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世界の主要国で牛乳価格と乳価が値上がり
 ガソリン代替燃料の利用拡大によるトウモロコシ相場の高騰や、原油価格の値上がり、国際乳製品価格の急騰などをきっかけに、米国やEU主要国で牛乳乳製品の小売価格や生産者乳価を値上げする動きが表面化している。今号ではその動きを追った。

 EU主要国では、低乳価にあえぐ酪農家の乳価値上げ要求はピークに達していた。飼料費、燃料・動力費などのコスト上昇が値上げ要求の大きな理由だが、乳業メーカーを揺さぶった結果、乳業メーカーは小売店への納入価格値上げを実施、それを財源に酪農家の値上げ要求に応じる図式が出てきている。また、乳業メーカーが乳価値上げ要求に応じている要因には、乳業メーカーのコスト増を乳製品の国際価格急騰が吸収して乳業メーカーに財政的余裕もあるため。乳製品のうち粉乳の高騰に対応して、より多くの生乳を粉乳生産に仕向けるため、牛乳仕向けの生乳が不足しているケースもある。一方、米国も同様な要因で、生産者乳価と小売価格が値上げに動いている。
 いずれにしろ、酪農家から乳業メーカー、小売店段階までの値上げはコスト上昇と需給ひっ迫両面によるものだ。
 生産者乳価については、米国農務省(USDA)は6月11日に07年の平均生産者乳価が史上最高の1キロ当たり50円になるとの見通しを発表したことが話題を呼んでいる。また、EU最大の生乳生産国でEU乳業界をリードするドイツも6月1日から牛乳納入価格を1リットル当たり約13円値上げすることを決め、続いて7月から生産者乳価を1リットル当たり約5円値上げする動きを示し、隣国のベルギーやオランダの酪農家の乳価要求運動に弾みをつけている。また、EUで最も低乳価の英国も4月から6月にかけて乳価が上がり始めた。
 牛乳の小売価格と生産者乳価値上げをめぐる各国の状況は次のとおり。

米国の乳価はキロ50円
史上最高水準を記録
 USDAが6月11日に発表した最新の「世界の農業需給予測」によると、6月の米国の乳製品相場はかなりの高水準と予測しており、この結果、07年の平均生産者乳価は100ポンド(45.359キロ)当たり18.55〜18.95ドル(約2226〜2274円。1ドル120円換算。1キロ当たり約49〜50円)という新記録を予測している。
 また、USDAは、07年の牛乳小売価格について、前年比3%程度値上がりすると予測している。これに対して、イリノイ大学の酪農専門家・マイケル・ハッチェン氏は「今後2〜3ヵ月以内にそれ以上の大幅な値上がりになる」と予測、2〜3ヵ月後の牛乳の全国平均小売価格は1ガロン(3.785リットル)当たり3.78ドル(約454円。1リットル約120円)で、現在より40セント(約48円。1リットル約12円70銭)、12%高と予測した。

独は牛乳価格を8セント
乳価を3セント値上げへ
 ドイツは5月に牛乳小売価格と生産者乳価の値上げで、それぞれ大きな動きがあった
 ドイツの酪農家2万人は5月9日、酪農協系大手乳業のノルドミルヒをはじめ、フマーナ、ミルヒユニオン、ミュラーなどに、生産者乳価を現在の1リットル当たり27ユーロセント(約44円28銭。1ユーロ164円換算)から48%増の40ユーロセントにするよう一大デモを展開した。40ユーロセント(約65円60銭)の要求は、3年連続してのもので、EU酪農民共通の運動。
 一方、大手乳業各社はディスカウントチェーンなどと牛乳納入価格値上げ交渉を行った結果、5月中旬に「6月1日からスタートする営業年度から1リットル当たり8ユーロセント(約13円12銭)、平均15%以上値上げする」ことが決まった。店頭価格は10ユーロセント(約16円)値上げされるとみられる。
 ドイツ酪農連盟はこの決定に対して、「生産者乳価は7月から1リットル3ユーロセント強(約5円)値上がりして30ユーロセント台(約50円)になるだろう。しかし、3ユーロセント強の値上げではまだ生産コストをカバーできないので、納入価格値上げ分の8ユーロセント全額が必要」として、当初から要求している「1キロ当たり生産者乳価40ユーロセント実現」の旗は降ろしていない。

