高め合った結果です。
 牧場での体験後にも、子どもたち同士で話し合わせる時間を設けても良いと思います。「次に来たらやりたいこと」などを書いてもらっても良いかもしれません。付箋にどんどん書いて可視化していく。傾向を分け、共有する。みんなで添削し合い、ブラッシュアップしていく。これもファシリテーターの技術のひとつです。
明日からファシリテーターとして〇〇をやります!
 明日からファシリテーターとしてやることを紙に大きく書いて宣言しましょう。
「先生と打合せする」、「従業員でやってみる」など、些細なことでも構いません。

○ はじめて牛に会った時に戻ってみる
○ 一言感想を貰って、まとめておく
○ 元の職場の保育園に行き、牛についての紙芝居などをしてみる
○ 私と牛との愛を深めて、見せつけられるようにする
○ スタッフとウシについて語ってみる!

 今宣言したことを一つの目標として掲げてもらえれば良いと思います。
 私は今日の縁を大切に、いつかみなさんの牧場に都会の子どもたちを連れていけたら良いなと思っています。その時にみなさんが私たちを上手にファシリテートして頂ければうれしいです。


NPO法人いぶり自然学校 代表理事 上田融(とおる)氏

昭和48年生まれ。
平成8年より北海道の小学校で6年間勤務。
平成14年より4年間、登別市教育委員会社会教育グループで社会教育主事として、ふぉれすと鉱山の運営に携わる。
平成18年よりNPO法人ねおすの活動へ参画し、道内各地の自治体と協働し、第一次産業の取り組みを子どもたちに体験的に伝え、学ばせるプログラム開発および協議体の設立に関わる。
平成20年より苫東・和みの森運営協議会副会長。平成27年より現職。
プロジェクト・ワイルドファシリテーター、小学校教諭1種、幼稚園教諭1種等の資格を持つ。
平成24、25、27、28年度に中酪研修会の講師を務める。
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