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2000.WINTER Vol.5
VOICE






次期WTO交渉に向けて

 去る11月27日(土)〜28日(日)の2日間にわたり、カナダ・バンクーバー市において世界酪農生産者円卓会議が開催されました。
 この円卓会議は、11月30日からシアトルにおいて開催されたWTO・閣僚会議および11月29日に行われた世界家族農業者サミットに先駆けて、国際農業生産者連盟・酪農部会(IFAP・GDP)と国際酪農連盟(IDF)の主催により、各国の酪農関係者を参集して開催されたもので、世界の酪農生産者団体が一堂に会し、特に次期WTO交渉を中心とする関心事項について意見交換を行い相互理解を深めることを目的としていました。日本からは中央酪農会儀が代表として出席し、日本の立場を主張しました。




国内生産の確保のため『緑の生策』を維持せよ。

 この円卓会議には、日本をはじめアメリカ、カナダ、フランス、ニュージーランドやオーストラリア、アルゼンチンなどの酪農国はもとより、これから酪農の進行を図ろうとする中国、フィリピン、ブラジルなど中南米やアフリカ諸国を含め、世界27カ国から約100人の酪農家代表、酪農団体代表が参加しました。
 会議は2日間にわたり、第1セッション「農家の所得」(農家の市場パワー、所得確保、輸出対国内市場)、第2セッション「農業に関する合意の理解と次期ラウンド交渉への期待」(開発途上国の期待、衛生的・植物防疫的手段と貿易へのテクニック障害、貿易と環境保全問題、輸出補助金、市場アクセス、国内支持)の2セッション、9つの議題に分けて、全員が同じテーブルを囲む円卓方式で自由な意見交換が行われました。
 この会議には、日本からは、中央酪農会儀の平野事務局長が代表として正式参加したほか、日本酪農政治連盟の有元副委員長などがオブザーバーとして参加しました。平野事務局長は、27日の第1セッションのうち「所得の確保」の議題に関して基調報告を行ったほか、輸出対国内市場、輸出補助金、市場アクセス、国内支持の4つの議題で日本の酪農団体として、次のような意見表明を行いました。
 「所得確保」での基調報告では「日本では自由市場のもと牛乳価格は量販店頭のバイイングパワーにより低下を余儀なくされ、その結果、生乳価格も低下し酪農家の減少をもたらしている。自由市場で価格が変動(多くは下落)するなかで、農家の所得を確保するためには、価格の下落等で所得が減少した際には、食料安全保障上必要な一定の農業生産を確保し、また農業の持つ多面的機能を発揮させるためにも、直接補助金により、所得を保証する必要がある。それは、今後ともWTO協定上の『緑の政策』とすべきである」等でした。
 また、輸出対国内市場問題では「各国とも国内市場で利益を上げることを基本とすべきで、過度の輸出依存は望ましくない」。輸出補助金では「輸出補助金は撤廃ないし大幅削減すべきである」。市場アクセス問題では「現在でも輸入乳製品により市場は狭められているので、市場アクセスは現状程度とすべきである」。国内支持問題でも「国内支持は国内酪農を守るために、さらなる削減を行うべきではない」等でした。




アメリカ、カナダが日本の考え方に賛意を表明。

 会議では、議題によっては予定時間をオーバーするほど活発な意見交換が行われましたが、輸入国側(日本、EU、カナダ、アメリカ)と、輸出国側(ニュージーランド、オーストラリア、アルゼンチン)との間で、輸出補助金や市場アクセス、国内支持の問題を中心に、見解に大きな相違が見られましたが、酪農という性格上、EUはもとより、農業全体では輸出国の立場にあるアメリカやカナダも輸入国の立場に立って日本の考え方に賛意を表明したことが特徴的でした。また、開発途上国からは、乳製品の輸入、還元乳の製造が国内酪農の成長を阻害しているため、乳製品の輸出を自粛するべきであるとの意見も出されました。さらに、関税や補助金の問題のほか、技術支援、システム支援、経済的支援などの支援のあり方について意見が出されました。



酪農、牛乳・乳製品は一定の保護・支持が必要、が大勢を占める。

 環境保護問題では、EU側よりGMO(遺伝子組み替え)やSPS(成長ホルモン)等について、消費者は明確な表示を望んでいるとの見解が表明されましたが、アメリカは科学的に非安全性が明確になっていないと消極的な態度を示していたことが注目されました。
 この会議は、結論を出すような性格のものではありませんでしたが、酪農、牛乳・乳製品の分野に限っては、一定の保護・支持等が必要であり、自由競争は望ましくないという雰囲気が、アメリカ等を含め、大勢(一部輸出国を除く)を占めており、その点では、日本の主張が理解されているということが出来ます。




今後、現行以上の輸入促進、国内支持等の削減とならないよう、運動を展開。

 なお、新聞等で報道されている通り、次期WTO交渉の枠組みを決めるシアトルの閣僚会議では、各国間の意見の相違により方向づけを打ち出すことは出来ませんでしたが、いずれにせよ、前回の協定に基づき、農業問題については期限が切れる2001年の1年前の2000年1月より交渉が開始されることになっていますが、私たち酪農団体としては、関係者と一体となって、現行以上の輸出促進、国内支持等の削減とならないよう、対策を展開して参りたいと考えております。


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