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1999.AUTUMN Vol.4
新たな酪農・乳業対策大綱において、ひとつの重要な柱となっているのは、日本酪農を持続的・安定的に展開するための「日本型畜産経営継承システム」を構築することです。このため、農水省畜産局は、学識者による検討委員会(座長:菱沼穀(社)家畜改良事業団参与)を設置し、本年1月より検討を進めてきました。この度その最終的とりまとめが公表されましたので、今号ではその概要をご紹介します。
第三者への経営継承により大切な生産基盤を守る。
後継者不在の農地や施設等は、わが国にとって、これ以上失ってはならない貴重な資源です。 必要な生産量を確保し、地域振興の基幹産業として発展させるためにも、その円滑な継承が求められて います。このシステムでは、就農を希望する第三者を、後継者のいない酪農家の経営継承者として育てていくことに、主眼が置かれています(図1)。特に、後継者がいない酪農家の経営を、健全なかたちで、かつ中断させることなく継承していくことは非常に重要です。
新規就農希望者と経営委譲希望者を結びつける。
国内各地の生産基盤を、次代の新たな担い手へと引き継いでいく。 このための、新規就農希望者と経営委譲希望者とを結びつけるため、 次のような具体案が示されています。
1.新規就農希望者の育成
(1)研修プログラムの策定
新規就農に必要な一定レベルの飼養管理技術、経営管理技術を習得するための専門的プログラムが策定されます(図1)。
(2)担い手育成ファームでの研修
研修は、研修生の受け入れ経験が豊富で指導力のある酪農家として登録された「担い手育成ファーム」を中心に行われます。
(3)新規就農資格者の認定・登録
「研修プログラム」の修了者は、「新規就農資格者」として認定され登録されます。
2.新規就農希望者と経営委譲希望者の仲介
(1)希望者のデータベース化 新規就農希望者、後継者不在農家のうち経営委譲を希望する農家等が登録・データベース化されます(図2)。
(2)経営継承マップの作成
個々の酪農家の将来の意向が地域ごとに調査され、地図上に整理されることにより、計画的な経営の継承に役立てられます。
(3)公社・農協等による仲介と調整
上記(1)(2)をもとに、新規就農希望者と経営委譲希望者のより良い出会いを促進するため、農業公社や農協等によってその仲介と、継承条件の調整等が実施されます。
3.最良の継承方式の検討
都府県のように農地価格が高い地域においては、土地の譲渡を前提とした手法だけでは、円滑な継承は困難です。そこで、従来の農場リース方式のほか仲介機関による長期貸付方式や法人化方式、経営委託方式など、さまざまな手法が検討されます(図3)。
今回とりまとめられた「日本型畜産経営継承システム」は、現在の生産基盤の保全、経営資産の有効利用はもとより、後継者不在農家と新規就農希望者を、双方の経済的・精神的負担を減らしながら結び付けていこうとする点に、大きな意味があるといえるでしょう。 特に、全国の新規就農希望者の情報が整備されれば、就農希望者にとってチャンスが広がるだけでなく、経営委譲希望者にとっても、より自分の経営を継承するのに適した人を捜すことが可能になるでしょう。 ぜひ皆様も、これを機に将来的な経営継承について考えてみてください。
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