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2000.WINTER Vol.5
VOICE
中酪事業ガイド




 去る11月10日、東京・新橋の第一ホテル東京で開かれたコンテストは、初回平成10年2月に続く第2回目。 全国に点在するナチュラルチーズ生産者や流通・販売業界、外食産業など関係者が一堂に会しました。
 国産ナチュラルチーズの消費拡大をめざし、専門家を交えた製造技術の向上や生産者相互の意見交換を進める当コンテストには、「平成11年度生乳需給研修会」プログラムの一環として、指定団体の担当者も参加・見学。会場には、メーカー・牧場など国内38団体から計94種類ものチーズが出展され、表彰式後は研修者も交えた試食の人々で賑わいました。


製造・流通関係者と
 今回は、同日朝より開催された「平成11年度生乳需給研修会」の日程にコンテストへの参加を組み入れるなど、研修においても新しい試みとなりました。
 伊佐地誠、中酪専務理事による「酪農情勢報告」では、不足払い制度の改革、生乳需給の低下、飲用牛乳の過度の脂肪偏重の抑制など、酪農情勢の厳しさと政策面での一大転換期が指摘されましたが、そうしたなか、国産ナチュラルチーズ生産の増加は、業界全体の明るい話題です。
 しかしながら「国産ナチュラルチーズは国内消費の16%」と西原高一・中酪副会長が指摘する通り、さらなる消費拡大への取り組みも望まれるところです。チーズに関する特別講演や表彰・試食会場では、研修者からも活発な質問が相次ぎました。今後もこうした関心の高さを背景に、全国規模でナチュラルチーズの生産や販売促進を盛り上げていくことが必要といえるでしょう。


日本の風土に合った、個性のチーズ作りへ。
 コンテストでは7名の国内審査員のほか、イタリアより特別審査員として、マッシリミリアーノ・パガニ氏(コラム参照)、グラナ・ブルーノ氏(ラショナル・ノベーゼチーズ工場長)を迎え、ハード、ソフト、フレッシュ他の3部門毎に優秀賞を決定。さらに金賞及び特別各賞が選ばれ、特別講演の後、会場にて表彰式と試食会が行われました。
 村山重信審査委員長(フランスチーズ鑑評騎士の会、チーズ専門最高位を獲得)は「大変楽しかった」と審査を総評。甲乙つけがたい僅差での選出となり、「舌につき刺さるようなシャープなうま味があっても良かったが、黒カビ系を使った冒険的な作品もあった」など、出展者の意欲が評価されました。
 一方、前回出展の牧場仲間に聞いて初挑戦した生産者は「出せて嬉しかった!次は白カビ系で大きなチーズを」と意気盛ん。コンテストの波及効果を伺わせる一幕でした。また飲食業関係者は「地方工房の製品に出会う機会がないので、毎年開催して欲しい」。「万人受けするものより、食後に出せる日本ならではのものを」と語り、熱心に見て回る姿が印象的でした。




■農林水産省畜産局長賞
■金賞 ハードタイプ部門


●新生酪農(千葉県)「ゴーダチーズ」

■農畜産振興事業団理事長賞
■金賞 フレッシュタイプ部門


●(財)蔵王酪農センター(宮城県)「フレッシュモッツァレラチーズ」

■金賞 ソフトタイプ部門

●(有)カシユニふうど工房槲館(北海道)「大地のほっぺ」

■審査委員特別賞

●(有)カシユニふうど工房槲館(北海道)「槲(かしわ)」

■優秀賞 ハードタイプ部門

●(有)半田ファーム(北海道)「ルーサン」
●(有)半田ファーム(北海道)「オチャード」
●(有)ハッピネスフロマージュ(北海道)「ラクレット」
●(有)クリーク花畑牧場(北海道)「花畑牧場のトム」
●ひがしもこと乳酪館(北海道)「ひがしもことゴーダチーズ」
●(株)みちのくグリーン牧場(福島県)「手づくり生チーズ山木屋」
●秩父乳業(株)(埼玉県)「秩父手づくりチーズ」
●木次乳業(有)(島根県)「きすきプロボローネ」
●木次乳業(有)(島根県)「イズモ・ラ・ルージュ」

■優秀賞 ソフトタイプ部門

●よつ葉乳業(株)(北海道)「カマンベール」
●よつ葉乳業(株)(北海道)「ハイファットブルー&カマンベール」
●(有)アドナイ(北海道)「タレッジオ・ディ・のぞむ」
●農事組合法人共働学舎新得農場チーズ工房(北海道)「マンステール」
●農事組合法人小川原湖農場(青森県)「レイクファームブリーチーズ」
●佐渡農協ミルク工房(新潟県)「カマンベール」
●東毛酪農業協同組合(群馬県)「TOMOカマンベール」
●(財)神戸市緑農海浜公社六甲山牧場(兵庫県)「神戸チーズ」
●木次乳業(有)(島根県)「カマンベール・イズモ」

