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2003.SPRING Vol.18
VOICE


 平成14年度飲用乳価交渉においては、
1.BSEの影響により酪農経営が悪化していること、
2.消費が拡大しない中で、飲用牛乳の廉売合戦(シェア争い)が続いていること、
3.乳業協会中山会長(当時)より、乳価値上げを契機とした飲用牛乳の小売価格の適正化(販売環境の是正)を示唆するとも受け取れる発言がなされたこと、
4.平成16年11月の家畜排せつ物法の本格施行に向けて、ふん尿処理に係る施設整備への新たなコストが発生すること等を背景に、全ての指定団体・全国連が実質「5円以上」の値上げを乳業者に要求しました。

 14年度当初は、指定団体からの乳価の大幅値上げを背景に、乳業者による量販店等への納入価格改定(引き上げ)の動きが出てくることを期待していましたが、その動きは鈍く、納入価格改定への動きは活発化せず、交渉は長期化しました。こうした状況を踏まえ、飲用牛乳の需要期である夏頃から各指定団体では、牛乳の納入価格ひいては小売価格の適正化が図られるよう、量販店等に対する酪農経営の厳しい実態の説明や、新聞広告、ビラ配りなどの運動を展開しました。

 こうした地道な活動を続けた結果、9月には市乳販売トップメーカーより一部指定団体、全国連に対して、同社が14年度より全国展開した新商品のヒットによる利益を原資に「1円未満の小幅な値上げ」を行う旨の回答がありました。この回答は、当初、14年度限りの奨励金としての取扱いでしたが、その後の交渉により撤回され、指定団体においてはこれまでの交渉経過を踏まえ、15年度以降の大幅値上げに向けた「通過点」として、受け入れるところが出てきました。

 指定団体・全国連は、市乳販売トップメーカーとの交渉後、他の乳業者との交渉を再開。10月下旬以降には、「7月〜9月の奨励金として1円程度の支払い。これを10月以降支払うと50銭/kg程度に相当」との回答が引き出されましたが、指定団体では、奨励金の取扱いについて反発し、最終的には「9月以降に基本乳価の引き上げを行う」という内容で、大多数の乳業者とは交渉が決着する方向に向かいました。  しかし、一部大手乳業者では、季節別乳価の導入に固執し、指定団体では、14年度も年末に近づいているという状況も踏まえ、季節別乳価の取扱いについて15年度以降の課題としつつも、受け入れる流れができました。この結果、一部の取引を除いて平成14年度乳価交渉は終息することとなりました。

 平成14年度乳価交渉においては、全ての指定団体が大幅値上げ要求を掲げたものの、決着内容は1円以内の値上げという小幅なものとなりました。乳価の大幅値上げを実現するためには、乳業者において、必要な原資の獲得を図るため量販店等への飲用牛乳の納入価格の改定が必要になります。乳業者において、「値締め」という形で安売り是正の動きは出ましたが、最終的な納入価格の改定が実現できなかったことが課題として残りました。

 また、乳業者の回答については、年間同一乳価という従来の価格体系のなかでの値上げと季節別乳価の導入を通じた値上げと、性格が異なるものとなり、今後、乳価体系のあり方について検討・整理が求められることとなりました。

 更に、実質乳価交渉のプライスリーダーの役割を担っている大手乳業者において、地方の工場・支所などでは、実質的な乳価の決定権を委任されていないため、指定団体とこれら大手乳業者の地方機関との間では、交渉が進まないという問題点も浮き彫りになりました。

 これらの課題を踏まえ、中央酪農会議に設置している生乳取引等委員会においては、15年1月から2月にかけて、15年度乳価交渉に当たっての意見交換を行いました。この場で、指定団体からは、当初、「実現可能な乳価を要求すべき」とする意見と、「昨年度からの交渉経過を踏まえ、引き続き大幅値上げを行うべき」とする意見に分かれていましたが、最終的には「将来に向け、十分に生産意欲を喚起し得る乳価水準をめざすべき」とする意見が大勢を占めることとなりました。

 具体的な各指定団体の要求水準は、1月下旬から3月上旬にかけて、各指定団体が生乳受託販売委員会や理事会等を開催し、協議・決定する予定になっていますが、平成14年度の要求水準を引き続き要求する指定団体が趨勢を占めています。

 平成15年度乳価交渉については、脱脂粉乳在庫の増加が懸念されるものの、都府県においては、依然、飲用牛乳需要の好調や醗酵乳・飲料関係への生乳使用の流れなどもあり、生乳需給が逼迫することが見込まれます。こうした状況のなか、指定団体によっては、生乳販売について乳価の高いところから優先配乳を行う有利販売を模索する指定団体も出ています。また、昨年度に引き続き、生産者団体間の連携による、飲用牛乳の販売環境の是正に向けた取り組みも予定しています。

 しかし、一方では、WTO農業交渉において議長案が出されたモダリティの決着の内容によっては、中長期的に日本酪農にとって非常に厳しい事態も想定され、こうした外部環境の変化が今日、どのような影響を与えるのか、予断を許さない状況にあります。

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