1999.SUMMER Vol.3
VOICE



不払い制度改革のポイント


イラスト 本年3月、農林水産省は「新たな酪農・乳業対策大綱」を取りまとめました。この大綱は、昨年末に取りまとめた「農政改革大綱」に基づき、今後の酪農・乳業施策の見直し方向を示したものです。生乳の価格から流通、生産対策など多岐にわたる総合的な内容となっていますが、何といってもその中心は、制度発足以来、日本酪農のありようを左右してきた不足払い制度の改革にあります。ここでは、その改革の主な方向性、及び予想される影響についてご紹介します。



自由取引下で加工原料乳は、価格の適切な目安が必要。

大綱では「乳製品・加工原料乳の価格を硬直的・固定的にしている安定指標価格、国産乳製品の売買操作、基準取引価格を廃止し、実際の取引価格が市場実勢を反映して形成される制度に移行する」ことが提案されています。 こうした制度改革によって、特に加工原料乳については、これまでの取引価格である基準取引価格が廃止され、指定団体と乳業者の間で自由な価格交渉に委ねられることとなります。ただ大綱では、「所要の国境措置(関税相当量)と国家貿易」を継続することとしており、輸入乳製品による国内価格への影響は、それほど厳しいものではありません。すなわち、加工原料乳の価格は、もっぱら、国内の需給事情に影響され、生乳生産の過剰や取引関係次第では、徐々に価格が低下する可能性もあります。また季節的な需給変動により、価格が不安定になることも想定されます。 これらのことを踏まえると、後に述べるように指定団体や計画生産の機能を強化するとともに、加工原料乳の価格形成の目安を市場に示すなどの新たな対策を、併せて実施することが求められます。

加工原料乳の生産に際し、酪農経営の安定化を図る。

また、基準取引価格の廃止に伴って法律の仕組み上、保証価格についても廃止されることから、これに代わる直接支払を行うことによって、「加工原料乳地帯における生乳の再生産を確保し、生産者の経営の安定及び所得の確保を図る」こととしています。この直接支払については、「一定期間における生産者の経営判断の目安となるような」工夫を取り入れつつも、市場実勢を価格に反映させるために、単価は毎年1回決めることが想定されているようです。 しかし、再生産確保水準を保証するだけの単価設定となるのか、単価水準の算定にはどのような要素を加味するのか、加工原料乳価格が需給に応じて変動するなかで過度の価格変動があった場合や都府県における余乳発生による価格低下への対策をどのように実施するのか、など具体的な方法については、生産者による自主的な取り組みも含め、今後検討されることになっています。 これらの点については、酪農経営の安定と所得の確保が図られるような方法を、求めていく必要があります。

国内生産を確保できる水準の、飲用原料乳価格の形成をめざす。

大綱は、「現在の飲用原料乳の価格形成が、需給事情や生産者の経営の事情が十分に反映されていない」ことや、「乳価格交渉の過程が不透明で交渉の決着までに多大な時間を要する」ことから、「市場取引の導入や相対取引のルール化等の検討を行う」としています。ここで何よりも重要なのは、輸入が困難で国内での供給が求められている飲用原料乳の価格を、国内生産を確保できる水準に維持する必要がある点です。そうした観点から、競争入札取引も含めた取引形態、価格水準の目安を市場に示す方法、生産者が取り組んでいる用途別計画生産を制度的に位置付けるなどの検討が求められます。 また、「飲用等向け」や「生クリーム等向け」、「はっ酵乳等向け」など、原料乳の用途ごとに価格を設定する用途別取引については、需要の実態に対応した合理的な価格形成の方法であり、これを推進することが必要ですが、このため、用途別取引のあり方についても、用途別数量確認の制度化も含めた検討を実施していく必要があります。 さらにチーズ向け原料乳については、チーズの自由化を踏まえて相対取引に移行するため、不払いの対象から外した経過がありますが、制度改革に際して、再度加工原料乳用途に統合することも検討する必要があります。

生産者団体の機能強化と需給安定を広域化で実現する

国内の需給調整は、これまで、安定指標価格を基準とした農畜産業振興事業団による乳製品の売買操作が重要な役割を果たしてきましたが、今回、これも廃止されることになっています。このため、今後は、生産者による自主的な需給調整対策にそのほとんどが委ねられることになります。従って、国の責任ある支援のもとに計画生産の拡充強化を図っていく必要がありますが、そのためには、現在の計画生産の仕組みをどのような形で強化していくのかを充分に研究・検討していくことが必要です。なお、これと関連して、事業団が実施する輸入乳製品の放出や民間在庫に対する調整保管支援の基準についても、計画生産との連携を前提にどのような条件のもとで実施するかについて、適切なルールをつくることが必要となります。 また、価格形成に対する市場原理の導入によって、生乳の取引環境はますます競争的なものになります。このため、生乳取引を行う指定団体の機能を飛躍的に強化することが重要です。この点については、「指定団体の広域化を通じた一元集荷多元販売機能の強化」と明記されました。こうしたことから新しい制度が動き出す13年度になるまでに、広域指定団体を設立することが不可欠です。

以上のように、今回不足払い制度の改革について、「新たな酪農・乳業対策大綱」において一定程度の方向性は示されたものの、併せて検討すべき事項が多数あることから、具体的に向けた検討作業を現在農林水産省において進めています。 また、学識経験者12人で構成する「乳製品・加工原料乳制度検討委員会」が去る4月23日に設置されました。農林水産省では、今秋を目処に検討結果の取りまとめを行うことを予定しており、平成12年春に不足払い法改正の国会審議、平成13年からの施行を想定しているようです。これらの検討経過については、今後も「中酪VOICE」の誌面で取り上げていく予定です。中酪においても、これから秋にかけて、生産者、指定団体の意向が充分反映されるよう研究検討を重ね、積極的に政府に対して働きかけて行きますので、皆様の一層のご理解とご協力をお願いいたします。


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