■優秀賞 フレッシュタイプ部門

●(有)カシユニふうど工房槲館(北海道)「リコッタ」
●(有)カシユニふうど工房槲館(北海道)「モッツァレラ」
●(有)クリーク花畑牧場(北海道)「花畑牧場のモッツァレラ」
●農事組合法人共働学舎新得農場チーズ工房(北海道)「モッツァレラ」
●(有)アドナイ(北海道)「マスカルポーネ」
●ひがしもこと乳酪館(北海道)「ひがしもことスモークチーズ」
●(財)蔵王酪農センター(宮城県)「ホワイトザオー」
●佐渡農協ミルク工房(新潟県)「クリームチーズ」
●(有)レチェール・ゆげ(弓削牧場)(兵庫県)「フロマージュ・フレ」


受賞者インタビュー
 「ありがとうございます!日本でもおいしいチーズが根づいていけるよう、地道に努力して来ました。社員の力の賜物だと思います。本場北海道でなくても、千葉の牛乳でもおいしく作れるという、今後の励みが出来ました。一層の努力を続けます。」
 生活クラブ生協の牛乳工場としてチーズの試作に10年以上、本格的に取り組んだのは6年前という同社。首都圏近郊から生まれた日本一の快挙に、チーズ作りの機運をますます盛り上げていくそうです。

特別講演
イタリアD.O.P
パガニ氏  「一つ一つの食材は発生地に強い絆を持ち、世代から世代へとその製造が受け継がれ伝統食品となっています。チーズの王様といわれるパルミジャーノ・レジャーノも、パルマとレッジョ・エミリアで生まれたため、発祥地の名前に由来しています。
 こうした特産の食材は、1954年のイタリアの食品法及び1992年のEU(欧州連合)の基準法によって認定され、さまざまな法規により広く保護されております。
 EUにおいては、特定の食材/食品がD.O.P(特定原産地保護呼称)で保護されるため、D.O.Pチーズは、その原産地で生産された乳を用い、その地で製造されたものでなくてはなりません。
 これらの製品が評価されることで、社会的、また環境保護上、さらに郷土意識に重要な影響を与えたことも事実であります。
 こうした保護規制によって、どんどん過疎化する狭い峡谷の村といった、人が居つかないような地域においても、製造業を保証しローカルメーカーの収入維持が可能となり、人々は豊かな暮らしを営むことが出来るのです」。
 パガニ氏に続いて、D.O.Pチーズの品質管理におけるイタリア独自の管理機関や保護協会のシステムを解説。保護協会は国から権限を委譲された、製造及び営業販売における厳しい監視役だということです。
 「イタリア国内でのチーズ年間総合生産量は982,000tにのぼり、うち400,000tがD.O.Pチーズで、今日30種類あります。牛乳の年間生産量は約1,100,000tです」。このD.O.Pチーズは乳、凝乳酵素、塩のみを原料とし、他のものを添加してはならないとも定められているそうです。
 ちなみに、全脂肪の牛乳で作られたソフトチーズのタレッジオの起源は10世紀頃。また西暦1200年頃、修道僧たちが余剰牛乳の長期保存を考えるうちに出来上がったとされるのが、ハードチーズのグラナ・パダーノ。食の王国イタリアのチーズ文化の長い歴史は、その厳正な管理基準により、原産地ぐるみで守られ続けているようです。


チーズの楽しみ方
山本 益博  「例えばピッツァ一つとっても、以前はピザ、とアメリカから入ってきた呼び方でした。今はイタリアで学ばれたり食べられた方によって、ピッツァという言葉が定着してきましたね」。20数年前、フランスの三星レストランのメニューに各地のチーズが揃っているのを見て驚いた山本氏は、当時を振り返り、現在のチーズブームは隔世の観があるそうです。
 「アントレ(前菜)とは料理の入口のことですが、そのメニューの出口のところにチーズと書かれてあったわけです。フランス人は、チーズを食べないと食事が終わらないのだと痛感しました。私は家で、デザートにチーズを果物と一緒に食べます。熟成した洋梨と合わせたりしますが、こういう楽しみ方が皆さんの食卓にあってもいいのではないでしょうか。
 ですがその果物にしても、蜜リンゴとか、甘いものがいいという傾向があります。甘酸っぱい果物本来のおいしさを、日本人は忘れてしまったのではないでしょうか。私は、本物の最高を知らなければものはいえない、と考えています。だから産地まで出かけますが、チーズにしても今日、審査をしていて風味がやっぱり足りないと感じました。
会場に入ったとたん、むせ返るようなチーズの発酵する香り、そんなチーズをどなたか作っていただきたい。ものの味わいの80%が香り、香りが命だと思っています。21世紀は香りの時代、日本にそうしたチーズが生まれて欲しいと願っています」。





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