スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



令和元年度 酪農教育ファーム『夏の研究集会』−実践事例発表04−
実践事例発表04
熊本県/有限会社富安牧場 富安 麻紀子氏
鹿児島県鹿児島市立平川小学校 尾場瀬 優一氏

 九州地域では、毎年「先生のための酪農体験会」を実施しています。今年度は、昨年度に引き続き、富安牧場に受け入れをお願いしました。富安さんは酪農をとても愛しています。酪農や牛への愛情を、参加者にたくさん問いかけてくれました。
先生のための酪農体験
 体験の時はまず、自分が呼んで欲しい名前を名札に書いてもらい、それぞれに自己紹介をしてもらいます。また、今日学びたいことを話してもらいます。
 初めに餌押しロボットや餌を混ぜる機械の説明をし、トラクターで牛ぎりぎりのところに餌を配るのを見てもらいます。機械の音はとても大きいですが、そこも体験してもらいます。
 次は搾乳室で、牛が出入りするところを見てもらい、そこから育成舎に移動し、おがくずや餌のタンク、実習生や酪農教育ファーム活動で来た人が泊まれる施設の説明、熊本地震があったので酪農家に絶対必要な発電機の説明もします。
 牛以外に馬やポニーもいるので他の動物の話もします。子牛への哺乳や乗馬体験もします。
 また牛を引く体験もしてもらいます。牛と一緒に歩く一体感を感じてほしいと思っています。首のところに顔をうずめると、みんな「くさい、くさい」と言うけれど、牛乳の甘いにおいを感じてほしいと思っています。においと同時に乳房についても話します。お乳が出る時はこれくらい張っているけど、出ない時はしぼんでいるということも触って感じてもらいます。
問題点&今後の課題
 酪農は今、人手不足で忙しく、異常気象の影響もあるなど、とても厳しい状況が続いています。家族型の酪農から大規模な雇用型の酪農になってきて仕事も分業化し、牛も牛乳を生産する機械のようになりつつあるように思います。酪農教育ファーム活動を行うのに、どう経営と折り合いをつけていくのかなどの問題もあります。また、来てくれる学校と物理的に距離がある場合、予算的な問題もあります。
 私自身、誰のために、何のためにやっているのかと思うこともあります。酪農家の自己満足で終わっているのではと思うこともあります。
 また、せっかく阿蘇地域で牧場をやっているのに阿蘇の先生たちはうちの牧場に来ていません。活動の周知の仕方にも問題があるように感じます。空港を降りたところに「酪農教育ファーム」と大きく宣伝があればいいなとも思います。
酪農家として、私が伝えたいこと
 生産者である自分にとっても、「命の大切さを伝える」ということがきついと思うことがあります。
 牛が好きでかわいいと思うから飼っているけれど、その命を絶つことも自分で決めている。毎回悲しくなります。生活のためと言うけれど、生活のためなら他の職種も選べると思います。
 牛乳を飲んでくれる消費者がいるから生産者は乳を搾れる、あなたたちがいてくれるから牛はこうやって楽しく生きていけるのだと伝えます。廃牛にしたり肉にしたりするのはつらいけれど、牛が命を持って教えてくれるから、それを子どもたちにきちんと伝えようと思います。それが嫌で辞めた酪農家もいます。私は、自分のせいで死んでいく牛がトラックに乗せられて行く事実から逃げずに、酪農を続けていきたいです。もっと牛が快適に過ごせるように努力したいと思います。
 「命は大切」などと偉そうには言えませんが、酪農家として苦しんでる部分をもっと伝えていけたらいいなと最近は思っています。
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