ベルギーも牛乳価格
15〜23%値上げへ
 ドイツの隣国・ベルギーの小売業界は、ドイツで決まった牛乳小売価格値上げを参考に、値上げに動き出している。同国の新聞が5月31日に報じたもので、大手スーパーは乳業メーカーとの牛乳納入契約更新に当たり、牛乳納入価格値上げを受け入れ、値上げ分を店頭価格に転嫁するといわれている。
 ドイツ同様、店頭価格を1リットル当たり10ユーロセント値上げすると、安売り牛乳で23%高の54ユーロセント(約89円)、標準的な牛乳は15%高の75ユーロセント(約123円)になるとみられている。
 ベルギーの牛乳値上げ理由は、乳業メーカーの燃料代や包装資材などコスト急上昇によるものだが、ベルギー独自の理由も抱えている。というのは、ベルギーの生乳生産量は300万キロリットルで、通常はこのうち120万キロリットルを粉乳生産に向けている。しかし、最近の粉乳の国際価格急騰に伴って、より多くの生乳を粉乳生産に仕向けているため、牛乳に仕向ける乳量不足が加速しているからだ。粉乳増産が続けば、牛乳だけでなく、他の乳製品価格にもドミノ現象を起こすと予想されている。

オランダは酪農家が街頭で消費者に訴え
 ドイツの2万人デモに呼応して、オランダの酪農民400人も5月9日、酪農協系大手乳業のカンピーナとフリースランド・フーズの本社があるザルトボンメルとメッペルの街頭で生産者乳価値上げを消費者に訴えた。オランダ酪農会議のスポークスマンは「牛乳の販売利益はスーパーが多くを占め、酪農家には正当な分配が行われていない」と述べている。

英国は大手の6社が牛乳、乳価を値上げ
 ロバート・ワイズマン・デアリーズ(上場会社)は5月1日から生産者乳価を1リットル当たり19.51ペンス(約46円82銭。1ペンス約2円40銭換算)に値上げした。2月に比べ0.76ペンス(約1円82銭)高となった。4月、5月にクリーム価格が値上がりしたためで、同社に直接生乳出荷している750戸に支払われた。
 ミルク・リンク(酪農協)は5月1日に、4月1日にさかのぼって1リットル当たり0.75ペンス(約1円80銭)値上げした。値上げ理由は脱脂粉乳とホエイ価格の上昇によって利益が増加したため。
 アーラ・フーズUK(酪農協系)は生乳出荷酪農民組織・AFMPに6月1日から1リットル当たり0.4ペンス(約96銭)を値上げした。この結果、標準的な乳価は19.8ペンス(約47円52銭)となる。バターと粉乳価格が上昇しているためだが、大手スーパーのアスダやテスコとの取引改善でAFMPの約6割が8月からさらに上乗せ乳価を約束されている。
 ファースト・ミルク(酪農協)は5月初めに、5月1日から1リットル当たり0.6ペンス(約1円44銭)値上げすると発表した。飲用牛乳の利益増加が理由。さらに、5月下旬に、5月1日からさらに0.15ペンス(約36銭)上乗せし、合計0.75ペンス(約1円80銭)値上げになると発表した。上乗せ分はホエイと粉乳の利益増による。
 デアリー・クレスト(上場会社)は飲用向け乳価を4月1日から1リットル当たり0.25ペンス(約60銭)値上げした。同社は「牛乳納入価格の値上げ分をすべて酪農家に還元した」としている。
 また、英国で大手3社の1つのデアリー・ファーマーズ・オブ・ブリテン(DFB。酪農協)も小売店への納入価格引き上げにより、生産者乳価を6月1日から1リットル当たり0.5ペンス(約1円20銭)値上げし、さらに、7月1日から0.25ペンス(約60銭)を再値上げする。

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