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平成28年度 酪農教育ファーム夏の研究集会−挨拶−
東京都教職員研修センター 
國分 重隆



 本日は、全国から多くの会員の皆様、酪農家の皆様にもお集まり頂きました。特に震災以降心配していましたが、熊本からも参加頂きありがとうございます。
 今、教育現場を中心に「アクティブ・ラーニング」という言葉が盛り上がっていますが、私は現場が「アクティブに学ばせなくては!」「主体的で対話的で深い学びをさせよう!」と、言葉だけに振り回されているような気がしています。
更に「深い学び」の為に「見方」「考え方」というキーワードも出ており、これも言葉だけが独り歩きし、目的を失い、方向性だけ先行しているような状況になっているのではないかと恐れを感じています。ひたむきに、真摯に学び続ける、それでも良いのではないでしょうか。
 今の子ども達に必要なのは、人としての生き方や、その素晴らしさに感動する「心」です。かけがえのない命を大切にする態度だと思います。それを疎かにしていたら、未来の社会はどうなってしまうのか。せめて、私達酪農教育ファーム研究会は、命の尊さを心で感じる事や、共にどう生きるかを真剣に考えられる、血の通った「食といのちの学び」を目指し、これからも貫いていきたいです。
 今日も私達の目指す「教育」を自信を持って推進していく為、価値ある時間を共有し、研究を通して酪農を大切に思う仲間の絆を深めていけたらと思います。

一般社団法人中央酪農会議 事務局長 
内橋 政敏



 私からは、酪農の情勢についてお話します。
 生乳生産の回復の遅れから、2年続いてバター不足が問題となっています。27年度の全国の生乳生産は3年ぶりに前年を上回りましたが、乳牛の頭数が前年より1万頭以上減少しており、今後の生乳生産は厳しい見通しです。
 今年は西日本を中心に猛暑が続き、九州では熊本地震と豪雨による水害がありました。
また北海道では天候不順によるデントコーンの不作の恐れもあり、これまで生乳生産が好調でしたが、28年度下期は影響が出るのではと心配されています。
 酪農にも大きな関わりのある、TPPの国会承認の問題、指定団体制度の規制改革の問題があります。今週、第3次安倍再改造内閣が発足し、高知出身の山本有二大臣が就任され、おそらく熊本の震災での九州生乳販連、指定団体が販売調整をして、生乳廃棄を極力抑えた事が念頭にあったのでしょうが、そうした調整を図りうる機能が他の団体には無いので、制度は基本的に存続の考えだと就任会見で話されたそうです。
 酪農の制度改革に関しては、酪農経営を安定させ、所得を向上させる目的の元に規制改革、制度の廃止等提言をしていますが、私たち、生産者団体も酪農家の経営安定のために組織の業務改善、見直し、合理化等スピード感を持って取り組まなければなりません。指定団体制度が発足して、今年で50年の節目になります。酪農家さんにとって指定団体は、搾った生乳をバルククーラーに入れてしまえば、あとは指定団体が販売し、乳代が振り込まれるので「空気」のような存在だという声も聞かれます。空気も薄くなるとその存在の大きさを実感します。
 生産、販売、加工、流通、それぞれの立場で、自分だけ得をしようとすれば、需給は不安定になり結果として正当な乳価を得られない状況になる恐れもあります。生乳の共販の意味、重要性、また制度が酪農を支えるだけでなく、消費者に、牛乳だけではなく国産の乳製品をしっかり供給する重要な仕組みであると、私たちも丁寧に、引き続き発信する必要があります。
 また、酪農教育をめぐる状況ですが、酪農教育ファームの活動に興味関心がある先生方は沢山いるのですが、予算、時間の問題、学校の方針等様々な制約があり、思うように出来ない状況があると伺っています。私たちは牧場や学校の場で、酪農を題材として、食、仕事、命を学ぶ機会としてこの活動に取り組んでいますが、教育現場の様々な制約がこの活動に影響しないか心配しています。
 今年で、夏の研究集会は6回目です。全国からお集まり頂き、それぞれ実践している先生の情報をこの場で共有、交流して頂きたいと思います。先生方のご協力で、この研究集会を開催する事が出来ました。今日の成果を持ち帰り、1人でも多くの方にご理解、ご協力、支援を頂けるよう、成果を上げて頂きたいと思います。

農林水産省食料産業局 食文化・市場開拓課 課長補佐
鈴木 徹氏



 私からは2点、ご挨拶を兼ねてお話致します。1つは、農林水産省の食育政策について。この政策に関しては、食育基本法と、基本法に基づき作成される食育推進基本計画に沿って行っています。これらは平成17年の食育基本法制定以来、今まで内閣府担当でしたが、本年の4月から農林水産省が担当することになりました。
 省庁が担当になり、特に農林水産省は消費者から生産者まで一貫した行政を行うので、より国民に添った、国民全体が連携しながら進める食育を行いたいと考えています。私が在籍している食料産業局は、生産物の消費拡大、輸入拡大、食品産業の振興等の生産振興に関わる局です。食料産業局が食育を担当する事で、生産者と消費者の信頼を確保しながら生産振興に繋がる食育を行えば、国民全体がウィンウィンになるのではと考えております。
 私は、教育ファームと食育関係の補助金を担当しています。本年度の補助金は和食と、食文化継承推進事業という名称になっており、これは食育に関する、皆さまが地域で行う酪農教育ファームの事業、活動についてほとんどカバー出来る内容になっており来年度も事業の公募をしますので是非ご活用下さい。
 2つ目は、食育推進基本計画です。食育推進基本計画は、食育基本法に基づいて目指すべき食育の目標を設定し、課題を皆様と共有する計画を立てます。今年3月から第3次食育推進基本計画に移行しています。第2次食育推進基本計画は11の目標に対し、13の指標を設定しており、主に食生活に関する国民の意識を向上させるという目標です。
平成27年度の目標年次に対して目標が達成したのは、2つで非常に残念な結果です。1つは、栄養バランスに配慮した食生活を送っている国民の割合を60%以上に、という目標に対し63.4%まで上回りました。一見、栄養バランスに配慮した食生活を送る国民が増えたので、良くなったように見えますが実際に分析してみると30代以下は栄養バランスに配慮していない、低い割合になっている現状もあり、今後、悪化する懸念があります。
 もう1つ達成できた目標は「農林漁業体験を経験した国民の割合」です。まさに教育ファームです。平成27年度に30%以上にする目標に対し、36.2%。大幅に達成出来ました。酪農教育ファームが非常に大きく貢献しているので、誇りをもって今後とも続けて欲しいと思います。食育に関しても達成出来た2つの内の1つに大きく貢献していることを考えながら、活動を行って欲しいと思います。改めて敬意を表します。
 第3次食育推進基本計画では、現状値36.2%に対し、40%の目標を立てました。この目標に関しては食育評価委員会、マスコミ等から評価が高く、中央酪農会議が今後継続的に事業を行えることを前提に積算した数値です。より一層、この会のご活躍を祈念し、私からの挨拶とさせて頂きます。
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