平成29年度 教育関係者対象・酪農教育ファーム研修会(兵庫県)
−講演・ワークショップ−
学習指導要領改訂の方向性ーアクティブ・ラーニングの視点による授業改善ー
國學院大學・教授 田村 学氏

 私たち教育関係者の本義は、今日、西山さんの話を聞いて学んだことや経験したことを、いかにして学校教育活動に落とし込むかというところにあります。どう活かせるか、一緒に考えていきましょう。
 新学習指導要領の変更点と、それを酪農体験の話をどう繋げていくかについて、お話しさせていただきます。
自信が持てない、日本の子どもたちの課題
 学習指導要領の改訂は、幼稚園、小学校、中学校、高等学校と連続したものとして進められました。
 子どもたちの学力低下が問題となっていますが、国際標準の学力テストや、学力学習状況調査の結果を見ると、日本の子どもたちの学力は上がっています。
 一方で、「高校生の生活と意識に関する調査」を見ると、日本の子どもたちは、諸外国の子どもたちよりも自己肯定感が低いという結果が出ています。つまり、学力は上がっているのに自信がないということです。また、国際数学・理科教育調査(TIMSS)の結果では、(授業が)楽しい、役立つという部分の数値が低くなっています。
 要するに、学力は上がってきたけれども自信はなく、授業は楽しくないし、役立つという感覚がないということになります。また、自分で考えて判断し、行動する点においても課題が見えてきました。
 今回の学習指導要領改訂は、近未来の子どもたちの社会も視野に入れています。
 近い未来、今の仕事の半分は機械やAIがやる時代がくるという話があります。型の決まった反復作業、単純な認識作業はコンピューターの仕事になって、逆に型の決まっていない非反復の、考えたり話し合いが必要な作業は人の仕事として増えていきます。
 そう考えると、これからの授業にどんなことが求められるのか、イメージがつくと思います。
自分で考え行動する力を身に付けたい
 学校教育のボリュームゾーンは「知識の習得」です。一方、実社会のボリュームゾーンは「思考力」です。社会ではチームの問題解決能力や、自分で考える力、コミュニケーション能力が必要なのにも関わらず、学校は知識の習得ばかりに目が向いている傾向があるということです。この辺が今回の学習指導要領の改訂の大きなポイントです。これには保護者の方も同じ考えを持っていて、アサヒとベネッセが行った共同調査は「社会で使える力を身に付けて欲しい」という結果が出ています。でも、だからといって、テストや受験がどうでも良いというわけではありません。実際に使える力かただの知識かを問われたときに、使える力を身に付けて欲しいという答えです。ただ単に知識の暗記だけをすればよい時代ではなくなってきているのです。
 今回の改訂では、「なにができるか」を最優先に考えました。このとき「アクティブラーニング」や「主体的・対話的で深い学び」というキーワードに光が当たります。
 アクティブラーニングを日本語に直すと、“能動的学習”です。身体を動かすということではなく、頭の中をアクティブにしてほしいということです。
 先生が説明する授業がだめというわけではなく、そういった授業の中でも子どもたちの頭の中がワクワクドキドキして、活性化しているかどうかが重要です。
 子どもが問いを持ち、課題意識を持って、先生の話を聞いたり教科書を読んだり友達の発言を聞きます。それを自分の中で考えて表現し、まとめるプロセスが大切なことです。昔の授業が暗記再生型だったとしたら、これからは思考発信型にチェンジしていこうということです。


アクティブラーニングについてのキーワードは3つあります。
1.プロセス(過程)
2.インタラクション(相互作用)
3.リフレクション(振り返り)
アウトプットの充実が重要(プロセス)
 例えば情報収集は社会科、インタビューやアンケートは国語、実験は理科、統計なら算数です。各教科の知識技能を繰り返し活用すると良いことがわかってきました。
 私たちの頭の中に入った知識は、最初はバラバラです。これを「単独形(知識)」と言います。バラバラの知識は活用すると繋がり、関連付いてきます。これを「関連形(知識)」といいます。この関連形の知識こそが思考力・判断力・表現力であることがわかってきました。
 
