スゴいぞ!牛乳。飲んだら、ええよう。  >>>                             



2005.SUMMER Vol.27
VOICE

 中国や米国の好景気に支えられた輸出が好調に拡大し、緩やかな回復の動きに転じたものの、家計や雇用の改善は限定的であり、原油価格の高騰と円高の進行から、本格的な景気回復には至らず、依然厳しい状況が続きました。
 WHO農業交渉は7月に枠組み合意がなされ、上限関税や関税の引き下げ率、センシティブ品目の取扱いなどの交渉が進められることとなったほか、FTA(EPA)交渉についても、メキシコに続き、フィリピンとも実質合意に至り、アジア諸国を中心として他の地域にも拡大する動きが活発化しました。
 「食料・農業・農村基本計画」及び「酪農肉用牛近代化を図るための基本方針(以下、酪肉近)」では、国際化の進展や食料自給率の向上などの課題を踏まえ、酪農家段階の生乳生産コストの低減、集送乳等経費の削減、乳製品及び牛乳の製造販売コストの削減について数値目標が設定されました。
 米国におけるBSEの発生、国内外における高病原性鳥インフルエンザの発生等を受け、内閣府、厚生労働省、農林水産省は、各種法律の制定や改正を実施しました。
生乳生産は、全国で前年度比98・6%と前年を下回りました。また、生乳需給は記録的な猛暑に恵まれたにも関わらず、健康志向に応えた他飲料との競合が厳しく、前年を大きく下回って推移しました。また、脱脂粉乳の在庫は自主的な2・2万トンの対策が実施されたことから、前年同月対比で5・2千トンの削減となりましたが、依然高い水準となっています。
 広域指定団体は配乳権の完全集約、集送乳等の合理化などで販売経費の削減を進めるなど、平成18年度を目標年度とする中期計画を策定しました。
 度重なる台風の上陸や新潟県中越地震などの自然災害に見舞われたものの、乳価の安定やコスト削減の努力によって酪農経営は比較的安定に推移しました。しかし、本格化する国際交渉への不安、畜産環境規制の影響、生乳需給の緩和状況等を背景に、高齢化や規模拡大の制約による酪農家戸数、及び飼養頭数の減少が継続しました。
以上のような酪農情勢のなか、中央酪農会議(以下、中酪)は、平成16年度のわが国酪農の安定的な発展と生産者組織の機能強化を図るため、7つの重点事項を設定し、以下の事業を実施しました。
 WHO等国際交渉の帰趨や新たな「食料・農業・農村基本計画」は、今後の酪農乳業のあり方に大きな変化をもたらす可能性もあることから、酪農基本対策委員会を開催し、新たな「酪肉近」に対する提言をとりまとめ、政府に要請を行いました。
 平成16年度の計画生産は、日本酪農乳業協会で策定された牛乳等向け需要予測量に、脱脂粉乳の在庫を積み増さない水準の乳製品向け生乳需要予測量を加えた量を基礎として「販売基準数量」を設定しました。  
指定団体別設定は、飲用牛乳等向け及び乳製品向けの用途別販売実績に、それぞれの需要量の伸び率を乗じて算出した数量をシェアに応じて配分しました。  また、ホクレンが実施した新規用途仕向け及び飼料用仕向け脱脂粉乳用の生乳販売に対し、脱脂粉乳対策枠を追加設定しました。  
生乳生産の実績は、北海道が夏季以降、減少基調で推移し、都府県においても、積極的な乳牛導入を行った九州以外は、猛暑に加え自然災害の影響等から、前年度比98・5%と、いずれも計画生産の範囲内におさまり、脱脂粉乳在庫は前年同月対比5・2千トンの減少となりました。
 平成16年度の飲用向け乳価は、実現可能な水準として現行価格以上、加工原料乳価は北海道に準じた価格を基本に、積極的な交渉が行われ、夏までには各指定団体が、概ね前年並みで決着しました。  
さらに、消費者ニーズ等に沿った乳成分取引の見直し・適正化について重点的に協議検討し、1対象は飲用牛乳向け生乳、2乳成分単価は現行の50%程度にし、引き下げによる残余財源を基本乳価に取り入れることを基本にとりまとめ、17年度以降の取引に概ね反映されることとなりました。
 広域指定団体は、中酪の中期目標を受けて、平成18年度を目標として、生乳販売機能の集約、集送乳経費及び乳代のプール化の促進、生乳検査体制・統一乳質基準の策定、生乳取引の合理化・統一化、組織財政基盤の確立、情報開示を内容とする中期計画の策定が進められ、中酪は、計画の円滑な策定に必要な支援を実施しました。
 国・農畜産業振興機構の支援を得ながら、中酪を通じて補助された平成16年度の各種補助事業は、総額180億円となりました。 「土地利用型酪農推進事業」では、搾乳量から換算した頭数から実頭数に改め、飼料面積ゼロ農家を事業対象から外し、より飼料基盤に立脚した酪農経営を支援したほか、国産ナチュラルチーズの生産振興を図るための「酪農安定特別対策事業」、液状乳製品の需要を拡大するための「液状乳製品生産拡大促進事業」、はっ酵乳及び乳酸菌飲料向け生乳取引の推進を支援する事業を実施しました。さらに、BSE発生農家に対する互助システム事業を実施しました。
 牛乳消費の回復をテーマにした新聞広告の実施や、消費者と生産者を結ぶミルククラブ活動の推進、教育ファーム活動や「地域交流牧場全国連絡会」活動への積極的な支援や取り組みを行いました。また、指定団体や農協等が実施する酪農村都市交流活動や指定団体の機能強化に必要な事業に対し、補助を行いました。
 生乳の流通段階におけるトレーサビリティシステムのあり方、生乳の総合的品質管理体制の構築について検討を行い、重点管理基準とその有効な指導方法、及び体制についてとりまとめを行いました。  また、生乳の検査手法の統一や検査の標準化等に資する検査方法・機器等について検討を行ったほか、精度管理の向上を中心とした研修会や検査技術の習得・向上を図るための講習会を開催するとともに、新校正乳の配布により精度管理・キャリブレーションの実施に資するようにしました。  さらに、良質生乳生産・低コスト化等の乳質改善対策に関する講習会を3カ所で実施しました。



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