 ワシントン大学の生徒をターゲットに行った、スワヒリ語の習熟テストの結果です。4つのグループに分かれて、どのグループが早く身に付くかを実験しています。

グループ1:学習・テスト後、結果に関わらず全問を学習・全問をテスト…を繰り返す
グループ2:学習、テスト後、間違った問題だけ学習・全問をテスト…を繰り返す
グループ3:学習、テスト後、結果に関わらず全問学習・間違った問題のみテスト…を繰り返す
グループ4:学習、テスト後、間違った問題だけ学習・間違った問題のみテスト…を繰り返す

 テスト直後の結果に差はありませんでしたが、1週間後のテストでは差がつきました。グループ1と2が、3と4に比較して習熟度が高かったのです。つまり、前回のテストで正解・不正解に関わらず、全ての問題を対象に繰り返しテストすることで習熟度が上がるということです。
 この実験で、学習はインプット、テストはアウトプットを想定しています。この結果はテストをやればやるほど記憶が長く残るということではなくて、アウトプットすればするほど残るということです。人に説明をする、文章に書いてまとめる、話し合うなどといった活用がとても大ことだということがわかってきました。
話し合いの場を整える(インタラクション)
 インタラクションは話し合いです。
 話し合いは、学年が上がるほどうまくいきます。話し合いができないと言う先生がいますが、中学生は休み時間になれば話をしています。彼らは話し合いができているということです。重要なのは、そういう状況を私たち教師が整えているかどうかです。
 話し合いによる学び方をしてきた子どもたちの方が、学力が高いという結果も出ています。授業中じっと話を聞いていた子どもの方がテストの点がよいということでもなく、逆にずっと話していた方がよいわけでもないのです。
じっくり考え文字を刻む(リフレクション)
 リフレクションは熟考です。熟考場面を授業の中に取り入れたいということです。
 インタラクションは音声言語が中心ですが、リフレクションは文字言語を使います。授業のイメージとしては音(インタラクション)で拡げて、文字(リフレクション)で刻む感じです。丁寧なリフレクションをしていく必要があります。子どもたちが文字を書かないと言う先生方がいますが、子どもたちは書きます。大丈夫です。
牧場は能動的な学びの場
 授業中、姿勢正しく話を聞くのは大事なことですが、それで聞いたことを全て吸収していると思ったら難しいところもあります。でも、先生は自分が話したことが全て伝わっていると勘違いしがちです。だから先生は「わかりましたか」、「さっき言ったでしょ」とよく言います。しかしそれは先生側の理屈で、子どもたちが、どういう状況で学んでいるかを考えることが、学習者主体、能動的な学習なのです。
 牧場で西山さんの話を聞いて、牛に触れることは能動的な学びになると思いました。酪農体験を学習活動にどう位置づけたらよいか考えていきましょう。
ワークショップ
 講演に引き続き、田村先生の進行でワークショップを行った。
 午前中の酪農体験、西山さんの話、そして田村先生の講演内容を踏まえながら、新学習指導要領の中で、酪農体験が活かせそうな部分をグループに分かれて出し合った。

ワークショップのプログラム
1.グループ内で自分の担当教科を決める
2.新学習指導要領から、決まった担当教科で酪農体験が活かせそうな内容を探してアンダーラインを引く
3.調べた中で、どの内容が酪農体験を生かすのに適しているかをグループ内で決め、ベスト5を選ぶ
4.選んだベスト5の内容について、どのような学習活動が出来そうかをシートにまとめる
 ※1人1枚のシートに、校種、学年、教科名、内容、主たる学習活動を記入
5.出来上がったシートを壁に貼る。自分のグループ以外のシートから優れた学習活動であると思うものに投票(持ち点:1人5点)
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